【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(2月28日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる28日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナとは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

中国 ロシア・ウクライナに特別代表派遣へ「政治的解決促す」

中国外務省の毛寧報道官は28日の記者会見で、長年、駐ロシア大使を務めたユーラシア担当の李輝特別代表が、2月2日からロシア、ウクライナ、ポーランド、ドイツ、フランスの5か国とEU=ヨーロッパ連合の本部を訪問すると発表しました。

李特別代表はウクライナ情勢をめぐって政治的な解決を促すとしています。

毛報道官は、「いま最も差し迫っているのは平和を取り戻すことであり、和平交渉が1日でも早く行われれば被害は軽減される。すべての国と踏み込んだ意思疎通を行う」と強調しました。

そのうえで、「われわれは引き続き独自の役割を果たし、シャトル外交を展開して各方面の共通認識を集め、中国の知恵で貢献する」と述べました。

中国は去年も李特別代表をロシアやウクライナなどに派遣しましたが、ロシアとの関係を重視するなか具体的な成果にはつながらず、中国の仲介外交への懐疑的な見方が出ていました。

ウクライナ軍 ロシア軍用機撃墜 “ロシアの作戦に影響出ている”

ウクライナ軍は最近、ロシア軍の軍用機の撃墜を相次いで発表していて、23日には作戦指揮に重要なロシア軍のA50早期警戒管制機の撃墜を発表しました。

ウクライナ空軍のイグナト報道官は27日、「ロシアはA50をここ数日間使用していない」と述べ、ロシア軍の作戦に影響が出ているという見方を示しました。

イギリス国防省は27日、A50は地対空ミサイルで撃墜された可能性が高く、これでロシア側は運用可能な9機のうち2機を2か月間で失ったと指摘しました。

そして、ロシア軍は貴重な機体や乗員を失ったことでA50の作戦範囲を再検討せざるをえなくなり、ウクライナ側の攻撃が脅威になっていると分析しています。

ウクライナ支援盛り込んだ予算案 米下院で可決見通し立たず

アメリカ議会では2月13日、上院が与野党協議のすえ、ウクライナ支援を盛り込んだ予算案を可決しましたが、野党 共和党が多数派を占める下院ではウクライナ支援に消極的な意見が根強く、可決する見通しが立っていません。

バイデン大統領は27日、事態の打開を図るため与野党の議会指導部とホワイトハウスで会談し、「支援は急務だ。ウクライナでは、無策が悲惨な結果を招いている」と述べて、予算案を早急に承認するよう改めて求めました。

会談後、与党 民主党の議会上院トップ、シューマー院内総務は記者団に対し、「ウクライナ支援についてこれまでで最も激しい会談だった。われわれはジョンソン下院議長に『やり遂げろ』と言った」と述べて、野党 共和党のジョンソン下院議長に速やかな対応を求めたと明らかにしました。

一方、ジョンソン議長は会談後、「下院はさまざまな選択肢を検討していて、適切な時期に対処する。ただ最優先事項はわれわれの国境だ」と述べて、メキシコとの国境で法的な手続きを経ずに入国を試みる人が急増している問題への対応を強化することが必要だという認識を重ねて示しました。

ロシア国防相 アウディーイウカ周辺の集落を掌握と発表

ウクライナメディアなどによりますと、ウクライナ軍の報道官は27日、ウクライナ東部の拠点、ドネツク州のアウディーイウカに近いシェベルネなど2つの集落から撤退したと明らかにしました。

ロシアのショイグ国防相は27日、国防省での会議で「この1週間でシェベルネなどを掌握した」と述べ、ウクライナ東部ドネツク州の拠点アウディーイウカに続いて周辺の集落を相次いで掌握したと発表しました。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、3月に行われるロシアの大統領選挙を前にショイグ国防相が戦闘の成果を誇示したという見方を示しました。そのうえで、ロシア軍は「アウディーイウカ占領によって得られた戦術的機会を利用している」と指摘し、ウクライナ側が防衛線を再構築するのを前に攻勢を強めるねらいだと分析しています。

ゼレンスキー大統領 サウジアラビア訪問 和平案協議へ

ウクライナのゼレンスキー大統領は27日、サウジアラビアを訪問し、ムハンマド皇太子と会談しました。

会議を前にゼレンスキー大統領はSNSで、会談ではウクライナが提唱する和平案について協議すると述べました。

サウジアラビアでは去年8月、和平案について欧米や新興国などの政府高官による協議が行われ、ウクライナは現在、首脳級の会議の開催を目指して各国への働きかけを続けています。

