“カスハラ防止条例” 東京都が全国初の制定目指す

東京都は、客が行う迷惑行為や悪質なクレームなどのカスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」を防ぐ全国で初めての条例の制定に向けて、早期の条例案の提出を目指すことにしています。

客が行う迷惑行為など「カスハラ」防止 条例制定に向け検討

東京都の小池知事は今月20日に開会した都議会の定例会で、客が行う迷惑行為や悪質なクレームなどの「カスハラ」を防ぐための条例の制定に向けた検討を進めることを明らかにしました。

都によりますと、「カスハラ」を防ぐための条例が制定されれば全国で初めてだということです。

「カスハラ」の問題が深刻化しているとして、都は去年から対策会議を設けて大学教授や労働団体の担当者などが議論を行い、この中では、条例の制定に伴う罰則について「罰則を設けることでその範囲から外れた行為が許される認識が広まってしまう」とか「罰則に該当する具体的な行為を決めるには時間がかかる」などの意見が出されました。

都は、こうした意見を踏まえて、現時点では罰則を設けない方向で検討していて、27日の都議会の代表質問などで議論し、早期の条例案の提出を目指すことにしています。

「カスハラ」の実態 連合が被害受けた人など対象に調査

「カスハラ」の発生件数が増えたと感じている人は多くいます。

連合=日本労働組合総連合会は「カスハラ」の実態を調べるため、直接被害を受けた675人と同僚が被害を受けた325人の合わせて1000人を対象におととし、インターネットによるアンケート調査を実施しました。

それによりますと、直近5年間の発生件数の変化について尋ねたところ、369人が「増加したと思う」と回答し、「減少した」と回答した77人を大きく上回りました。

「増加したと思う」と回答した人に、その理由について当てはまるものを複数回答で尋ねたところ、「格差、コロナ禍などの社会の閉塞感などによるストレス」が最も多く、次いで「過剰な顧客第一主義の広がり」、「人手不足によるサービスの低下」、そして、「SNSなどの匿名性の高い情報発信ツールの普及」などとなっています。

直接被害を受けた675人のうち、76.4%に当たる516人がカスハラを受けたことで「生活に変化があった」と回答しました。

このうち最も多かったのは「出勤が憂うつになった」で、次いで「心身に不調をきたした」、「仕事に集中できなくなった」、「眠れなくなった」などとなっています。

連合は「カスハラにあった人は、心身に不調をきたすなど様々な影響を及ぼす。ハラスメントが発生する状況は業種により様々であるため、企業・業界がみずから職場の状況に応じたガイドラインなどを策定し、ハラスメントが起きない環境を作ることが重要だ」としています。

専門家「弱い者いじめのように店員を攻撃 カスハラに発展」

カスハラ問題に詳しい関西大学の池内裕美教授はカスハラが増えていると感じている人が多い背景について「お客様第一主義を経営理念として掲げる企業が多いが、サービス水準がどんどん上がり客が求める水準に企業側が応え続けるのが難しくなっていて、そのギャップが大きな不満につながる。その前提として格差社会や少し前にはコロナ禍などによるストレスもあって感情を抑えられず、弱い者いじめのように店員などを攻撃しカスハラに発展する」と分析しています。

「SNSでのひぼう中傷 “クレーム文化”のようなものが」

また、「SNSの中ではひぼう中傷を行うことが定着し、クレーム文化のようなものができてしまって後戻りできなくなっている」として、SNSの普及により苦情を言うことへの抵抗感が低くなっていることもカスハラが起きる要因の一つではないかと指摘しています。

「条例できれば企業はカスハラ対策を打ち出しやすくなる」

そして、今回、都がカスハラを防ぐための条例の制定に向けた検討を進めることについては「条例ができれば企業はカスハラへの対策をより打ち出しやすくなるので、都以外の自治体でも条例の制定の動きが広まってほしい」としています。