ロシアのプーチン政権への批判を続けていた反体制派の指導者ナワリヌイ氏が刑務所で死亡したことを受けて、イギリス政府はナワリヌイ氏が収監されていたロシア北部の刑務所の幹部に対し、制裁を科したと発表しました。
イギリス外務省の21日の発表によりますと、制裁を科されたのはナワリヌイ氏が収監されていた北極圏にあるロシア北部の刑務所の幹部6人で、資産を凍結するほか、イギリスへの渡航を禁止するとしています。
このなかで、イギリス外務省は「ナワリヌイ氏は収監中に治療を受けることを拒否されたり、マイナス32度の中、歩かされたりして苦しんでいた」と指摘し、刑務所の対応を非難しました。
また、キャメロン外相がコメントを発表し、「ロシア当局はナワリヌイ氏を脅威とみなし、これまでにも彼を黙らせようとしてきた。ロシアの抑圧的な性質を疑いようもない」と強調しました。
そのうえで、イギリス政府は、ロシア当局がナワリヌイ氏の遺体を遺族に引き渡していないことについて、遺族への一刻も早い引き渡しを求めていくとしています。
【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(2月21日の動き)
ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる21日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナとは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)
英外務省 ナワリヌイ氏収監の刑務所幹部に制裁
ロシア国防相 ウクライナ軍の反転攻勢は失敗と強調
ロシア国防省が2月17日にウクライナ東部ドネツク州の激戦地アウディーイウカを掌握したと発表したなか、ロシアのショイグ国防相は20日、国営タス通信のインタビューで、ウクライナ軍が奪還したとしていた南部ヘルソン州のドニプロ川の東岸地域にある集落クリンキを再び掌握したと重ねて主張しました。
その上で、「ウクライナ軍の反転攻勢にピリオドが打たれると言えるか」という問いに対し、「全体的にはそのとおりだ」と答え、ウクライナ軍の反転攻勢は失敗に終わったと強調しました。
ロシア軍の出方 英国防省“数週間かけ段階的に掌握地域拡大”
ロシア軍の今後の出方について、イギリス国防省は20日、「休息をとって準備を固める期間が必要だ。アウディーイウカから今後、数週間かけて段階的に掌握する地域を拡大しようとするだろう」と分析しています。
米紙“850~1000人のウクライナ兵が捕虜か行方不明のおそれ”
アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズは20日、欧米の当局者や現地の兵士の話として、アウディーイウカからウクライナ軍が撤退した際、850人から1000人ほどの兵士がロシアの捕虜になったか、行方不明になっているおそれがあると伝えました。
ニューヨーク・タイムズは、ウクライナ軍が兵員不足に苦しむ中で多くの兵士を失えば、さらに補充する必要が出てくるとして、「アウディーイウカを失ったことが、当初、思われていたよりも重要になる可能性がある」と、ウクライナがこの町を失った影響の大きさを指摘しています。
アメリカとウクライナの駐日大使が会見
日本に駐在するアメリカのエマニュエル大使とウクライナのコルスンスキー大使は21日、都内のアメリカ大使公邸で記者会見しました。
この中で、エマニュエル大使は「ウクライナの人々は最前線に立たされているが、ひとりではない。アメリカや日本など自由を支持する人々がともにいる」と述べ、日本とも協力してウクライナへの支援を続ける姿勢を強調しました。
そのうえで、アメリカの議会で与野党の対立により、ウクライナへの追加支援の予算案がまだ成立していないことについては「議会下院は党派を超えてウクライナの人々を見捨てることはないだろう」と述べ、議会上院に続いて、下院でも予算案が可決されるという見方を示しました。
これに対し、コルスンスキー大使も「バイデン大統領のリーダーシップと超党派の支持によって困難な時期は過ぎ、支援を得られると確信している」と述べて、期待を示しました。
一方、停戦について考えを問われると、「ロシアの目的はウクライナという国、民族や文化、言語を完全に破壊することだ。どうして交渉などできるだろう」と述べ、現時点では停戦交渉は受け入れられないという立場を強調しました。
ウクライナに投降のロシア軍元兵士 “スペインで死亡”報道
スペインなどのメディアは、ロシア軍のミル8型ヘリコプターのパイロットとして去年8月にウクライナ側に投降したロシア軍の元兵士について、2月13日、スペイン南東部のアリカンテ近くの町にある地下駐車場で何者かに銃で撃たれて死亡しているのが見つかったと、2月19日に報じました。
