東京 町田 女児自殺 いじめ認定も“原因特定できず”と報告書

4年前、東京 町田市の小学校に通っていた女の子が同級生からいじめを受けたとされる遺書を残して自殺したことについて、有識者による調査委員会は、複数のいじめがあったことを認定した一方、「原因は複合的で特定できない」などとする報告書を答申しました。

2020年11月、町田市の小学校に通っていた小学6年の女の子が、同級生からいじめを受けたとされる遺書を残して死亡しました。

事実関係や学校と教育委員会の対応などについて、1年後の2021年11月から調査を進めてきた市長付属の調査委員会がこのほど報告書を取りまとめ、21日に町田市の石阪丈一市長に答申しました。

それによりますと、女の子に対して、
▽友人関係の縁を切ると通告する「ドッキリ」があったことや
▽2人の同級生が、チャットで「うざい」「死んでほしい」などとやり取りし、これを女の子が偶然見ていたとして、
いじめに該当すると認定しました。

一方、因果関係については、学校も一因としながらも「原因は複合的で特定できない」と結論づけました。

記者会見で、石阪市長は「経過は学校におけるいじめだけでなく、複合的なものと理解している。家庭、社会で子どもを守っていくことが大事だと受け止めている」と述べました。

調査委員会の委員長を務める相川裕弁護士は「報告書は再発防止を目的として取りまとめた。調査検討を尽くしてきたが、原因は複合的で特定できなかった」と話していました。

これまでの経緯

町田市教育委員会は、女の子が亡くなった翌年の2021年3月から重大事態として、第三者による有識者会議「いじめ問題対策委員会」を設け、事実関係の調査を始めました。

しかし遺族側は、メンバーの適性など調査のガイドラインにのっとった市側からの詳しい説明がなく、公平・中立な調査が担保できないとして、調査への協力を見合わせ、新たなメンバーで委員会を再編成するよう要望しました。

これに対し町田市は、市長付属の新たな調査委員会で、この年の11月から再調査を進めてきました。

今回の報告書内容

今回の報告書で、調査委員会は、亡くなった児童に対する複数のいじめがあったと認定しました。

具体的には、
▽2人の同級生が、児童が亡くなる前の7月から9月にかけて、「友人関係を解消する」と通告したあと、「ドッキリでした~」とふざけのように装うことを、少なくとも5、6回行っていたことや、
▽この同級生2人が、チャットで児童について「うざい」「死んでほしい」などとやり取りしていたことで、これについては、児童がたまたま見ていたとしています。

さらに、誰がやったかは特定できないものの、
▽悪口を書いた紙が机に入れられた行為があり、
これらが、いじめに該当するとしています。

そして、いじめと自殺との因果関係については、
「ひとつひとつのいじめが自死の原因となったのではなく、安全安心な学級が形成されず、長期間人間関係のストレスにさらされたことが児童が心を弱らせる一因となった」としたうえで、
「重大事態の原因は複合的で学校要因も一因だが、これのみが自死の原因とは特定できない」と結論づけました。

一方、学校の遺族への対応について、報告書では、
「学校は児童が亡くなった年の10月以降のいじめはなかった、いじめと認定した事実との因果関係はないという結論を繰り返し述べており、遺族側が知りたいと願うどんなできごとがあったのかを説明するという対応ではなく、不十分といわざるを得ない」と指摘しています。

遺族がコメント「疑問と怒りしかない 真実を明らかに」

調査委員会が報告書を答申したことを受け、女の子の遺族が代理人の弁護士を通じてコメントを出しました。

この中では「再調査が決まった際、強行な進め方に納得しない思いでしたが、他方で、ようやく調査が開始されるという期待もありました。しかし極めて重要な証拠となる録音データを確認することもないなど、調査としては不十分・不完全だと考えています。また事実とは違う記載ばかりが盛り込まれ、非常に不信感を抱いています。市の対応はいじめに向き合う姿勢がなく疑問と怒りしかありません。私たち遺族は娘に何が起こっていたのか真実を明らかにしてほしい、ただそれだけです」などとしています。