北陸新幹線 金沢~敦賀の開業迫る 宿泊施設が直面する問題とは

北陸新幹線の金沢・敦賀間の開業まで16日で1か月です。

観光客の増加に期待を寄せつつ、石川県内の宿泊施設では、悩ましい問題に直面しています。

能登半島地震の2次避難所になっている宿泊施設では、被災者と観光客の受け入れをどう両立するのか、難しい判断に迫られています。

開業初日の切符販売開始

東京駅と金沢駅の間で運行されている北陸新幹線は、3月16日に金沢駅と福井県の敦賀駅を結ぶおよそ115キロの区間が新たに開業します。

16日から開業初日の切符の販売が始まり、新たに停車する小松駅の窓口では、最初に敦賀駅に向かう列車の切符を買い求める人の姿が見られました。

列の先頭にいた小松市の29歳の男性は、朝の5時前から並んでいたということで、金沢駅から敦賀駅へ向かう最初の列車の座席を確保できたと喜んでいました。

小松市の29歳男性
「地元を走るということで、新幹線から見た小松を楽しみたいと思います」

また、2番目に並んでいた小松市の31歳の男性も、同じ列車の切符を購入し、この日初めて会った2人は、隣どうしの席になったということです。

小松市の31歳男性
「小松の町の景色を1番最初の新幹線の車窓から見るのが今から楽しみです」

一方、こうした地域にある宿泊施設では、新幹線の開業後も、能登半島地震の2次避難所として可能なかぎり被災者の受け入れを続けていこうという動きが出ていて、当面は、観光需要を取り込みながら、被災者の支援にも協力していくということです。

旅館やホテルなど2次避難所 245か所 被災者5275人

石川県によりますと、16日時点で、県内には旅館やホテルなどの2次避難所が245か所あり、5275人の被災者が身を寄せています。

このうち金沢市を除く加賀地方には、16日時点で84か所に2988人が避難しています。

県は2月末から3月末までが利用できる期限の1つのメドになるとして、2次避難者に今後の住まいの意向を尋ねるアンケートを実施していて、2月中に結果をまとめることにしています。

馳知事「ギリギリの調整」

石川県 馳知事(15日の記者会見)
「避難者からは『出て行けというのか』というお叱りのことばや、『安心して過ごせる場所を確保してほしい』という声を頂いている。ホテルや旅館も追い出したいわけではないが、1泊1万円ではやっていけず、北陸新幹線の金沢・敦賀間の開業に向けて準備をしてきた経緯もある。ギリギリの調整をしながらこんにちに至っている」

加賀のホテル キャンセル相次ぐも予約戻り始める

石川県加賀市の「ホテル アローレ」は、北陸新幹線の金沢・敦賀間の開業を見据え施設の改修を進めてきました。

このうち宴会場は、社員旅行などの団体客の利用を増やすため、1億円余りをかけて壁紙の張り替えなどを行っています。

地震の影響でキャンセルが相次いだ予約は徐々に戻り始めていて、とりわけ新幹線が開業した後は土日を中心に増加しているということです。

3月末以降も避難者受け入れも料金5000円の差

ホテルは積極的に宿泊客を呼び込んでいきたいとしていますが、一方で、期限としてきた3月末以降もできるかぎり2次避難している被災者の受け入れを続けていく方針です。

ただ、ホテルの平均的な宿泊料金は1泊1人あたり1万5000円程度なのに対し、被災者の受け入れに伴って施設側に支払われる利用額は食事付きで1泊1人あたり1万円となっています。

社長「宿泊客に期待したが、状況は大きく変わった」

太田長夫社長は、被災した人たちのことを最優先に考えながらも、先行きに不安も感じているということです。

「ホテル アローレ」太田社長
「新幹線をきっかけに温泉地の魅力を知ってもらい、宿泊客も多く迎え入れたいと期待してきましたが、状況は大きく変わってしまいました。いまの環境の中で営業を続けていく努力をしていかなければと思っています」

小松の旅館 新幹線開業後も避難者受け入れ決める

能登半島地震を受けて2次避難したおよそ100人を受け入れている石川県小松市の老舗旅館「のとや」は、北陸新幹線の金沢・敦賀間が開業した3月以降も、受け入れを続けることを決めました。

社長「被災者が安心するまで受け入れたい」

社長の桂木実さんは、避難している人から「これからどうなるのか不安だ」という声を聞いて判断したということで、「被災者が安心するまで受け入れたい」としています。

売り上げがコロナ禍前の水準に回復しつつあるなかでの地震で、国からの補助では赤字となっていますが、いまは被災者を支援したいという気持ちが大きということです。

「のとや」桂木社長
「来たときは暗い顔をしていた皆さんが元気になり、笑顔も見せてくれるようになりました。スタッフとコミュニケーションがとれていく姿を見て、これが旅館業そのものだと感じました」

避難している農家 輪島で収穫のホウレンソウ贈る

避難生活を続ける被災者と旅館の交流は深まり、輪島市町野町から家族6人で避難している農家の池口廣人さんは、感謝の気持ちを伝えたいと、輪島市内のハウスで収穫されたホウレンソウを贈りました。

池口さん
「こんなにお世話になり、親切を受けていいのかなと気になっていました。女将に相談し、ここで使ってもらえないかと思いました」

旅館は、被災者の生活が落ち着くまで、当面は7月ごろまでをめどに受け入れを続けたいとしています。

桂木社長
「被災者の行き先が見つかり、みなさんが前向きになったときに、胸を張って石川県に旅行に来て下さいとお願いしたい」