乃木坂 櫻坂 日向坂と“一緒に”VRで語り部の話を聞きませんか

東日本大震災の記憶を未来につなぐため、NHKが2年前から制作し、自治体の防災イベントなどで上映しているのが、若者に人気のアイドル坂道グループのメンバーと震災を学ぶことができる「VR」=バーチャルリアリティの映像コンテンツ「坂道グループ×震災語り部」です。

震災から13年となる2024年。ことしもその撮影のため、乃木坂46、櫻坂46、そして日向坂46のメンバーが東北の震災遺構などを訪れて、震災の語り部から貴重な話を聞きました。

13年前は小学校や幼稚園に通っていたメンバーたち。今回東北で出会った語り部の中には、自分たちと同じ世代の人がいました。メンバーたちは何を感じたのでしょうか。

(福島 いわき支局 廣島一徳カメラマン)
(仙台局 上林幹カメラマン)
(盛岡 釜石支局 庄司優太カメラマン)

◎記事の中では、今回の様子をまとめた360度VR映像をご覧いただけます。また、記事の最後にはメンバーのインタビュー動画を掲載しています。

【360度VR映像】乃木坂46「福島 双葉南小学校」

福島県の双葉南小学校を訪れたのは乃木坂46の黒見明香さん、柴田柚菜さん、筒井あやめさんです。

左から 筒井あやめさん 黒見明香さん 柴田柚菜さん

◎下の画像をクリックすると【360度VR映像】(5分31秒)をご覧いただけます。マウスやタップで、画面を動かすことができます。

ランドセルや靴が今も…避難の混乱を今に伝える

原発事故の影響ですべての住民の避難が続いていた、福島県双葉町。

乃木坂46の3人が訪れた双葉南小学校。2022年に町の一部で避難指示は解除されましたが、今も子どもたちの姿はありません。

「金曜日だったんだ。そのままだね」

案内してくれたのは、当時この学校の4年生だった佐藤葉月さんです。

佐藤さん
「地震が起きたとき、立っていられなくなるほどの揺れが1分以上続いたんです。私はびっくりしてパニックになったことを覚えています」

地震のあと、佐藤さんたちはすぐに外へ逃げました。

佐藤さん
「ここは昇降口です。私はここを通って校庭に避難し、家族が迎えに来るのを待っていました」

黒見明香さん
「げた箱には靴が残っていますね」

佐藤さん
「みんなできるだけ早く避難するために上履きのまま外に出たんです。
だから外履きが残っているんですよ」

佐藤さん
「原発が津波で浸水し危険な状況にあるということで、翌朝、町全体に避難指示が出されました。町の人全員、双葉町を離れることになったんです。それ以来私たち家族5人も、5年間、静岡県で避難生活を送っていました」

筒井あやめさん
「5年間も…長かったですね」

佐藤さんのいた教室には今も子どもたちのランドセルが残されています。

学校での日常は突然奪われ、13年が過ぎようとしています。

黒見明香さん
「原発事故のためにできなくなってしまったことがいろいろあったんでしょうね」

佐藤さん
「避難先で新たな生活を始め、町に戻らない人もたくさんいるのが現状です」。

2022年に町に戻ってきた佐藤さん。
かつてのような活気を取り戻したいと願っています。

【360度VR映像】櫻坂46「宮城 中浜小学校」

宮城県山元町の中浜小学校を訪れたのは櫻坂46の幸阪茉里乃さん、石森璃花さん、遠藤理子さんです。津波が迫る中90人が屋上に避難して助かった中浜小学校は当時の経験や教訓を伝えるため震災遺構として保存されています。

左から 石森璃花さん 幸阪茉里乃さん 遠藤理子さん

当時この学校の3年生だった千尋真璃亜さんが、身を寄せ合い一夜を明かした倉庫などを案内してくれました。

◎下の画像をクリックすると【360度VR映像】(8分45秒)をご覧いただけます。マウスやタップで、画面を動かすことができます。

真っ黒い波が壁のように “これで死んでしまうんだ”

宮城県山元町の震災遺構、中浜小学校。訪れたのは櫻坂46の3人です。

ここで語り部をしている、千尋真璃亜さん。当時、この学校の3年生でした。メンバーたちと同じ世代です。千尋さんはあの日避難した校舎の屋上で、津波が迫ってくるのを目の当たりにしました。

千尋さん
「真っ黒い波が壁のようになって上がってきたのが見えて“これで死んでしまうんだ”と友達と抱き合って泣き叫びました」。

石森璃花さん
「とても怖かったですよね…」

雪が降る中 身を寄せ合って

屋上は津波を免れ、その後、千尋さんたち児童や先生、地域の人たち90人がこの倉庫で身を寄せ合い一夜を明かしました。

千尋さん
「床には学芸会で使っていた衣装や段ボールなどが敷いてあります。あの日は雪が降っていて床がとても冷たく、それを少しでも和らげようとみんなで敷きました」

「私は、家族が今どうしているのかとずっと考えていました。あの日は余震がとても多くて、何度も大きな揺れがあったのでとても不安でしたが、先生が背中を優しくさすってくれたり、周りの友達と手を握って『もう少しここで頑張ろうね』って励まし合っていました」

幸阪茉里乃さん
「ここを出たのは何時ごろだったんですか?」

千尋さん
「翌日の朝の7時ごろでした。自衛隊のヘリコプターが来て全員が救助されました。私も避難所で家族と再会できました」

幸阪茉里乃さん
「よかったです…」

千尋さんは2022年から語り部として自分の経験を伝えています。

千尋さん
「ここで私たちが感じたものと経験したことを知ってもらって“自分だったらどうするだろう”と考えてもらうきっかけになったらいいなと思います。それが災害への備えにつながるきっかけになることを願っています」

