ロシアでプーチン政権を批判する急先ぽうとして知られ、北極圏にある刑務所に収監されていた反体制派の指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏が死亡したと刑務所を管轄する当局が発表しました。
ロシアのプーチン政権への批判を続けてきたナワリヌイ氏は2020年、政権側の関与が疑われる毒殺未遂事件の被害を受け、その翌年、過去の経済事件を理由に逮捕され、刑務所に収監されました。
収監中も支援者を通じてSNSで政権批判を続け、ウクライナ侵攻が始まってからは人々に反戦デモを呼びかけていました。
また、ロシア大統領選挙の日程が正式に決まった去年12月にはみずからを支援する団体を通じてプーチン大統領以外の候補者に投票するよう呼びかけていました。
ナワリヌイ氏の支援団体は去年12月、ナワリヌイ氏は、ロシア北部のヤマロ・ネネツ自治管区の刑務所に移されていたとSNSで明らかにしていましたが刑務所を管轄する当局は16日「ナワリヌイ氏は散歩のあと気分が悪くなり医師が蘇生措置を行ったものの死亡が確認された」と発表しました。
47歳でした。
ナワリヌイ氏を支援する団体は、前日の15日、ナワリヌイ氏が裁判のために刑務所からビデオを通じて姿を見せ、健康そうに見えたとしてその映像をSNSで公開していました。ロシア大統領府のペスコフ報道官はナワリヌイ氏が死亡したという発表について「原因は医師が明らかにするはずだ」と述べた上ですでにプーチン大統領に報告されたと明らかにしました。
ナワリヌイ氏を巡っては、人権団体や欧米諸国が即時の釈放を求めていただけにプーチン政権に対する欧米側の批判がいっそう強まるものとみられます。
【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(2月16日の動き)
ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる16日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナとは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)
ロシア反体制派 ナワリヌイ氏が死亡
ウクライナ ゼレンスキー大統領「殺害されたのは明らか」
ロシア当局がナワリヌイ氏が死亡したと発表したことについて、ウクライナのゼレンスキー大統領は16日、訪問先のドイツで「プーチン大統領によって殺害されたのは明らかだ。プーチン大統領は誰が死のうと気にしない。彼にとって重要なことは、自分の地位を守ることだ」と述べました。
ミュンヘン安全保障会議 ゼレンスキー大統領も出席
ウクライナに対する欧米からの軍事支援が停滞する中安全保障をテーマにした国際会議がドイツ南部のミュンヘンで始まりました。
会議には、ウクライナのゼレンスキー大統領も出席する予定で、ロシアによる攻勢がいっそう強まっているとして各国に支援の継続を訴えるとみられます。
ことしのミュンヘン安全保障会議は、日本時間の16日夜始まりました。
ことしは3日間の日程で開かれ、ドイツのショルツ首相などの首脳をはじめ、アメリカのブリンケン国務長官、中国の王毅外相など、100人以上の閣僚が出席する予定です。
テーマの1つは今回もロシアによる軍事侵攻が続くウクライナへの支援です。
ウクライナ大統領府は、ゼレンスキー大統領が17日会議に対面で出席し、演説する予定だと発表し、大統領は、ロシアによる攻勢がいっそう強まっているとして支援の継続や強化を訴えるとみられます。
会議に先立って、ゼレンスキー大統領は16日、ドイツの首都ベルリンを訪れ、ショルツ首相と会談しました。
このあと、フランスを訪問しマクロン大統領とも会談する予定です。
ウクライナ支援を巡っては、アメリカで、軍事支援を盛り込んだ緊急の予算案が野党・共和党の反対で暗礁に乗り上げるなど最大の支援国による支援の先行きが不透明となっています。
ゼレンスキー大統領としてはヨーロッパの主要な支援国を相次いで訪問し、ロシアの攻撃が続くウクライナを支援することはヨーロッパの安全保障に直結する喫緊の課題だとして支援の必要性を訴えるとみられます。
元駐ウクライナ大使 “アメリカ支援なしでは世界に深刻な影響”
