衆院政倫審 29日と3月1日の開催決定 岸田首相は29日出席

衆議院政治倫理審査会は幹事会を開き、岸田総理大臣らからの申し出を受けて、報道機関にも公開する形で、2月29日と3月1日に審査会を開催することを決めました。

29日は岸田総理大臣と二階派の事務総長を務めた武田・元総務大臣の2人が、3月1日はいずれも安倍派の事務総長を務めた4人が出席します。

自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、岸田総理大臣は28日午前、党総裁として説明責任を果たしたいとして、衆議院政治倫理審査会にみずから出席する意向を明らかにし、午後、審査を申し出ました。

こうしたことを受けて、審査会は幹事会を開き、テレビ中継も含め、報道機関に全面公開する形で、29日と3月1日に審査会を開催することを決めました。

29日は岸田総理大臣と二階派の事務総長を務めた武田・元総務大臣の2人が、3月1日は、いずれも安倍派の事務総長を務めた西村・前経済産業大臣、松野・前官房長官、塩谷・元文部科学大臣、高木・前国会対策委員長の4人が出席します。

1人あたりの時間は1時間20分で、はじめに議員本人が弁明を15分間行い、各党の委員による質疑を1時間5分行うとしています。

審査会に現職の総理大臣が出席するのは初めてで、議員が出席して弁明を行うのは2006年以来となります。

審査会をめぐっては、与野党が安倍派と二階派の5人からの申し出を受けて、28日と29日に開催する方向で協議していましたが、公開のあり方で自民党内の調整がつかず、28日の開催は見送られていました。

公開するかどうかは議員本人の意向が尊重されますが、岸田総理大臣が公開での審査を申し出たことから、5人も公開を受け入れ、日程などが固まった格好です。

野党 岸田首相出席の審査会の開催 応じること確認

岸田総理大臣が衆議院政治倫理審査会に出席する意向を示したことを受けて、野党4党の国会対策委員長が会談し、岸田総理大臣が出席しての審査会の開催に応じることを確認しました。

立憲民主党、日本維新の会、共産党、国民民主党の野党4党の国会対策委員長らが、28日正午ごろから会談しました。

この中で、立憲民主党の安住国会対策委員長は、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、自民党から岸田総理大臣が党総裁としてみずから衆議院政治倫理審査会に出席する意向だと伝えられたと説明しました。

出席者からは、みずから説明したいという申し出を拒むものではないなどとして、岸田総理大臣が出席しての審査会の開催に応じることを確認しました。

一方、安倍派と二階派の5人の審査会への出席をめぐっては、5人はすでに審査を申し出ているとして、出席が確定するまでは新年度予算案の審議日程についての協議に応じられないという認識で一致しました。

政治倫理審査会とは

政治倫理審査会は、議員が政治倫理に関する規範に著しく違反して、政治的、道義的に責任があるかどうかを審査する場で、衆参両院に設けられています。

委員が審査の申し立てをするか、疑惑を受けた議員本人が審査を申し出ることで開かれます。

審査は原則非公開で、議員本人が認めれば議員や報道関係者の傍聴が可能になります。

また、審査会での発言は証人喚問とは異なり、虚偽の証言をした場合でも偽証罪に問われることはありません。

今回は安倍派と二階派の5人の事務総長経験者、それに岸田総理大臣からの申し出を受けて行われます。

審査会に現職の総理大臣が出席するのは初めてです。

当初、申し出た5人が原則どおり、非公開を希望したのに対し、野党側が公開を求めて折り合いがつかず、岸田総理大臣の申し出を受けて改めて協議した結果、報道機関にも公開する形で開催されることになりました。

一方、審査の結果、政治的、道義的に責任があると認めたときは、審査会として一定期間の登院自粛などを議員に勧告できることになっていますが、過去に勧告を受けた議員はいません。

