石川 珠洲 明治から続く銭湯 被害免れた施設で貸し切り風呂

石川県珠洲市の銭湯が、大きな被害を免れた一部の施設を使って「貸し切り風呂」のサービスをはじめ、地元の人たちに提供しています。

「貸し切り風呂」のサービスをはじめたのは、珠洲市宝立町鵜飼にある、明治時代から続く銭湯「宝湯」です。

能登半島地震で銭湯の建物が倒壊したため営業を中止していますが、大きな被害を免れた向かいの別館を使い、地元の人たちに入浴してもらっています。19日も常連客が訪れ、ゆっくりと湯につかっていました。

風呂は温泉をひいていて、店主の橋元宗太郎さんが壊れた配管にホースをつなぐなどして応急的に修理したということです。

風呂を利用した男性は「とても気持ちよく、体が楽になりました。また入りにきたいです」と話していました。

元日に営業していたこの銭湯では、客の82歳の男性が地震で倒壊した建物の下敷きになり亡くなりました。亡くなった男性は長くこの銭湯に通っていた常連のひとりで、いつも宝湯を利用するのを楽しみにしてくれていたということです。

橋元さんは「銭湯がなくなったことより常連客が亡くなったことが残念でなりません」と話していました。

大切な常連客が亡くなったことに落ち込み、「申し訳ない」という気持ちから遺族にあいさつに行ったところ、遺族からは「宝湯が大好きだった祖父がこんなことになりましたが気にしないでください。これからも私たちは宝湯に入りにいきます」と声をかけられたということです。

橋元さんは長く親しまれてきた銭湯を立て直し、地域の人たちのためにもなんとか再開させたいと考えています。

橋元さんは「地元の皆さんにゆっくり温泉に入ってもらい体を休めてほしいと思います。いつになるかわかりませんが『宝湯』の再建も目指したいです」と話していました。