「なくしたくない」地域の憩いの場 “銭湯” 地震で存続の危機

地震は、地域の憩いの場として親しまれてきた “銭湯”のありようも変えようとしています。

能登半島地震で大きな被害を受けた石川県では、被害を免れた施設を使って入浴のサービスを提供し始めた銭湯がある一方で、存続の危機に立たされている銭湯もあります。

戻ってきた憩いの場

石川県珠洲市で明治時代から続く銭湯「宝湯」は、地震で銭湯の建物が倒壊したため営業を中止していますが、大きな被害を免れた向かいの別館を使い「貸し切り風呂」のサービスを始めました。

風呂は温泉をひいていて、店主の橋元宗太郎さんが壊れた配管にホースをつなぐなどして応急的に修理したということです。

“再建も目指したい”

橋元さんは、「地元のみなさんにゆっくり温泉に入ってもらい体を休めてほしいと思います。いつになるかわかりませんが『宝湯』の再建も目指したいです」と話していました。

廃業を決めた銭湯も

一方の輪島市では、存続の危機に立たされている銭湯があります。

輪島港がある鳳至町の「常盤湯」は、燃料費の高騰で苦しむ中、修繕には多額の費用がかかるとして再建を断念し、廃業を決めたということです。

漁師や海女の人たちが多く利用し1日の疲れを癒やしてきたということですが、地震で建物の壁にはひびが入り、銭湯のお湯や水をためる貯水タンク2つが傾いて壊れました。

60年近く通った女性 “毎日家族で通っていた さみしい”

60年近く通っていたという輪島市の70代の女性は、「365日、毎日、家族で通っていました。近くに銭湯はなく、本当にお世話になったお風呂屋さんなのでさみしいです」と話していました。

“憩いの場として続けたかった…”

経営する酒本正弘さん(54)は、「利用者には高齢者が多く地域の憩いの場として続けたかったのですが、現実は厳しいです」と肩を落としていました。

解体が決まるも…再建を模索する銭湯

被害を受けながら再建を模索する銭湯もあります。

輪島市河井町の「末広湯」は、幅広く地域の人が利用し、憩いの場として親しまれてきました。しかし、地震でボイラーの煙突が根元から折れたほか、お湯を沸かす釜が壊れる被害を受けました。

さらに建物が応急危険度判定で赤の「危険」と判断されたため、3月1日に解体されることが決まりました。

“憩いの場をなくしたくない”

経営する山外勝隆さん(84)は、解体や再建には多額の費用がかかることから廃業を考える一方、地域の憩いの場をなくしたくないと悩んでいるということです。

山外さんは「地震の影響で地域から人が減っていけば営業が難しくなるかもしれないが、なんとか再建できないか息子2人と相談していきたい」と話していました。