【解説】トランプ氏の本音は?ヘイリー氏は?共和党候補者選び

秋のアメリカ大統領選挙に向けた野党・共和党の候補者選びは、トランプ前大統領が、ヘイリー元国連大使の地元・南部サウスカロライナ州の予備選挙でも大差で勝利しました。

トランプ氏の優位は今後も変わらないとみられるなか、トランプ氏の本音は?
そして、戦い続ける構えを崩していないヘイリー氏の思惑は?
解説します。
(大統領選挙取材班)

※「ニュース7」で2月25日に放送した内容です。
※動画は4分13秒、データ放送ではご覧になれません。

トランプ陣営 本選挙見据えている姿勢鮮明に

Q.トランプ氏の今回の勝利の背景は?
A.共和党支持層内での根強い人気に加え、ヘイリー氏の地元での支持拡大に向けて1年以上も前から地元の議員らへの働きかけを始めるなど周到な準備を進め、強力な支援体制を築いたことがあります。

Q.トランプ陣営の様子は?
A.トランプ前大統領は勝利確実が報じられると、自分を支持した州知事や議員などとともにステージに立ち「すばらしい友人たちだ」と述べて選挙中の支援に感謝のことばを述べました。
トランプ氏は演説でヘイリー氏の名前に一度も言及せず、自分はすでに党内の指名争いではなく本選挙を見据えているという姿勢を鮮明にしました。

ヘイリー陣営 形勢逆転にいちるの望み

Q.一方、ヘイリー陣営の様子は?

A.ヘイリー氏は、ホテルで演説し選挙戦を続行する考えを強調しました。
形勢逆転にいちるの望みをかけているためだと見られます。

会場は私たちがヘイリー陣営を取材してきた中で最も盛り上がりを見せ、支持者の1人は、ヘイリー氏なら必ず、女性初の大統領になれると、興奮気味に話していました。

ただ、知事を6年間務めた地元での敗北は大きな痛手で、党の指名獲得の可能性は一段と遠のいたのが現実です。

トランプ氏優位のなか、本音は?

Q.トランプ氏は、ヘイリー氏の地元でも大差で勝利したが、トランプ氏の優位は今後も変わらなさそうか?

A.そうですね。トランプ氏はすでに11月の本選挙でのバイデン氏との対決を見据えています。
来月には、全米50州のうち15の州で一斉に投票が行われるスーパーチューズデーが控え、党の指名争いの最大のヤマ場となりますが、世論調査でもヘイリー氏を大きくリードしていて、圧倒的優位は動きません。

ただ、こうした状況にもかかわらずヘイリー氏が食い下がり、なかなか撤退を表明しないことにトランプ氏はいらだちを募らせているとみられ、演説でヘイリー氏の名前に一切言及しなかったのも、そのあらわれだと思います。

トランプ氏からすると、多額の資金を要する11月の本選挙や、起訴されている4つの刑事事件への対応に集中したいなかで、一刻も早くヘイリー氏を振りほどきたいというのが本音で、そのことが、正面から取り合おうとしない姿勢の背景にあると見ることもできます。

ヘイリー氏は戦い続ける構え 思惑は?

Q.一方で、ヘイリー氏は戦い続ける構えを崩していません。どんな思惑があるのか?

A.ヘイリー氏が戦い続ける理由の1つとして指摘されているのが、トランプ氏が本選挙を戦えない状況になったときに自分が取って代わろうという思惑です。

数々の裁判など本選挙に向けて不安要素を抱えるトランプ氏が、万一、脱落した場合に備え、1人でも多くの代議員を獲得しておこうというねらいです。

もう1つは、ことしではなく、さらに4年後、2028年の大統領選挙が念頭にある、という見方です。

ヘイリー氏はまだ52歳。選挙戦に長くとどまることで、メディアを通じた露出を増やし、国民のあいだの認知度を高めておく狙いがあるのではないか、というわけです。

ただ、こうした戦い方ができるのも、「トランプ氏ではバイデン大統領に勝てない」と見る大口の献金者がヘイリー氏のバックにつき、資金面で運動を支えているからです。

選挙資金しだいで、ヘイリー氏の今後の動向も左右されることになると思います。

トランプ氏の優位が一段と際立つ情勢となる中、共和党の候補者選びは多くの州で予備選挙や党員集会が一斉に行われる、3月5日の「スーパーチューズデー」が次の焦点となります。