珠洲 避難所の小学校で児童がミニコンサート 避難者を励ます

避難所となっている石川県珠洲市の小学校で避難生活を送る人などを励まそうと、この小学校に通う児童がミニコンサートを開きました。

珠洲市正院町の正院小学校では、授業は再開しているものの、校舎の一部は避難所となっていて、合わせて41世帯75人が避難生活を送っています。

28日は、この小学校に通う15人の児童が、避難生活を送る人などを励まそうとミニコンサートを開き、およそ50人が集まりました。

子どもたちは、まず、東日本大震災の復興支援ソング「花は咲く」などを歌い、続いてZARDの「負けないで」を演奏したあと、最後に校歌を披露していました。

そして、アンコールに応えて再び、演奏と校歌を披露すると、会場には大きな拍手が起こり、中には涙ぐむ人もいました。

訪れた60代の男性は、「感動しました。心が落ち着きました。大変よかったです」と喜んでいました。

また、60代の女性は「子どもたちに力をもらいました。子どもたちも頑張っているし、私たちも頑張らなければいけないと思いました」と話していました。

この学校で避難生活を送りながら参加した小学3年生の西こはるさんは、「感謝のことばを言われてうれしくなりました」と話し、兄で小学6年生の西琥太郎さんは「歌声や合唱でみんなが感動してくれたことはすごくうれしかったし、今度はもっと多くの人を感動させたいと思いました」と話していました。

手書きの新聞を作った児童も

ミニコンサートを開いた子どもたちの中には手書きの新聞を作った児童がいて、その新聞は避難所になっている正院小学校に貼りだされています。

この壁新聞は、地震直後に避難所で過ごしていた小中学生8人が作ることを決め、先月4日に第1号を発行し、これまでに11号まで制作しています。

内容は▽感染症対策のために手洗いは忘れずにしましょう、▽エコノミークラス症候群にならないようにストレッチをしましょう、といった注意を促すものから、▽炊き出しの日時や場所といった生活に役立つ情報のほか、▽被災者を癒やすためにイラストも描かれています。

壁新聞を読んだ70代の男性は「子どもなりに地震を受け止めて、一生懸命、大人に伝えて頑張っていることがうれしいです。手書きでやっていることが心に響きます」と話していました。

制作に関わった小学6年生の木挽美空さんは「避難所にいる人に快適に過ごしてもらうために書きました。自分たちの経験も参考にし、これからも制作していきたいです」と話しています。

避難生活を送りながら参加したきょうだいは

ミニコンサートに参加した小学6年生の西琥太郎さんと、その妹で小学3年生のこはるさんは地震で自宅が壊れ、停電と断水が続いていることから、両親と中学2年生の姉、祖父母の合わせて7人で地震の直後からこの小学校の避難所に身を寄せています。

家族によりますと、2人は避難所に来た当初は過酷な環境に戸惑っていたといいます。

避難生活の当初について、祖父の西義明さんは「経験したことがないのでやはり戸惑いがあり、広い部屋での雑魚寝も大変だったと思う」と振り返ります。

そうした中、兄の琥太郎さんは避難所の壁新聞のイラストを担当することがありました。

琥太郎さんは「わかりやすい新聞になるように作りました。新聞を見ている人がいるとうれしいです」と話していました。

また、妹のこはるさんは「最初は暗い気持ちだったけど、今は明るく過ごせています」と話していました。

コンサートを前に2人は「みんなが地震で落ち込んでいるから、地域の人たちに元気と勇気と笑顔を届けたいです」と意気込んでいました。

避難所に残っている避難者たちは

避難所となっている正院小学校には、多いときにはおよそ500人が避難していましたが、現在の避難者は75人となっています。

避難所を運営する副本部長の小町康夫さんによりますと、残っている避難者たちは、どうやって生活を再建していくかや、仮設住宅に入居できるかどうかなどについて、悩んでいることが多いように感じられるということです。

小町さんは「将来設計をどうしようかと考えることが続いているので、気持ちが沈んでいくことにつながっているのではないか。子どもたちの歌を聞いて勇気をもらって、前向きな気持ちになってほしい」と話していました。