アメリカの元駐ウクライナ大使のウィリアム・テイラー氏がNHKのインタビューに応じ、ミュンヘン安全保障会議では、ウクライナ支援が主なテーマになると指摘した上で、アメリカが追加の軍事支援を行わなければ、世界の安全保障に深刻な影響を与えるおそれがあると懸念を示しました。
その上で「アメリカの支援なしでは、ウクライナの防衛は非常に難しい。軍事支援の大部分、武器も弾薬もアメリカの在庫から調達したもので、アメリカはヨーロッパよりも大量かつさまざまな武器を保有している」と述べました。
さらに「もしアメリカが追加支援を行わなければ、ロシアは勢いづくだろう。アメリカはパートナーとして信頼できないというシグナルを送ることになり、中国の習近平国家主席やほかの独裁者たちは、アメリカにつけいる隙があるかどうか注視するだろう。ウクライナにとどまらず、ほかのすべての同盟関係に多大な影響を及ぼす」と述べ、世界の安全保障に深刻な影響を与えるおそれがあると懸念を示しました。
ロシア ウクライナ側の東部の拠点への攻勢強める
ロシア軍は東部ドネツク州のウクライナ側の拠点アウディーイウカへの攻勢を強め、街の北側にあるヨーロッパ最大級のコークス工場に迫っていて、激しい攻防が続いているとみられます。
ウクライナ軍のタルナフスキー司令官は16日、SNSで、現地の状況は困難ではあるものの制御されていると強調しました。
そのうえで「街なかで激しい戦闘が続いている。敵を阻止するため、あらゆる兵力と手段を使う」として徹底抗戦する考えを示しています。
アウディーイウカはドネツク州の州都ドネツクの15キロほど北に位置し、州全域の掌握をねらうロシア軍は去年秋頃から多くの部隊を投入し、兵士の犠牲をいとわずに攻撃を強めています。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は15日、「ロシア軍はウクライナ軍が撤退せざるをえなくなる状況をつくりだそうとしているが、ウクライナ軍はまだ完全撤退しておらず、ロシア軍の前進を阻んでいる」と分析しています。
そのうえで、プーチン政権としては来月の大統領選挙を前にアウディーイウカの掌握をドネツク州での重要な勝利だと国民に向けてアピールするねらいがあると指摘しています。
ロシア ウクライナにミサイル攻撃 ロシアも攻撃受け双方死傷者
ウクライナでは15日にかけてロシアによる大規模なミサイル攻撃が行われ、ウクライナ空軍は発射された26発のうち13発を撃墜したとしていますが、東部ハルキウ州で60代の女性が死亡したほか、各地でけが人やインフラの損壊などの被害が出たということです。
また、東部ドネツク州の知事は14日に州内の住宅などが砲撃を受け、あわせて8人が死亡したと明らかにしました。
一方、国営ロシア通信は15日、ロシア西部のウクライナとの国境近くの都市ベルゴロドにウクライナ軍の攻撃があったとして、がれきが散乱するスーパーマーケットや窓が割れた集合住宅などの様子を伝えました。
ベルゴロド州の知事によりますと子どもを含む7人が死亡し、18人がけがをしたということです。
こうした中、ウクライナ大統領府は、ゼレンスキー大統領が16日からドイツとフランスを訪問すると発表しました。
ゼレンスキー大統領は17日には、ドイツ南部ミュンヘンでの安全保障会議に出席し、演説を行うほか、欧米各国の出席者との会談を予定しているということで、軍事支援の先行きが不透明になる中、支援の継続を働きかけるとみられます。
“ウクライナ東部の町がロシア支配下に入るおそれ”米高官
ウクライナでは東部ドネツク州のアウディーイウカ周辺で、占領地域の拡大をねらって包囲を試みるロシア軍の攻撃が続いています。
これについてアメリカ・ホワイトハウスで安全保障分野の広報を担当するカービー大統領補佐官は15日、記者会見で「ウクライナ側から危機的な状況だと報告を受けている。ロシア軍がウクライナの陣地を攻め続け、アウディーイウカはロシアの支配下に入るおそれがある」と明らかにしました。
そして「ウクライナ軍が、前線で砲弾が足りなくなっているのが理由だ。われわれはロシアの攻撃の阻止に必要な砲弾を提供できていない」と述べて、アメリカ議会がウクライナへの支援を含む緊急予算案を早急に成立させる必要があると強調しました。
アメリカ議会では上院が13日にウクライナやイスラエルへの支援を含む緊急予算案を可決しましたが、野党・共和党が多数派の下院では可決する見通しが立っておらず、予算案が成立するか不透明な状況が続いています。
ゼレンスキー大統領 “戦局の打開に努めている”