また、ゼレンスキー大統領はサウジアラビアが仲介した実績もあるロシアとの捕虜交換の交渉についても協力を求めたいとして、「今回の会談も成果を生むと確信している」と述べています。

フランス政府 大統領発言の火消しに追われる

フランスのマクロン大統領は26日の記者会見で、欧米側がウクライナに地上部隊を派遣する可能性について、「合意はない」としたうえで、「いかなることも排除されるべきではない」と発言しました。

これに対しヨーロッパ各国の首脳などからは、「兵士を派遣することはない」などとマクロン大統領の発言を否定する発言が相次いでいます。

NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長は「ウクライナにNATOの戦闘部隊を派遣する計画はない」と述べました。

ポーランドのトゥスク首相は「兵士を送る計画はない」と述べました。

ヨーロッパ最大の支援国、ドイツのショルツ首相は「地上部隊や兵士を派遣することはない」と述べました。

G7=主要7か国の議長国イタリアの首相府は27日、「ウクライナへの支援は地上部隊の派遣を伴うものではない」とする声明を発表しました。

一方、フランスのセジュルネ外相は27日、マクロン大統領の発言の真意について問われ、地雷除去などの支援の必要性を強調した上で、「こうした活動を行うには、戦闘にならない形でのウクライナ領内での活動を検討する必要がある」と述べ、戦闘部隊の派遣の可能性は否定し、マクロン大統領の発言の火消しに追われました。

米報道官「ウクライナで戦うために部隊を派遣しない」

アメリカ ホワイトハウスのNSC=国家安全保障会議のワトソン報道官は27日、声明で「バイデン大統領は、アメリカはウクライナで戦うために部隊を派遣しないと明確にしている」と強調しました。

そのうえで「ウクライナの勝利への道は、アメリカ議会下院がウクライナ軍が自衛のために必要な武器と砲弾を手に入れ、ロシアの侵攻に対抗して戦い続けるための予算案を通すことだ」として、野党 共和党が多数派を占める下院でいち早くウクライナへの追加支援のための緊急予算案の審議を進め、成立させる必要があるという認識を示しました。

米財務長官 凍結資産の活用「必要かつ緊急」

アメリカのイエレン財務長官は、G20=主要20か国の財務相・中央銀行総裁会議に出席するためブラジルのサンパウロを訪れ、27日、現地で記者会見を開きました。

この中でイエレン長官は、欧米や日本などがロシアへの経済制裁として、ロシア中央銀行が保有するおよそ2850億ドル、日本円で42兆円余りにのぼる資産を凍結したことについて、資産を没収したうえで、ウクライナへの軍事支援や長期的な復興に向けて活用することが「必要かつ緊急なことだ」と強調しました。

また、凍結した資産の活用は財産権を侵害するため国際法に抵触するという指摘が出ていることを踏まえ、慎重に行動すべきとしながらも、国際法上だけでなく経済面や道義的な観点から、活用には根拠があるという考えを示しました。

さらに、ウクライナへの軍事支援をめぐって、アメリカで追加支援に必要な予算案の議会での審議が野党 共和党の反対で暗礁に乗り上げていることについて、イエレン長官は、ウクライナへの支援継続やアメリカの国家安全保障のために議会は直ちに行動すべきだと改めて要請しました。

ロシア野党指導者の殺害から9年 反政権の動き警戒か

ロシアでは2015年に首都モスクワで、プーチン政権に批判的だった野党指導者のネムツォフ氏が銃で撃たれて殺害され、実行犯が殺人などの罪で有罪判決を受けましたが、誰の指示だったのかなどはわかっていません。

事件から9年となった27日、現場となった橋では、モスクワに駐在する欧米の大使や市民が訪れて花を手向け、ネムツォフ氏の死を悼みました。

ロシアでは3月の大統領選挙でネムツォフ氏の側近だったナデジディン元下院議員がウクライナへの侵攻に反対し、プーチン大統領に対抗する候補として注目されましたが、選挙管理委員会は立候補を認めませんでした。

また、2月に刑務所に収監されていた反体制派の指導者ナワリヌイ氏の死亡が発表され、支援団体は告別式を開きたいとしていましたが、27日にSNSで「開催場所を探しているが、ナワリヌイの名前を出すと拒否される。われわれへの協力は禁じられているとも言われた」と明らかにしました。

ナワリヌイ氏の死亡をめぐっては追悼の動きや政権への抗議デモなども起きていますが、ロシア大統領府のペスコフ報道官は「支持者の動きは非常に悪質だ」などと非難していて、当局側は反政権の動きが広がることに警戒を強めているとみられます。