メディアによりますと、死亡したのはロシア軍の元兵士、マクシム・クジミノフさん(28)で、偽のパスポートを使ってウクライナからスペインに身を移し暮らしていたということです。
ロシアの国営テレビは去年10月、ロシア国防省のGRU=軍参謀本部情報総局の特殊部隊の隊員がこの元兵士について、「必ず見つけ出し、裏切り者は罰する」と話すインタビューを放送していました。
また、プーチン大統領の側近で対外情報庁のナルイシキン長官は2月20日、ロシアメディアに対し、元兵士が遺体で見つかったことについて、「この裏切り者の犯罪者は、汚らわしい犯罪を計画していた時に、すでに道徳的には死んでいた」と述べ、ウクライナ側に投降したことを激しく非難しました。
元兵士が殺害された背景などはわかっていませんが、ロシアでは2月16日に、プーチン政権を批判していた反体制派の指導者ナワリヌイ氏の死亡が発表されたこともあって、欧米メディアは元兵士の死亡についても関心をもって伝えています。
ウクライナ軍 NATOの輸血システムなど導入で兵士の犠牲減らす
ウクライナ軍はNATO=北大西洋条約機構の基準に沿った救護措置を戦地で導入するなど、ロシア軍の攻勢が強まる中で、少しでも兵士たちの犠牲を減らそうという取り組みを進めています。
ロシア軍との激しい戦闘が続く最前線に導入されたNATOの輸血システムは、小型の冷蔵庫や血液を温める装置がセットになっています。
ウクライナ軍によりますと、負傷した兵士を前線から離れた救護所などに運ぶことなく、ざんごうの中でも応急措置ができるようになったといいます。
去年11月に東部の前線でロシア軍の攻撃を受けて右腕を負傷し、このシステムで輸血を受けたというアゾフ旅団の23歳の兵士は「ざんごうの中ですぐに輸血を受けることができ、精神的にも落ち着きました。かなり出血していたので、もしもNATO基準の高い医療が受けられなかったら、死んでしまっていたかもしれません」と話していました。
ウクライナ内務省傘下のアゾフ旅団では、およそ半年前からこの輸血システムを導入しているということで、医療担当者は「戦闘で亡くなる兵士の半数余りは失血が原因で命を落としています。ウクライナ軍のすべての部隊がこの輸血システムを導入できれば、救える命は大きく増えます」と話していました。
プーチン大統領 “アウディーイウカ掌握 重要な戦果”
ロシアのプーチン大統領は20日、クレムリンでショイグ国防相から、ウクライナ東部ドネツク州のアウディーイウカをロシア軍が掌握したと報告を受け、国営テレビなどがこの様子を伝えました。
プーチン大統領は「すべての兵士たちに最高の栄誉を与えたい。ロシアの軍事作戦の歴史で特別な1ページとなった」とたたえました。
そのうえで、「間違いなく成功だ、おめでとう。この成功を発展させる必要がある。兵力や武器、弾薬などを十分に準備しなければならない」と述べ、軍事侵攻を推し進める姿勢を示しました。
ウクライナへの侵攻から2月24日で2年となるのを前に、アウディーイウカの掌握は重要な戦果だとして国民にアピールする思惑があるとみられます。
また、プーチン大統領はウクライナ軍が去年奪還したとしていた南部ヘルソン州のドニプロ川の東岸地域にある拠点クリンキの集落について、ロシア軍が再び掌握したと主張し、ウクライナ側の反転攻勢を撃退していると強調しました。
一方、アメリカのメディアが2月、複数の議会関係者の話として、ロシアが宇宙空間に核兵器を持ち込み、人工衛星を標的にする可能性があるとする情報をバイデン政権が得ていると伝えていますが、プーチン大統領は「アメリカなどが最近、騒いできたが、われわれは宇宙での核兵器の配備は断固として反対している」と否定しました。
“行方わからない人 ウクライナ側とロシア側あわせ約2万3000人”
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から2年となるのを前に、ICRC=赤十字国際委員会は、侵攻以降、殺害されるなどして行方がわからない人たちが、ウクライナ側とロシア側あわせておよそ2万3000人にのぼると明らかにしました。
国際人道法上、中立な立場であるICRCは、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻以降、双方の家族から行方が分からなくなった兵士や市民について問い合わせを受け、相手政府へ情報を求める活動を行っています。
この活動を行う部署のトップ、ブヤシャニン氏は20日、本部のあるスイスで会見を行い、これまでにおよそ8000人について特定に至った一方、およそ2万3000人については行方がわからないままだと明らかにしました。
殺害されたか、捕虜になるなどした可能性があるとしていて、行方不明者の国籍の内訳は明らかにしていません。
ブヤシャニン氏は会見で「まだ多くの家族が、愛する人に何が起こったのかをわからないままであり、私たちは全力を尽くす」と述べ、今後も引き続き調査を続ける考えを示しました。