過去の政治倫理審査会

政治倫理審査会は、衆議院ではこれまでに9回、審査のために開かれています。

8回は議員本人からの申し出、1回は委員の申し立てによるものです。

初めて開かれたのは、
▽1996年9月で、当時、自民党の幹事長だった加藤紘一氏が、鉄骨加工メーカーから、みずからへの献金疑惑について弁明を行いました。

▽1998年6月には自民党の山崎拓氏
▽2001年2月には自民党の額賀福志郎氏
▽2002年7月には無所属の田中真紀子氏
▽2003年5月には保守新党の松浪健四郎氏
▽2004年5月には自民党の原田義昭氏
▽同じ年の11月には自民党の橋本龍太郎氏
▽2006年2月には自民党の伊藤公介氏

それぞれ、政治とカネや学歴など、みずからに関する疑惑について弁明を行いました。

審査会が実際に非公開となったのは加藤氏の時の1回だけで、山崎氏、額賀氏、橋本氏の時の3回は議員の傍聴が認められました。

田中氏と伊藤氏の時は議員と報道関係者の傍聴が認められ、テレビ中継も行われました。

▽2009年7月には自民党と公明党の委員の申し立てで、当時、民主党の代表だった鳩山由紀夫氏の政治献金問題をめぐる審査を行うために開かれましたが、民主党の委員は抗議して欠席し、鳩山氏も出席しませんでした。

一方、参議院の政治倫理審査会は、議員による弁明は一度も行われていません。

武田良太氏

武田良太氏は衆議院福岡11区選出の当選7回で、これまでに総務大臣や国家公安委員長などを歴任しています。

所属していた二階派では2021年10月から事務総長を務めました。

今回の問題を受けて自民党が行ったアンケートでは、政治資金収支報告書に記載していなかった派閥のパーティー券収入が、2022年までの5年間で1926万円あったと報告しています。

ことし1月に行った記者会見では、自身の政治団体の収支報告書の不記載について、「詳細は把握しきれていなかった」と述べていました。

西村康稔氏

西村康稔氏は衆議院兵庫9区選出の当選7回で、官房副長官や経済再生担当大臣などを歴任しました。

2022年8月からは経済産業大臣を務めましたが、派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で2023年12月に辞任しました。

所属していた安倍派では2021年10月からおととし8月まで、当時の細田会長や安倍会長のもとで事務総長を務めました。

また、「5人衆」と呼ばれる議員の1人で、派閥の意思決定にあたる常任幹事会のメンバーでした。

西村氏はことし1月の記者会見で、派閥からキックバックを受けた金額は2022年までの5年間で100万円だったと明らかにし、陳謝しました。

一方で、派閥から議員側へのキックバックについては、歴代会長と事務局長との間で長年、慣行的に行われ、自身は関与しなかったうえ、収支報告書に記載がないことも問題が表面化するまで知らなかったと釈明していました。

松野博一氏

松野博一氏は衆議院千葉3区選出の当選8回で、文部科学大臣などを歴任したあと、2021年10月の岸田内閣の発足以来、官房長官を務めました。

派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、2023年12月に不信任決議案が提出され、決議案は否決されましたが、2日後に、「国政に遅滞を生じさせたくない」などとして辞任しました。

所属していた安倍派では2019年9月からおよそ2年間、当時の細田会長のもとで事務総長を務めました。

また、「5人衆」と呼ばれる議員の1人で、派閥の意思決定にあたる常任幹事会のメンバーでした。

松野氏はことし1月に行った記者会見で、2022年までの5年間で派閥から1051万円のキックバックを受け、収支報告書に記載していなかったことを明らかにし、陳謝しています。

一方で、パーティー券の販売は事務所スタッフが担当し、過去5年の不記載の額は去年11月ごろに初めて知ったとしたうえで、派閥の経理や会計業務は事務総長の担務ではなく、自身は関わっていなかったと釈明していました。

