“区史の編さんに著作者人格権を” 住民団体が世田谷区に要望

自分の著作物が意に反して変えられない権利=「著作者人格権」のあり方が議論になる中、東京 世田谷区の住民団体が「区史」の編さんに関して要望書を出しました。編さんする専門家などに「著作者人格権」を行使しないよう求めるのは研究内容の改ざんにつながりかねないと訴えています。世田谷区は「歴史を改ざんする意図はない。内容を確認したうえで、対応を検討したい」としています。

世田谷区は、おととしの区制施行90年を記念して、地域の歴史をまとめた「区史」を発行するため歴史の専門家や学芸員、およそ40人を編さん委員に委嘱し、作業を進めています。

執筆の契約にあたり、著作権を譲渡することと、意に反して内容を変えられない権利=「著作者人格権」を行使しないよう求めたところ、中世史が専門で青山学院大学の谷口雄太准教授が「行政による無断の書き換えにつながる」として反対し、昨年度末で委員の委嘱を打ち切られています。

こうしたことを受けて区民などでつくる団体が27日、保坂区長宛てに区が編さん委員と交わした契約の見直しなどを求める要望書を提出しました。

会見を開いた団体のメンバーは「漫画家の芦原妃名子さんが亡くなったことが大きな社会問題となっているが、著作者人格権をないがしろにすることは著作者の命を奪うほど重い問題だ」と訴えました。

また、会見に同席した谷口准教授は「学者生命にも関わる問題だ。世田谷区には英断を下してほしい」と話しています。

世田谷区は「以前に記念誌を発行した際に内容について委員と折り合わない事態が生じたため、趣旨から大きく外れた文章があった場合に修正があることを考え、契約を結んだ。歴史を改ざんする意図はない。要望書については内容を確認のうえ、対応を検討したい」としています。