転校する生徒もいるなか 被災地に残る高校生 地元への思いは

「地元では生活ができない」「勉強の遅れを避けたい」
能登半島地震で大きな被害を受けた地域では、このような理由などで転校する生徒や児童がいます。
その一方で、地元に残り、避難所で生活しながら学び続けている高校生もいます。

能登半島地震で石川県輪島市はおよそ2500棟の住宅が全壊し、いまも広い範囲で断水が続くなど大きな被害を受けました。

勉強の遅れを理由に転校する生徒も

市内にある県立輪島高校は地震で校舎の一部が傾きましたが、先月19日から安全が確認された教室で授業を行っています。

ただ、被災して教員の数が減っているほか、家の片付けをする生徒への配慮もあって、授業は午前中の3時間だけで、カリキュラムに遅れが出ています。

こうした中、「地元では生活ができない」、「勉強の遅れを避けたい」などとして、全校生徒306人のうち20人がすでに転校したか、今後、転校する予定だということです。

“地元に残る選択”をした生徒「友人がばらばらに さみしい」

その一方で、地元に残る選択をした生徒もいます。

1年生の泉豪さんは両親と市内の避難所で生活しながら高校に通っています。

泉豪さん
「同じクラスで勉強していた友人が、地震で簡単にばらばらになっていくのが悲しいというかさみしいです。勉強する環境もないし、これから受験に向けて大変な教科も出てくるので、遅れをとるのは怖いです」

“教育熱心な先生たちのもとで勉強続けたい”

泉さんは両親から幾度となく、親類が住む大阪の高校に転校するよう勧められました。

それでも輪島市に残った理由の1つは、教育熱心な先生たちのもとで勉強を続けたいと思ったことです。

校長先生がみずから課外授業を行っているほか、生徒の理解度にあわせて50ページを超える問題集を作ってくれた先生もいるといいます。

地元に残る思いは“友人関係”に

そしてもう1つの理由は、同級生たちと離れたくないという思いです。

小学校からずっと学校が一緒だという友人が少なくありません。

泉さん
「勉強だったら遅れは取り戻せても、友人関係は取り戻せません。今は勉強は後回しにしても友人関係を大切にしたい」

“段ボールベッド”を机代わりに

一方で、泉さんは勉強の遅れを何とか取り戻そうと、高校から避難所に戻ったあと、時間を見つけて毎日2時間ほど勉強をしています。

机の代わりに使うのは段ボールベッドです。

参考書やノートを広げ、寒いときはダウンジャケットを着込みながら、床に座って勉強します。

100人近くが身を寄せる避難所の体育館は、自宅ほど集中して勉強ができるわけではありません。

そんな厳しい環境で勉強を続けられるのには、ふるさと輪島への思いもあると言います。

泉さん
「輪島は唯一のふるさとで大切な場所です。頑張っている高校生がほかにもたくさんいるので、頑張っているのを知ってもらえば、ほかのみんなの希望にもなれると思います」

輪島高校 “今後も学ぶ機会できるだけ確保”

輪島高校は地震の直後から、転校を希望する生徒が金沢市や小松市などにある高校に受け入れてもらえるよう調整を行っています。

一方で、学校に残る生徒に対しては、19日から午後も授業を行うことにしていますが、授業数は減った状態で、通常に戻るめどは立っていません。

学校側は今後も学ぶ機会をできるだけ確保していきたいとしています。

輪島高校 平野敏校長
「どんな状況にあっても学びを止めてはいけないというのが根本にあります。転校する生徒には『頑張れよ』という気持ちです。生徒たちが自分と向き合ってどんな努力をしていくのか楽しみにしています」

輪島市内 12の小中学校は授業数を通常に戻せず

輪島市内には輪島高校のほかに県立高校がもう1校あるほか、3つの中学校と9つの小学校があります。

このうち、2つの高校では授業が午前中だけとなっています。

12の小中学校は午後も授業はありますが、授業数は減っていて通常には戻っていません。

また、小中学校の授業は、校舎の安全が確認された輪島高校と2つの小学校のあわせて3か所に生徒や児童を集める形で行われています。