「確固たる倫理観持つ人材」ENEOS HD新社長に宮田副社長が昇格

経営トップによる女性への不適切な行為が相次いで発覚した石油元売り最大手のENEOSホールディングスは、解任した前の社長に代わって、宮田知秀副社長を「確固たる倫理観を持つ人材だ」として、社長に昇格させる人事を決めました。

発表によりますと、ことし4月1日付けで社長に就任する宮田氏は58歳。

1990年に会社の前身の一つである当時の東燃に入社し、工場長や専務などを歴任したあと、おととし4月からENEOSホールディングスの副社長を務めています。

ENEOSホールディングスでは、おととし8月に当時の杉森務会長が、飲食店で、女性に性的に不適切な行為を行ったとして辞任したほか、再発防止に取り組む考えを示していた当時の齊藤猛社長も、去年12月、懇親会の場で、女性に不適切な行為を行ったとして解任され、同席していたコンプライアンス担当の副社長も辞任しています。

さらに、今月もグループ会社の会長が、懇親の場で、女性にセクハラ行為を行っていたとして解任されています。

経営トップによる女性への不適切な行為が相次いで発覚する中、社外取締役が過半数を占める指名諮問委員会が、人選を進めた結果、宮田副社長は「確固たる倫理観をもって古い慣習を刷新できる人材」であるなどとして新たな社長にふさわしいと判断したとしています。

一連の不祥事に対する再発防止策と今後の対応方針も発表

今回、新しい社長の人事の発表にあわせて、ENEOSホールディングスは、一連の不祥事に対する再発防止策と今後の対応方針も発表しました。

ENEOSホールディングスは、おととし、当時の会長が女性に不適切な行為を行った問題を受けて、▽取締役の選任方法の見直しや、▽役員の処分プロセスの明確化、▽役員に対する懲罰規定の導入といった再発防止策を実施するとしていました。

しかし、去年12月にも当時の社長による不適切な行為が明らかになったことから、改めて外部の専門家に委託し、再発防止策や、コンプライアンス改善に向けた各制度について分析・評価を行いました。

それによりますと、内部通報制度や、役員の処分プロセスの明確化は有効だった一方で、取締役の選任方法などはさらなる見直しが必要だとしています。

また、役員の懲罰規定として導入した重大なコンプライアンス違反を行った役員に対し、役員報酬の返還請求や没収を行うことができる「クローバック・マルス条項」については、「けん制機能は果たさなかった」などと指摘しました。

こうしたことを受けて、会社では、新たな再発防止策として、▽取締役選任時の第三者機関によるインタビューやウェブテストの実施、▽会食に参加する際の取締役や同行する者のルールの策定、▽取締役の緊張感を維持するための取締役どうしの監督強化を行うとしています。

さらに、会社では透明性と緊張感を高めるため、ことし6月から▽社外取締役の比率を過半数まで引き上げるほか、▽取締役会議長も社外取締役から選任するとしています。

宮田副社長「同様の事態は起こさないと宣言する」

新しく社長に就任する宮田知秀副社長は、28日開いた記者会見の冒頭、先週、グループ会社の会長が女性へのセクハラ行為で解任されたことについて「心よりおわび申し上げる」と陳謝しました。

そのうえで、宮田氏は、グループ会社も含めて経営トップによる不祥事が相次いだことについて「人権尊重やコンプライアンスの徹底を推進する立場の経営層の意識が不足していたことが背景だと思っている」と述べました。

また、自身が過去に飲酒による不適切な行為を行ったことはないかと問われたのに対し「私の過去については調べられていて、潜在的な面もウェブテストで結果が出ている。今後、同様の事態は起こさないと宣言する」と強調しました。

また、会見の中で宮田氏は、再発防止に向けて、取締役が会食に出席する際のルールとして
▽過度な飲酒を控えるとともに
▽取締役が不祥事を起こした場合は、同席した管理職や役員にも責任を取らせることを明らかにしました。