被災地「遊べる場所が減っている」子どもや保護者への影響も…

地面が大きく陥没した公園。街なかに散乱したガラス。

能登半島地震の被災地では、子どもたちが安心して遊べる場所が減ってしまい、ストレスを心配する保護者も多いということです。

石川県輪島市の小児科医は「子どもが集える場所が必要だ」と指摘しています。

遊び場所が避難所に 街なかには危険な場所も

輪島市中心部にある児童センターは幅広い年代の子どもが遊べる人気の場所でしたが、センターが入る施設が避難所になり、いまもおよそ100人が避難生活を送っています。

また、輪島港の近くにある公園は地震の影響で地面が大きく陥没しています。
街なかにも割れた瓦やガラスなどが散乱したままになっていたり、崩れかかったビルや家屋がそのままになっていたりする場所がいまも数多くあり、子どもが安心して体を動かして遊べる場所はほとんどありません。

輪島市内で保護者の声を聞きました。

6歳と8歳の子どもの父親
「家が傾いているところもあるので子どもだけで外で遊ばせるのは怖いなと思っています。子どもは家のなかでゲームをするかYouTubeを見るか(ユーチューブ)ばかりになっています。毎日遊んでいた友だちは避難していて会えず、見えないストレスはあるのかなと思います」

7歳の女の子の父親
「暗い場所を怖がり、ちょっとした揺れでもあのときの記憶がよみがえるのか、おびえるようになりました。どこに行くにも親の近くから離れないようになっています」

医師「子どもが集まれる場や時間を」

輪島市にある小児科の診療所の小浦詩 医師によりますと、最近、子どものストレスを心配する保護者が多くなっているということです。

小浦医師
「遊び場もなくなり、子供たちは直感で『頑張らなければいけない』と感じているが、不安に襲われたり、ことばで表現できない気持ちがでてきたりしているのではないか。子どもが集まれる場や時間を作っていく必要がある」

「みんなのこども部屋」で環境改善

子どもたちを取り巻く環境を少しでも改善しようと、石川県輪島市の県立輪島高校では、東京のNPO法人などが教室で子どもが遊べるスペースを開設しています。

「みんなのこども部屋」と名付けられ、対象は4歳から18歳までですが、3歳以下の子どもでも保護者と一緒なら遊ぶことができます。

地元の小学生たちは、現在、この高校の校舎で学んでいますが、授業が終わった午後3時ごろから次々と遊びに訪れ、この日は小学生などおよそ15人が集まりました。

NPOのスタッフのほか、自身も被災している輪島高校の生徒が遊び相手になっていて、コマ回しをするなど思い思いに遊びながらにぎやかに放課後を過ごしていました。宿題をする子どもの姿もみられました。

このNPO法人は、輪島市のほかに珠洲市や七尾市などでも子どもたちが遊べるスペースを開設しています。

NPO法人「カタリバ」 城谷俊太さん
「ふだん遊んでいた場所がなくなっているなかで、子どもたちにとって遊べる場所が日常の安心感につながっていくと思います。子どもらしく我慢せずにいられる場所が大事で、そういった気持ちをここで発揮してもらえたらと思います」

保護者が悩みを打ち明けられる場所を

子どもと向き合う保護者の側にも不安が募っていて、互いの状況を共有したり率直に悩みを打ち明けたりできる場の確保が課題になっています。

輪島市中心部にある小児科の診療所では、小浦詩医師が地震の前から月に数回、昼食を取りながら子育て中の親の悩み相談に応じる取り組みを市の委託を受けて行っていました。

地震で診療所が被害を受けたため、今は休止していますが、小浦医師は建物の補修が終われば早ければ3月から再開したいと考えています。

小浦医師の診療所はオンラインやコンテナを使っての診察を再開していますが、母親を中心に不安を訴える声が増えてきているということです。

小浦医師自身も小学校と幼稚園に通う3人の子どもの母親で、被災地の保護者の心情について次のように話しています。

小浦医師
「朝、子どもと家を出たときに見る町の風景が今までとあまりに違いすぎて『変わってしまったな』という小さな喪失体験の繰り返しのさなかにいます。子どもの学校をどうするのかとか、自分の仕事や家をどうするのかなど、親たちはいろいろな選択を迫られて手いっぱいという状況で、自分もほかの親たちも積もり積もっていろいろなストレスになっていると思います」

その上で、保護者が悩みを打ち明けられる場の重要性については。

小浦医師
「このようなニーズは地震があったからこそ大事な取り組みになってきます。ちょっと話をして気持ちが楽になって前を向けるような、そんな場所が必要だと思います」

奥能登地域 自治体の乳幼児健診がすべて休止

子どもたちや保護者への影響はほかにも広がっています。

能登半島地震で被害の大きかった石川県の奥能登地域では、子どもの健康観察や保護者の育児相談を目的とした自治体の乳幼児健診がすべて休止となっています。

乳幼児健診は、生後3か月から4か月の乳児や1歳6か月の幼児などを対象に各自治体や医療機関などで行われ子どもの健康状態のチェックとともに保護者の育児の悩みや子どもとの向き合い方などの相談に乗る機会となっています。

この乳幼児健診は輪島市や珠洲市、それに能登町、穴水町では現在、いずれも休止されています。会場が確保できないことや担当の医師や歯科医師の調整ができないこと、受け入れる自治体職員の人手が足りないことなどが理由です。

輪島市では市外に避難し避難先で受ける子どもも多い一方、被災した地域に残り、受けられない子どもが9人いるということで市は当面、健康相談などについては個別に保護者と連絡をとるなどして対応したいとしています。

この乳幼児健診について珠洲市と穴水町は来月中(3月)輪島市と能登町は4月の再開を予定しています。