米カービー大統領補佐官「ロシアは侵攻当初から補給面で苦労」
ロシア政府がウクライナ東部のアウディーイウカを掌握したと発表したことについて、アメリカ ホワイトハウスのカービー大統領補佐官は20日、記者団に対し、ロシア軍はアウディーイウカが東部ドネツク州などでの軍事作戦の補給や司令の拠点になると考え、攻勢を強めてきたという見方を示しました。
そして、「ロシアは侵攻当初から補給面で苦労してきた。アウディーイウカを掌握したからといって、戦場で軍を維持することに成功するとはいえない」と指摘しました。
その上で、「ゼレンスキー大統領が撤退を決断したのは賢明な判断で、ウクライナ軍は貴重な資源を守ることができた」と述べ、アウディーイウカからの撤退はウクライナ軍にとって、軍事作戦全体の変更を迫られるものではないとの見方を示しました。
一方で、「撤退はウクライナが勇敢でなかったからではなく、アメリカ議会が対応をとらなかったからだ」と述べ、ウクライナへの軍事支援を盛り込んだ緊急予算案に反対する野党 共和党を批判しました。
また、ロシアのプーチン政権への批判を続けた反体制派の指導者ナワリヌイ氏が刑務所で死亡したことをめぐり、カービー大統領補佐官は「プーチン大統領に責任があることに変わりはない。彼の死について信頼できる捜査が行われないかぎりは、ロシア政府の主張をうのみにすることはできない」と述べて、ロシア政府に対し、死因について透明性のある調査を求めていく考えを示しました。
また、ナワリヌイ氏の死亡に加えて、ウクライナへの侵攻からまもなく2年になることを受けて、ロシアの責任を追及するとして、2月23日に新たな制裁を発表することも明らかにしました。
G7 軍事侵攻2年の2月24日にオンラインで首脳会合開催へ
G7=主要7か国の議長国、イタリアは20日、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まってから2年となる2月24日にオンラインでG7の首脳会合を開くと発表しました。
首脳会合はウクライナへの支援を議題に行われ、ウクライナのゼレンスキー大統領も参加する見通しだとしています。また、会合の成果として共同宣言を採択するということです。
議長国イタリアの下でのことし初めての首脳会合となり、欧米各国で支援疲れも指摘されるなか、G7としてロシアに対し結束を示すねらいがあるとみられます。
ナワリヌイ氏の母親 遺体の引き渡しを求める
ロシアの当局が2月16日に刑務所で死亡したと発表した、反体制派の指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏をめぐっては、検査のため、さらに14日間、遺体の引き渡しができないと、当局が母親らに通告したと伝えられています。
ナワリヌイ氏の母、リュドミラさんは20日、刑務所の前で撮影した動画を公開し、「息子に会えないまま5日目となった。遺体の所在すら分からない」と訴えました。
その上で、「プーチン、問題の解決はあなたしだいだ。そろそろ息子に会わせてほしい。人間らしく葬れるよう、遺体の早期引き渡しを求める」と呼びかけました。
ロシアの人権団体のもとには市民から、連邦捜査委員会に遺体の返還を求める意見が7万件以上寄せられているということです。
一方、ナワリヌイ氏の妻、ユリアさんは19日に公開したビデオメッセージで、「遺体を引き渡さないのは毒物の痕跡が消えるのを待っているからだ」と述べ、ナワリヌイ氏の死亡にプーチン政権が関与したとして強く非難しました。
これについて、ロシア大統領府のペスコフ報道官は20日、「国家元首に対する全く根拠のない恥知らずな非難だ」と批判しました。
スウェーデンのNATOへの加盟 2月26日にも承認見通し
スウェーデンのNATO=北大西洋条約機構への加盟をめぐり、2月26日にも加盟国で唯一承認していないハンガリーの議会で承認の採決が行われ、加盟が実現する見通しとなりました。
スウェーデンはロシアの軍事侵攻を受けて、隣国でロシアと国境を接するフィンランドとともに、2022年5月、そろってNATOへの加盟を申請しました。フィンランドはすでに加盟が実現し、スウェーデンについては1月にトルコの議会が承認し、唯一、承認していないハンガリーが焦点となっています。
承認が遅れている背景には、ハンガリーの議会がスウェーデン側がハンガリーの政治状況に懸念を示したことを問題視してきたためとされています。
こうしたなか、ハンガリーの与党幹部は20日、2月26日にスウェーデンの加盟を承認する採決を行うよう議長に要請したことを明らかにしました。
与党は議会で多数を占め、党として承認を支持する方針も表明していて、2月26日にも議会で加盟が承認され、スウェーデンのNATOへの加盟が実現する見通しとなりました。