【360度VR映像】日向坂46「岩手 タピック45」

岩手県陸前高田市の旧道の駅「タピック45」訪れたのは日向坂46の上村ひなのさん、高橋未来虹さん、平尾帆夏さんです。

高さ14メートルの津波に襲われたかつての道の駅は、津波の威力や恐ろしさを後世に語り継ぐため震災遺構として保存されています。

左から 平尾帆夏さん 上村ひなのさん 高橋未来虹さん

ここでガイドをしている武藏裕子さんが建物内部を案内しながら、かつての日常や命を守る心構えについて話してくれました。

◎下の画像をクリックすると【360度VR映像】(9分16秒)をご覧いただけます。マウスやタップで、画面を動かすことができます。

「震災で普通の生活、日常が一瞬にして失われた」

日向坂46の3人が訪れたのは、岩手県陸前高田市のかつての道の駅「タピック45」です。

中には観光案内所やカフェ、隣には物産館があり観光客や地元の人でにぎわっていました。しかし、高さ14メートルの津波に襲われ、内部の壁面は大きく損傷を受けました。

「こんな分厚い壁が…頑丈な壁なのに」

案内したのは、この町で生まれ育った武藏裕子さんです。失われたふるさとの風景や記憶を伝えようとここでガイドをしています。

武藏さん
「この場所は休憩スペースになっていました。小さなテーブルがあって、ここで友達とお茶をしながらおしゃべりをした場所だったんです。津波によって大きく壊されてしまったんですね」

高橋未来虹さん
「パソコンが見える。ここで仕事をしていた人が確かにそこにいたんだと感じます」

武藏さん
「震災によって本当に普通の生活、日常が一瞬にして失われてしまったんですね」

あと数メートル津波が高かったら…「早めの避難を」

建物の裏側。当時この階段を駆け上がり、かろうじて津波から逃れた人がいました。

武藏さん
「彼らは海の近くで仕事をしていたんですが、途中いつもと違う揺れにこちらの建物をめがけて、同僚3人で駆け上がって助かったんです」

武藏さん
「でも、あと数メートル津波が高かったら、おそらく助かっていなかったと思います」

平尾帆夏さん
「より確実に命を守るためには私たちはどうしたらいいのでしょうか?」

武藏さん
「早め早めの避難で自分の命を守ることができるんですね。早く避難することによって、選択肢がいろいろできていきます。高いところ、さらに高いところに避難することで命を守ることができます」

【インタビュー】メンバーが感じたことは

震災を知らない世代が増えるなか、それぞれのふるさとであの日を伝える人たち。
メンバーたちはその思いを受け止めようとしていました。

乃木坂46 黒見明香さん「常に考えておかないと」

「学校の中を見て、こういう状況だったと初めて知った場面もたくさんありました。どういう判断をするのが正解か、常に考えておかないとわからないことが多いと思ったので。周りの友達や家族と一緒に、震災について話す機会を増やそうかなと思いました」

乃木坂46 柴田柚菜さん「周りの子に伝えていきたい」

「そのままの状態で残っていたのがすごく印象に残りました。実際に見るのはすごく貴重な経験だったと思いますし、これからも家族や周りの子に伝えていきたいと思いました」

乃木坂46 筒井あやめさん「5年間避難生活 すごく衝撃的」

「案内してくれた佐藤さんが、双葉町から避難して5年間避難生活を送ったのがすごく衝撃的で、自分が想像する以上の生活だったんだろうと思って。それがすごく印象に残っています」

櫻坂46 幸阪茉里乃さん「記憶つなげていきたい」

「だんだんと記憶は薄れていくものだと思うので、若い世代の人たちに震災の記憶をつなげていきたいし風化させないようにしたいと思います」

櫻坂46 石森璃花さん「絶対に忘れちゃいけない」

「ことばが出ないくらい複雑な気持ちになって。私も絶対に忘れちゃいけないし、忘れるべきではないし。いろんな人に語り継いでいきたいと思います」

櫻坂46 遠藤理子さん「ひと事だと思わずに」

「ひと事だと思わずに、常にこういうことが現実に起こることを頭に入れて、この先暮らしていきたいと思います」

日向坂46 上村ひなのさん「しっかり向き合う」

「目を背けたくなってしまうことだと思うけど、しっかり向き合うこと、知ろうとすることが次の災害を防ぐ第一歩だと思う。これからもしっかり学んでいきたいと思いました」

日向坂46 高橋未来虹さん「伝えるのが私たちの世代の責任」

「実際に訪れることができてすごく貴重な時間だったと思いますし、震災から13年もたつと知らない子どもたちもいると思うので、それを伝えるのが私たちの世代の責任なのかなと思いました」

日向坂46 平尾帆夏さん「発信していきたい」

「『緊急避難場所だからといって絶対に安全というわけではない』ということがとても心に残って。自分の身に起きたときのことを考えて行動しないといけないよと、私たちももっと発信していきたいと思いました」

◇VR「坂道グループ×震災語り部」NHK仙台放送局で展示◇

NHK仙台放送局では今回撮影した映像をVRゴーグルやタブレット端末で展示します。
メンバーたちと一緒に、語り部の話に耳を傾けてみませんか?

【展示場所・時間】
NHK仙台放送局 2階「定禅寺メディアステーション・VR映像体験コーナー」
午前10時~午後5時 常設展示(月曜日は休館)
※展示場所に担当者がいます。

【問い合わせ】
NHK仙台放送局 視聴者ふれあいセンター 022-211-1002
仙台市青葉区本町2丁目20番1号
◇受付時間
(月~金)午前9時~午後7時
(土・日・祝)午前9時~正午 午後1時~午後5時