東名あおり運転 やり直しの裁判の2審 被告に懲役18年 東京高裁

7年前、神奈川県の東名高速道路で、あおり運転の末に家族4人を死傷させたとして、危険運転致死傷などの罪に問われた被告のやり直しの裁判の2審で、東京高等裁判所は、「被告の妨害運転によって事故が起きた」として危険運転致死傷の罪を認め、1審と同じく懲役18年の判決を言い渡しました。

7年前、神奈川県の東名高速道路で道路上に停車したワゴン車がトラックに追突され、家族4人が死傷した事故では、石橋和歩被告(32)があおり運転の末に事故を引き起こしたとして、危険運転致死傷などの罪に問われました。

これまでの裁判では、被告が、被害者の車の前に車線変更を繰り返すなどした末に停車させた行為が、危険運転致死傷の罪にあたるかどうかなどが争われました。

おととしのやり直しの1審の判決で、横浜地方裁判所は「被告が妨害運転を繰り返したことで事故が起きた」として危険運転致死傷罪を認めて懲役18年を言い渡し、被告側が控訴していました。

26日の2審の判決で、東京高等裁判所の安東章裁判長は、「車線変更や減速を繰り返すなどの行為によって事故が引き起こされたとして、危険運転致死傷罪を認めた1審の判断に誤りはない」として被告側の控訴を棄却し、1審と同じく懲役18年を言い渡しました。

被告 法廷から出る際 裁判官に「待っておけよ」

石橋被告は、上下とも黒いスーツ、白いマスク姿で出廷しました。

判決の言い渡しの最中、いすに座って腕を組みながら聞いていて、時折、首を傾けたり、足を小刻みに揺らしたりする様子もみられました。

そして、刑務官に伴われて法廷から出る際、石橋被告は裁判官3人に向かって「お前ら裁判官、待っておけよ」などと言って、法廷をあとにしました。

事故きっかけに「あおり運転」危険性が社会問題に

家族4人が死傷した事故は2017年6月、神奈川県大井町の東名高速道路の下り線で、追い越し車線に停車したワゴン車に、大型トラックが衝突して起きました。

この事故の直前、石橋和歩被告が運転する車が、ワゴン車の前に割り込むなどした「あおり運転」を繰り返していたとして、危険運転致死傷などの罪で起訴されました。

この事故をきっかけに、あおり運転の危険性が社会問題となり、事故から3年後の2020年に、厳罰化する道路交通法が改正されました。

改正後は、幅寄せや急ブレーキといった、あおり運転の行為について「妨害運転」と規定されて、取締りの対象となり、最高で5年以下の懲役または100万円以下の罰金と罰則が強化されました。

これまでの裁判の経緯

一方、この事件の裁判は、1審の横浜地裁でやり直しの裁判が開かれるなど、複雑ないきさつをたどりました。

▽事故の翌年の2018年、横浜地裁は危険運転致死傷の罪を適用して、被告に懲役18年を言い渡しました。

しかし、
▽2審の東京高等裁判所は2019年、1審の判決を取り消して、審理のやり直しを命じました。

その理由について、2審の判決は「横浜地裁の裁判手続きの進め方に違法な点があった」と指摘したのです。

具体的には、
「横浜地裁が裁判の前の争点を整理する手続きの中で、検察と弁護側の双方に対して『危険運転の罪にはあたらない』という見解を表明したのは違法で、明らかな越権行為だ。被告や弁護士に反論の機会を十分に確保しなかった点も違法だ」という判断を示しました。

このため、やり直しの1審が行われ、この中で被告側は、危険運転の罪について無罪を主張しましたが、
▽横浜地裁は2022年6月、「被告が4回にわたって妨害運転を繰り返したことで、後続車両と事故を起こす危険性が生じ、実際に被害者の車が停止した直後に事故が起きた。妨害運転と4人が死傷した結果の間には因果関係が認められる」として危険運転致死傷罪を適用し、懲役18年を言い渡しました。

被告は、この判決を不服として控訴し、
▽2023年12月に、やり直し裁判の2審が東京高裁で開かれ、即日結審していました。