他国と共同開発の防衛装備品輸出 自公の政調会長が協議開始

次期戦闘機をはじめとして、他国と共同開発する防衛装備品の第三国への輸出を認めるかどうかをめぐり、自民・公明両党の政務調査会長が協議を始めました。
公明党は安全保障上の必要性や国民の理解を得るための方策を慎重に検討すべきだと主張しました。

イギリス・イタリアと開発を進める次期戦闘機など、他国と共同開発する防衛装備品の第三国への輸出を認めるかどうかをめぐっては、自民・公明両党の実務者が去年4月から年末まで検討を続けたものの、両党間の合意には至りませんでした。

このため事態の打開に向けて21日から、自民党の渡海政務調査会長と公明党の高木政務調査会長が協議を始め、政府側から、これまで実務者間で検討されてきた内容について説明を受けました。

高木氏は安全保障上の必要性や国民の理解を得るための方策を慎重に検討すべきだと主張しました。

一方、今後のスケジュールについては、次期戦闘機の開発の作業分担に関する協議が、来月以降、本格化すると見込まれるため、政府が今月末までに結論を出すよう求めていることも踏まえ、協議を進めることを確認しました。

次期戦闘機とは 開発のねらいは

日本がイギリス、イタリアと共同開発を進める次期戦闘機。

アメリカのF16戦闘機をベースに、日本が独自に改良して90機余りが生産されたF2戦闘機が、2035年ごろから退役するため、その後継機として開発されます。

アメリカの最新鋭の戦闘機F35やF22戦闘機といった「第5世代機」を超える性能を目指しています。

敵機を探知する能力を高める一方、敵のレーダーに探知されにくいステルス性を一層高め「どの国でも実現していない新たな戦い方を実現する」としていて、多数の無人機と連携した戦闘も可能にし、2035年度の配備を目指しています。

こうした戦闘機の開発を目指す背景には、日本周辺の中国やロシアで「第5世代機」の配備が進み、特に中国では、戦闘機の数が第4世代機も含め、2022年に1270機と急速に増えているからです。

航空自衛隊が保有する戦闘機は大半が「第4世代機」で、数も318機とおよそ4分の1です。

このため、機体の能力を高めることで、対抗したい考えです。

しかし、新しい戦闘機を開発するためには、ばく大なコストがかかります。

政府は共同で開発することで日本単独で開発するより、コストやリスクを減らせるのに加え、パートナー国との安全保障上の防衛協力を深めることも期待できるとしています。

さらに第三国に輸出すれば、生産数が増えて、量産コストを下げられるほか、国内の防衛産業の活性化にもつながるとしています。

このため自民党は、防衛装備品の第三国への輸出を認めていない「防衛装備移転三原則」の運用指針の見直しを求めています。

一方、公明党は「次期戦闘機の輸出を限定なしに認めれば、あらゆる武器を輸出できるようになる懸念がある。政府として国民が納得できる方向性を示すことが重要だ」として慎重な姿勢を崩していません。

自民 渡海政調会長「政府の検討結果を見ながら努力」

自民党の渡海政務調査会長は記者団に対し「公明党から頂いた宿題を党として持ち帰り、政府にもさらなる検討をさせることを約束した。国民の理解をどう進めるかは政治にとって常に課題であり、政府としても考えてもらわなければならない。今月末までは、まだ時間があるので政府の検討結果を見ながら努力したい」と述べました。

公明 高木政調会長「党の問題意識伝えた」

公明党の高木政務調査会長は記者団に対し「次期戦闘機の共同開発を決めた段階では、完成品を第三国に輸出するという認識ではなかったが、なぜ輸出するということになるのか。国民の理解を得るための手段も課題で、公明党の問題意識を伝えた。山口代表は『期限ありきではない』と発言しているが、政府は今月末までに結論を出すよう求めているので、それを目指して頑張らなければならない」と述べました。