軍事侵攻 24日で2年 プーチン大統領 “核戦力を増強”強調

ウクライナヘの軍事侵攻から24日で2年となるのを前に、ロシアのプーチン大統領は軍人をたたえるロシアの祝日に合わせて動画を公開し、通常兵器に加えて核戦力を増強しているとして強気の姿勢を強調しました。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から24日で2年となる中、戦闘が収束に向かう見通しは見えておらず、ウクライナでは23日もロシア軍の攻撃が続いています。

ウクライナ軍などによりますとロシア軍の無人機31機による攻撃が行われ、このうち23機は撃墜したものの、南部オデーサ州で3人が死亡したということです。

一方、ロシアのプーチン大統領は23日、「祖国防衛の日」と呼ばれる軍人をたたえるロシアの祝日に合わせて、動画を公開しました。

この中でプーチン大統領は「祖国への忠実かつ私欲を捨てた奉仕に感謝する」と述べ、兵士をたたえるとともに、国民に結束を呼びかけました。

続いて、無人機や戦車など通常兵器の生産を強化しているとしたうえで核戦力も増強していると強調しました。

そして、最新型に更新された戦略核兵器の割合が95%となったことや、核兵器搭載可能な戦略爆撃機ツポレフ160、4機が軍に引き渡されたことをアピールしました。

ウクライナが最大の支援国アメリカからの軍事支援が揺らぎ、弾薬などが不足する中、プーチン大統領は軍事力の増強をアピールし、強気の姿勢を強調しました。

アメリカの支援継続にトランプ前大統領が影響

ウクライナの最大の軍事支援国、アメリカの支援の継続に大きな影響をおよぼしているのが、ことし秋の大統領選挙に野党・共和党から立候補しているトランプ前大統領です。

「アメリカ第一主義」を掲げるトランプ氏は、事実上の公約「アジェンダ47」の中で「兵器も備蓄も空っぽだ。“いかさまバイデン”はアメリカを第3次世界大戦に引きずり込もうとしている」と述べて、アメリカの国境管理強化の必要性を訴えるとともに、ウクライナへの軍事支援の継続に消極的な姿勢です。

バイデン政権がウクライナ支援を継続するためには、議会で緊急の予算案が承認される必要があります。

今月上旬には、アメリカ議会上院の与野党はウクライナ支援と国境管理の強化を抱き合わせた案でいったんは合意しました。

しかし、トランプ氏が国境管理が不十分だとして、反対を表明すると、共和党の議員も同調して7日の上院の採決では合意をほごにして反対に回り、この予算案の審議を進めることは否決されました。

これを受けて上院では13日、国境管理を切り離し、ウクライナなどへの軍事支援を盛り込んだ総額950億ドル余り、日本円で14兆円以上にのぼる緊急予算案を可決しました。

しかし、トランプ氏に近い共和党のジョンソン下院議長は、この予算案についても否定的な考えで、予算案承認の見通しは、立たないままです。

トランプ氏を支持し、みずからもウクライナ支援に反対する共和党のビッグス議員はNHKのインタビューに対し「バイデン政権が最初に支援を表明したときは一時的な人道支援と軍事援助だった。それが『必要なかぎり』に変わった。バイデン政権は目的も明言しないしどう達成するかも言っていない」と指摘しました。

その上で、ビッグス氏はトランプ氏の影響力について「共和党の候補者になるのがわかっているので、議員たちは『トランプ氏を支持する』と言うだろう。トランプ氏はすでに共和党内で大きな影響力を持っていると思う」と話していました。

さらに、トランプ氏はウクライナ支援の重要なパートナーであるヨーロッパとの連携にも水を差し始めています。

今月14日、選挙集会で「NATO各国は軍事費を十分に負担していない。彼らが払わないのであればわれわれは防衛しない」と述べトランプ氏が再び当選すれば、ヨーロッパに対する防衛上の関与を低下させるのではないかとの受け止めが広がっています。

一方、バイデン政権の支援戦略そのものも、ウクライナ軍の反転攻勢が思うように進まないなかで見直しを迫られています。

米元大使「ウクライナはこの先1年防衛に重点」

アメリカの元駐ウクライナ大使のウィリアム・テイラー氏はNHKの取材に対し、先月下旬キーウで、ゼレンスキー大統領の側近のイエルマク大統領府長官と今後の戦略について意見を交わしたと明らかにしました。

その上で「ウクライナ側と議論してわかったのは、ウクライナはこの先1年、防衛に重点を置くことだ。訓練に力を入れ、兵力を増強し、F16戦闘機などの新しい兵器を使いこなせるようにして、再び攻勢をかけるための準備を進める。これは去年、反転攻勢がうまくいかなかったからだ。バイデン政権は、このウクライナの戦略決定に基づいて支援を行うことになるだろう」と話していました。