軍事侵攻2年 ウクライナから日本への避難者 多くが就職に悩み

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まってから24日で2年。

日本にはいまもウクライナからおよそ2100人が避難しています。

日本での生活が長期化する中、避難者の多くは就職に関する悩みを抱えています。

日本語学校に通い 医師免許取得目指す

おととし、ウクライナの首都キーウから中学生の次女とともに日本に避難してきたナタリアさん(49)は、以前から日本で暮らしている長女の助けを借りるなどして生活を送っています。

日本では仕事をしていませんでしたが、避難生活が長引いていることからウクライナで精神科医として働いてきた知識や経験を生かして、いまは医療関係の仕事を探しています。

しかし、日本で医師として働くには日本の資格が必要なうえ、ことばの問題もあって希望する仕事に就けずにいて、日本財団の奨学金を受けて日本語学校に通いながら医師免許の取得を目指しています。

ナタリアさん
「日本に来たばかりの時は働くことは考えていませんでしたが、侵攻が始まって2年がたち、日本で生活を続ける中で、仕事を探し始めるようになりました。可能なら病院で仕事ができればと思っています。早く仕事を始めたいです」

“避難者の約半数 就職支援が必要”日本財団

日本財団がウクライナの避難者に行ったアンケートでは、およそ半数の人が就職の支援が必要と回答しています。

給付金と生活物資の提供以外で必要な支援について複数回答で尋ねた質問では、
▽「仕事の紹介、職業訓練」が44.7%と最も多く、
▽「日本人の仲間づくり」が34%、
▽「日本語教育」が29.4%などでした。

避難生活が長期化するなか、就職の支援が大きな課題となっています。

“技能や経験生かし希望に沿う就職を”

こうした中、避難者の希望に沿って就職に結び付ける取り組みも行われています。

外国人の就職支援などをしている都内のNPOの「WELgee」では、仕事を求めている避難者と面談して希望を聞き取ったうえで、本人の技能や経験を生かすことができるフルタイムの仕事を紹介しています。

履歴書の書き方の指導や面接の練習、企業との調整などを行っていて、これまでに避難者4人の就職を仲介しました。

このうち、ウクライナ東部のドネツク州から避難してきたアンナ・シャルホロドウスカーさんは、中学校の教員や記者として働いてきた経験などをもとに、おととし12月、国際NGOの職員として採用されました。

現在はウクライナに関する調査や日本の学生を対象にしたワークショップなどの業務を任されているということです。

アンナさん
「仕事は簡単ではありませんがとてもやりがいがあります。仕事を通じて、業務のスキルが得られるだけでなく、日本人への理解を深めたり生活を送るうえでの助けになったりしていると感じています」

また、アンナさんを採用した国際NGO「プラン・インターナショナル」の担当者は「日本とウクライナでは当たり前と思うことが違うので一緒に試行錯誤しながら仕事を進めています。アンナさんにとっても日々学びは多いと思いますが、私たちにとっても話し方や議論の向き合い方など自分たちが欠けている部分や得るべきところを教えてもらっています」と話していました。

WELgee 山本菜奈さん
「雇う側と本人との理解が合致するまで根気強い支援が求められますが受け入れた企業や団体からは採用してよかったという声をいただいています。ウクライナの人たちが日本で活躍できる機会を作るためにも雇用側は避難者を通じて新しい未来をつくる投資として考えていけるといいと思う」

専門家「避難者と企業の間に入って伴走的に支援を」

ウクライナから日本に避難してきた人たちの就職について、難民の問題などに詳しい武蔵大学社会学部の人見泰弘准教授は、次のように指摘しています。

武蔵大学社会学部 人見泰弘准教授
「ウクライナの避難者はグローバルな理解やスキルを持った人が多いのに、求める仕事がなかなか見つからないとか、企業の方で避難者をうまく組み込んで対応できないケースがあると聞いている。避難者と企業の間に入って伴走的に支援に関わる人がいれば、仕事のマッチングに向けて大きな助けになる」

「日本の企業が今後、海外や多様な人たちへのサービスが求められる時にそういった環境に慣れた人材が社内にいてくれることは、会社の成長に大きく貢献するはずだ。ウクライナの避難者を採用して成功したという話がいろいろな企業に届くようになっていけば、採用に積極的な企業が増えていくきっかけになるだろう」