塩谷立氏

塩谷立氏は衆議院比例代表東海ブロック選出の当選10回で、これまでに文部科学大臣や、党の総務会長、選挙対策委員長などを歴任しています。

安倍派では2012年11月から5年余り、当時の町村会長や細田会長のもとで事務総長を務めました。

そして、2022年7月に安倍元総理大臣が亡くなり、会長が不在となったあとは会長代理を、2023年8月に派閥の意思決定にあたる常任幹事会が発足してからは、取りまとめ役の「座長」を務めました。

政治資金パーティーをめぐる問題を受けて、派閥が解散を決めるまでの意見集約を担い、みずからは衆議院政治倫理審査会長の役職から退きました。

塩谷氏はことし1月に地元で行った記者会見で、2022年までの5年間で、派閥から234万円のキックバックを受けていたことを明らかにし、陳謝していました。

一方で、「キックバックがいつ、どういう形で始まったかはわかっていない。収支報告書への不記載も全く知らなかった」などと釈明していました。

高木毅氏

高木毅氏は衆議院福井2区選出の当選8回で、これまでに復興大臣や衆議院議院運営委員長などを歴任しました。

2021年10月の岸田政権の発足以来、党の国会対策委員長を務めましたが、派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて、2023年12月に辞任しました。

所属していた安倍派では、安倍元総理大臣が亡くなったあとの2022年8月から事務総長を務めてきました。

また、「5人衆」と呼ばれる議員の1人で、派閥の意思決定にあたる常任幹事会のメンバーでした。

高木氏はこれまでにコメントを発表するなどし、派閥からキックバックを受けた金額は2022年までの5年間で1019万円だったと明らかにしたうえで、陳謝しています。

一方で、「派閥の事務局から事務担当者に、いわゆる『還付金』は収支報告書に記載しなくていいという指導があったので、記載せずに提出した」と釈明していました。

政倫審 与党側 丹羽筆頭幹事「静ひつな環境での開催努めたい」

衆議院政治倫理審査会の与党側の筆頭幹事を務める自民党の丹羽秀樹・衆議院議員は記者団に対し、「岸田総理大臣から先にマスコミフルオープンという話があり、調整を行った中で、全員がフルオープンの公開に納得して審査会の開催にたどり着いた。一刻も早く、政治とカネの問題に対する国民の不信を払拭できるよう、静ひつな環境での開催に努めたい」と述べました。

政倫審 野党側 寺田筆頭幹事「あきれた部分ある」

衆議院政治倫理審査会の野党側の筆頭幹事を務める立憲民主党の寺田学・衆議院議員は記者団に対し、「総理大臣までが『出る』と言わないと、みずからの嫌疑について全面公開の場で述べることができないというのは正直、あきれた部分もある。せっかくこのような場をつくったので、『分からない』や『記憶にない』など、あいまいなことを言わず、裏金の問題について、個人や派閥の責任者として説明責任をしっかりと果たしてもらいたい。審査会はスタートラインだ」と述べました。

林官房長官「説明を尽くすものと考えている」

林官房長官は午後の記者会見で、「岸田総理大臣は党総裁として自ら出席し、マスコミオープンのもとで説明責任を果たしたいと述べており、政治資金をめぐる国民の厳しい目や疑念を踏まえ説明を尽くすものと考えている」と述べました。

また、安倍派や二階派の事務総長を務めた5人も出席することについて、「それぞれの政治家が必要に応じて適切に説明責任を果たすことが重要だ。岸田総理大臣も政治の信頼回復に向けて、志のある議員に政治倫理審査会をはじめ、あらゆる場で説明責任を果たしてもらうよう期待している」と述べました。

安倍派座長務めていた塩谷元文科相「皆そろって公開ならば」

安倍派の座長を務めていた塩谷・元文部科学大臣は国会内で記者団に対し、「岸田総理大臣の出席については突然のことで大変びっくりした。国会審議が滞っている状態を打開するためのことだと思う。党の国会対策委員会から連絡があり、私からは『皆がそろって公開ということで受け入れるなら、それでいきましょう』と話をした」と述べました。

