肥満症の新治療薬 患者への処方始まる 美容目的使用など懸念も

デンマークの製薬会社が開発した、肥満症の新たな治療薬「GLP-1受容体作動薬」が、22日から国内でも販売され、医療機関で患者への処方が始まりました。この薬をめぐっては、美容目的での使用などが懸念されていて、処方した医師は「副作用のリスクなどもあるため、慎重な投与が必要だ」としています。

デンマークの製薬会社が開発した「ウゴービ」は、「GLP-1受容体作動薬」と呼ばれる薬の1つで、去年、肥満症の治療薬として国の承認を受け、22日から国内での販売が始まりました。

このうち、「肥満症外来」を設けている千葉大学医学部附属病院では、22日、60代の女性患者1人に専門の医師が診察を行い、この薬を処方しました。

薬は自分でおなかに注射をする必要があるということで、女性は、看護師に教えてもらいながら注射をしたあと、医師から運動や食生活の改善なども続けるよう指導を受けていました。

この薬が保険診療の対象となるのは、肥満症と診断され、高血圧などの症状があることなどが条件となっています。

一方で、同様の成分の糖尿病の治療薬が美容目的で使われるケースが増えていることから、厚生労働省などは、この薬についてガイドラインを設けて、肥満症の治療以外では使用しないことなどを呼びかけています。

千葉大学病院の糖尿病・代謝・内分泌内科の小野啓科長は「高度な肥満症の患者の治療には待ち望まれていた薬だが、美容目的などで安易に投与すると、血圧の低下などの副作用のリスクがある。慎重な処方が必要だ」と話していました。

厚労省や学会「ダイエットなど目的に投与してはならない」

肥満症の新たな治療薬「ウゴービ」は、「GLP-1受容体作動薬」という国から承認されている糖尿病の治療薬の用量を増やして肥満症に応用したものです。

食欲を抑える働きがあり、「肥満大国」とされるアメリカではFDA=アメリカ食品医薬品局が供給が不足していると公表するなど、世界的な需要の高まりに供給が追いつかない状況です。

同じ成分の糖尿病治療薬「GLP-1受容体作動薬」をめぐっては、国内では美容やダイエットを目的とした不適切な使用が広がり、日本医師会などは、必要な糖尿病患者に薬が届かなくなるほか、副作用の説明が不十分で体調不良につながるケースが相次いでいるとして、問題視してきました。

このため、「ウゴービ」で新たに肥満症が対象になり、より多くの患者が使用する可能性があることから、処方開始に先立って、厚生労働省や日本肥満学会などは、「GLP-1受容体作動薬」では初めて医療機関や薬局向けのガイドラインを公表しました。

この中では、投与の対象となる肥満症患者の明確な条件や、日本肥満学会の専門医が所属することなど、投与できる医療機関の条件を示しています。

そのうえで、「ダイエットなどを目的に投与してはならない」としているほか、副作用に対して適切な処置ができる体制を整備するよう求めています。