ゼレンスキー大統領は15日、公開した動画でロシア軍が攻撃を強めているアウディーイウカなどの東部の戦況について軍のシルスキー総司令官とウメロフ国防相から報告を受けたと明らかにしました。
その上で「できるだけ多くのウクライナの人々の命を救うためわれわれの兵士が力を発揮できるよう全力を尽くしている」と述べ、戦局の打開に努めていると強調しました。
避難続けるウクライナの人たちの心のケア考えるシンポ 東京
ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから2月24日で2年となるのを前に、日本で避難生活を続けているウクライナの人たちの心のケアを考えるシンポジウムが東京で開かれました。
国内の心理カウンセラーなどで作る団体が東京 千代田区の参議院議員会館で開いたシンポジウムには、侵攻開始後にウクライナから避難してきたおよそ50人や、その支援に関わっている人などが参加しました。
この中で、おととし東部のハルキウ州から避難してきた24歳の女性が、祖国に残る家族を心配しながら都内で暮らすうちに味覚がなくなってしまったことなどを語りました。
また、日本への避難者のべ153人に今月インターネットで行ったアンケートで、夜中に目が覚めて眠れないとか、楽しかったことが楽しいと思えないといった、体や心への影響を感じ、ストレスマネジメントを強化したほうがいいとされる目安を上回った人が55%にのぼったことが報告されました。
シンポジウムを主催した全国心理業連合会の浮世満理子代表理事は、「避難してきた人たちは、仕事を始めたり日本の生活になじもうとしたりしているものの、戦争のトラウマや異国での生活のギャップに苦しんでいる人が多い。特に子どもたちが将来の希望を見失うことがないよう、経済的な援助や一人ひとりへのサポートが必要だ」と話していました。
ウクライナの自治体トップら 東京で支援呼びかけ
来週、東京でウクライナの復興に関する会議が開かれるのを前に、ウクライナの自治体のトップらが東京都内で行われたイベントに出席し、ロシアによる軍事侵攻で多くの建物やインフラがいまも被害を受けているとして、支援を呼びかけました。
このイベントはウクライナの自治体や企業への支援につなげようと、JICA=国際協力機構が東京 千代田区で開きました。
会場内のステージではウクライナの自治体のトップなど合わせて10人が、現地の状況について講演しました。
このうち8か月にわたりロシアに占領された南部ヘルソン市のベロブロヴ副市長は、「毎日、80から150の砲弾が着弾し、市民は生きることだけを考えているが、同時にあす、あさってのことも考えている」と述べて、ロシアによる侵攻が続く中でも復興に向けた動きが大切だと強調しました。
そして、地下に病院を建設し攻撃があっても稼働できるようにする計画や、破壊されたかんがい施設を復旧させる計画があるとして、支援を呼びかけました。
また会場にはウクライナで義手をつくる企業などあわせて10社がブースを設け、訪れた人たちに事業の内容を説明し、投資や技術協力などを求めていました。
前線に近い東部ハルキウ市のイサエヴィ副市長は、多くの住宅や教育機関がいまもロシアの攻撃を受けているとして、「ハルキウ市は巨大な被害を受け、復旧のために多くの費用がかかる。日本からの継続的な支援を期待している」と話していました。
“復興支援に女性参画の視点を” 与党議員連盟が外相に提言
紛争の予防や和平に女性が主体的に参画することが重要だとする考え方「WPS」の視点をウクライナの復興支援に取り入れてもらおうと、与党の議員連盟のメンバーが上川外務大臣に提言書を手渡しました。
「WPS」は、戦争などで被害者になりやすい女性が、紛争の予防や和平に主体的に参画することが重要だとする考え方です。
16日はWPSの取り組みを進める自民党と公明党の議員連盟のメンバーが外務省を訪れ、上川外務大臣に提言書を手渡しました。
提言では、ウクライナの復興支援にWPSの視点を取り入れることが重要だとして、紛争地域などで女性のニーズにあわせた支援を強化することや、復旧・復興の意思決定に女性が参画すること、それに女性も使いやすい機材を開発することなどを求めています。
来週19日に都内で開かれる「日・ウクライナ経済復興推進会議」では、WPSをテーマにしたセッションも行われます。
上川大臣は「ウクライナや中東では女性や子どもたちが厳しい状況に置かれている。来週の会議では、提言を踏まえて活発な議論をしたい」と述べました。