安倍派事務総長務めた高木前国対委員長「同じような話に」

安倍派の事務総長を務めた高木・前国会対策委員長は記者団に対し、「非公開という原則のとおり進めていたが、なかなか開催できないということもあり、説明責任ということであればオープンの方がいいと判断した」と述べました。

また、記者団が岸田総理大臣が出席することが影響したのかと質問したのに対し、「びっくりしたが、説明責任や国会の状況をみると、オープンでやるべきだとは思っていた」と述べました。その上で、政治倫理審査会にどのように臨むかを問われ、「これまでも会見をやるなどしているので、同じような話になるだろうと思う」と述べました。

自民 渡海政調会長「いい方向に進むよう期待」

自民党の渡海政務調査会長は記者団に対し、「公開で開催されることは本人の名誉のためにもいいことだと思う。さまざまな疑問にできる範囲で答えてもらって、政治不信の解消に少しでもつながれば、政治が前に進むので、いい方向に進むよう期待している」と述べました。

自民 御法川国対委員長代理「準備している」

自民党の御法川国会対策委員長代理は記者団に対し、「けさ9時ごろ、岸田総理大臣から浜田国会対策委員長に電話があり、政治倫理審査会に出席する意向が伝えられた。政治とカネの問題が大きな政治課題になっている中で、自分が党のトップとしてしっかりとやっていく必要があると感じたのではないか。審査会をできるだけ早く開催してほしいということだと思うので準備をしている」と述べました。

一方、すでに申し出ている5人の審査会ついては、「どこかで開催することはもう決まっている話なので、それはそれとしてしっかりやっていく」と述べました。

立民 安住国対委員長「総理みずからが範を示したか」

立憲民主党の安住国会対策委員長は記者団に対し、「岸田総理大臣の出席を聞いて一瞬、驚いた。拒むものではないが、この事案が審査会を開く理由になるのか判断したい。昼に緊急に野党各党で集まり、対応を検討したい」と述べました。

一方、安倍派と二階派の5人の政治倫理審査会への出席について、「5人は申し出をしており、形はどうであれ、出てこなければルール違反だ。5人がなかなか出席を了解せず、総理みずからが範を示したいということで、審査会を使おうと思った可能性はある。こう着した事態を打開したいということで、『捨て石』と言ったら怒られるが、みずからやるということだろう。ただ、5人の気持ちを変えることができるのかわからない」と指摘しました。

維新 藤田幹事長 “覚悟は認められるがプレッシャーかけただけ”

日本維新の会の藤田幹事長は記者会見で、「岸田総理大臣が自民党総裁として政治倫理審査会に出席する覚悟は一定、認められるが、これまでリーダーシップを発揮せずに、結局、ガバナンスが崩壊し、みずからが出席して、ほかのメンバーにプレッシャーをかけることしかできなかった。派閥どうしの駆け引きのような、見苦しいことが行われているのが今の自民党の実態だ。めちゃくちゃなガバナンスの党が日本政治を仕切っているのは悲劇だ」と述べました。

共産 田村委員長「本当にみっともない」

共産党の田村委員長は記者会見で、「岸田総理大臣が出席すると言ったから、しぶしぶ公開での開催に応じるというのが自民党の中枢を担ってきた議員なのか。本当にみっともないのひと言だ。自民党は政党としての体をなしていない状況に陥っている。国民の前で、何が起きたのか、いつから何が行われていたのかを明らかにしなければ、国民の信を得ることなどできない」と述べました。

国民 玉木代表「議員が説明責任を果たさず信頼回復はない」

国民民主党の玉木代表は党の両院議員総会で、「岸田総理大臣が出席したからといって問題が解決するわけではない。安倍派や二階派のことも説明できず、予算委員会と同じ答弁を繰り返せば、政治に対する不信感がより深まるだけだ。疑惑をかけられた議員がしっかり出席して説明責任を果たすことなくして、政治に対する信頼の回復はなく、新年度予算案の衆議院通過もない」と述べました。