【ウクライナ情勢 解説】アウディーイウカ 陥落の危機

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって、まもなく2年。去年10月以降は中東のイスラエルとハマスの戦闘に国際社会の関心が移った面もありますが、その間に、ウクライナの戦況がどうなっていたかと言えば「思っていた以上にウクライナ側にとって悪化していた」と言えるような状況です。

最新の戦況と、長期化する侵攻の影響について、「キャッチ!世界のトップニュース」別府正一郎キャスターの解説です。

※2月16日に放送した内容です。

苦戦の象徴となっているのが、東部の町アウディーイウカです。

今、ロシア軍によって陥落させられるのではないかという、ぎりぎりの局面になっています。

アウディーイウカは東部ドネツク州にある小規模な工業都市です。

ウクライナの防衛ラインの最前線にあります。

しかし、ロシア軍の空爆で町はほぼ壊滅的に破壊され、かつては3万人余りだった住民は事実上全員避難し、今では、廃虚のようになっています。

現地からの報道では、ロシア軍は、この町を取り囲むように支配地域を広げていましたが、数日前には、町の北部と南部で周辺部に部隊を進めたということです。

仮に、アウディーイウカが陥落すれば、ウクライナ側にとって大きな打撃です。

東部の防衛ラインがその分、後退することになります。

加えて、本来であれば、ウクライナ軍は、アウディーイウカを拠点に、およそ20キロほど南にあるドネツク州の州都ドネツクの奪還を目指したいところです。

しかし、その目標もさらに遠のくことになります。

この町の命運が、ウクライナの現在の苦戦の象徴となっているのには、主に2つの理由があります。

まずは、ウクライナ軍の弾薬不足があらわになっている点です。

ウクライナ軍は、ロシア軍の侵攻が始まると、欧米からの軍事支援を受けて、戦線を東部に押し戻すことができました。

去年の反転攻勢は、確かに、期待された結果を出さず失敗との受け止めもありますが、一方で、それによって、ロシア軍のさらなる支配地域の拡大は防ぐことができました。

しかし、アメリカが追加の軍事支援の予算案の可決ができないなか、欧米の軍事支援は先細りしています。

その影響が、アウディーイウカにも及んでいると見られているのです。

次に、ウクライナ政府、そして、軍にも難しい決断を迫っている点も象徴的です。

ゼレンスキー大統領は、アウディーイウカの防衛に「最大限注視して、最大限支援する」と述べたと伝えられています。

軍も、先に解任されたザルジニー氏に代わって、新たに就任したシルスキー総司令官が援軍を送っています。

ただ、誰もが思い起こすのは、アウディーイウカのさらに北方の町バフムトです。

この町の防衛のために、ウクライナ軍は多くの兵力を投入しましたが、多くの犠牲を出しながら、結局はロシア軍に奪われました。

アウディーイウカも同じようなことになるのではないかとの懸念が高まっています。

まもなく2年と、長期化する侵攻。

前線では、その長期化の影響がはっきりと見えるようになっています。