被災地の仮設住宅“2階建てや民間土地活用 戸数確保を”専門家

能登半島地震の被災地で建設が進められている仮設住宅について、専門家は、入居の希望に対して着工が追いついていないとして、2階建てにしたり民間の土地を活用したりすることで、必要な戸数の確保を急ぐべきだと指摘しています。

能登半島地震で住まいを失った被災者について、県は、仮設住宅をはじめ、民間の賃貸住宅などを借り上げる「みなし仮設」や、県内外の公営住宅を用意することにしています。

このうち仮設住宅は被災地に建設されることもあって希望が相次ぎ、県によりますと、13日の時点で7411件にのぼっていますが、完成したのは58戸で、工事が始まったのは2227戸となっています。

こうした中、災害時の仮設住宅を研究している専修大学の佐藤慶一教授などの研究グループが15日、県内で最初に完成した輪島市の仮設住宅を視察しました。

輪島市では事前に確保していた公有地が不足するなどしているため、今回の仮設住宅は津波の浸水域に建てられていて、建物の基礎を70センチほどかさ上げする対策がとられているということです。

仮設住宅の用地不足について、佐藤教授は「仮設住宅を2階建てにしたり民有地も活用したりすることで、必要な戸数の確保を急ぐ必要がある」と指摘したうえで、「南海トラフ地震や首都直下地震でも同じ課題が想定され、全国の自治体も用地の確保など準備を進めておくことが大切だ」と話していました。

過去の災害の教訓踏まえた工夫も

仮設住宅をめぐっては、用地の確保や工事の迅速化が課題となる一方、過去の災害の教訓を踏まえた工夫もみられます。

今回、被災地で最も早く提供されたのは移動式の仮設住宅で、トイレや風呂のほか暖房器具も備わっています。

これらは、2018年に北海道で震度7の揺れを観測した地震や、西日本豪雨などの被災地で使用されたあと、高知県や北海道などで保管されていましたが、今回、大型トレーラーで運ばれてきました。

入居した76歳の女性は「雑魚寝していた避難生活に比べると、とても快適に過ごすことができています」と話していました。

建設した日本ムービングハウス協会の上野靖晃さんは「全国に備蓄している仮設住宅を被災地に向けて集結させているため、スピーディーに完成させることができる。今後も一日でも早く提供できるよう、最善の努力を尽くしたい」と話しています。

また、県によりますと、このほかに被災地で工事が進められているのは従来型のプレハブの仮設住宅で、多くの物件を比較的短い時間で供給できる一方、入居できる期間が過ぎたあとは撤去したうえ、土地も元に戻す必要があります。

このため、県は耐久性の高い2つのタイプの仮設住宅を用意することにしています。

1つは木造の長屋で、熊本地震で多く採用されたことから「熊本モデル」と呼ばれています。

もう1つは「石川モデル」と呼ばれる木造の戸建てで、いずれのタイプも災害公営住宅に転用でき、同じ場所に長く住み続けられるメリットがあるということです。

石川県建築住宅課は「『熊本モデル』や『石川モデル』はプレハブと比べて建設に時間がかかるが、能登の景観になじみ、入居期間終了後も公営住宅への転用が可能になる。地元の意向を聞きながら地域の実情に応じた仮設住宅を整備していきたい」と話しています。