「新耐震」木造住宅 東京12区で新年度から改修など費用助成へ

首都直下地震に備えるため、東京23区のうち12の区が平成12年までに新しい耐震基準で建てられた木造住宅について、新年度から耐震診断や改修にかかる費用を助成することが分かりました。

住宅の耐震基準は昭和56年に大きく見直されましたが、阪神・淡路大震災で新しい耐震基準で建てられたいわゆる「新耐震」の木造住宅でも被害が出たため、国は平成12年に再び基準を見直しました。

NHKが東京23区に取材したところ、12の区が平成12年までに建てられた「新耐震」の木造住宅について、新年度から耐震診断や改修にかかる費用を助成することが分かりました。

新たに実施する方針を示しているのは、文京、台東、墨田、目黒、大田、世田谷、渋谷、豊島、北、荒川、板橋、練馬の12の区です。

すでに港、新宿、品川、杉並、足立、葛飾、江戸川の7区は実施しているため、東京23区のうち19の区で「新耐震」の住宅への助成が行われることになります。

このうち荒川区は、これまで昭和56年以前の住宅を対象に耐震化にかかる費用を助成してきましたが、首都直下地震の備えをさらに進めるため、平成12年までに建てられた「新耐震」の住宅も新年度から対象に含めることを決めました。

耐震診断の費用は最大30万円、耐震改修の費用は最大180万円を助成する方針です。

荒川区住まい街づくり課の村山洋典課長は「自分の家が本当に安全かどうか、点検するためにも助成制度を使っててほしい」と話しています。

“耐震性不足”指摘で補強工事行う人も

平成12年までに建てられた「新耐震」の木造住宅の中には、耐震性が不足していると指摘され、補強工事を行う人も出てきています。

神奈川県鎌倉市の三浦剛憲さんは去年8月、昭和63年に新耐震基準で建てられた2階建ての木造住宅を購入しました。

しかし、耐震診断を受けた結果、揺れに耐える壁の配置や柱と土台との固定が十分でなく、震度6強の揺れで「倒壊する可能性が高い」と指摘されました。

三浦さんは、筋交いを入れて壁を補強したり、柱と土台の接合部を専用の金具で固定したりする補強工事を行いました。

家を購入した費用に加え、補強工事でおよそ300万円がかかりましたが、鎌倉市には「新耐震」住宅の補強費用を助成する制度はありません。

三浦さんは「新しい耐震基準で建てられたのに耐震性が低いと言われ驚いた。安心して住むには費用がかかるのは致し方ないですが、市の助成制度があればと思います」と話しています。

「新耐震」の木造住宅 80%以上で耐震性不足

耐震補強工事を行う工務店などで作る民間の団体が、平成12年までに建てられた「新耐震」の木造住宅について全国で耐震診断を行ったところ、全体の80%以上で耐震性が不足していました。

平成7年の阪神・淡路大震災では、耐震基準が大きく見直された昭和56年以降に建てられた木造住宅でも、壁の配置が偏っていたり、柱などの固定方法が不十分だったりするなどして、被害が出ました。

このため、国は平成12年に耐震基準を再び見直し、壁の配置や柱の固定方法などについて具体的な基準を定めています。

平成12年までに建てられた「新耐震」の住宅について、「日本木造住宅耐震補強事業者協同組合」が去年12月までの18年間に全国で耐震診断を行った結果、1万4000棟余りのうち、およそ86%で耐震性が不足していました。

組合は、耐震不足が指摘された場合は筋交いを入れて壁を補強したり、柱と土台の接合部を専用の金具で固定したりしたりする補強工事を行うよう呼びかけています。

しかし、診断で耐震性の不足が指摘されても、補強工事までつながるケースは30%程度にとどまっているということです。

組合の關励介事務局長は「費用がかかることが耐震補強が進まないいちばん大きな理由なので、行政の助成制度があれば診断や補強を考える人は間違いなく増えていくと思う」と話しています。

東京23区での助成額は?

東京23区で広がる「新耐震」住宅への耐震化費用の助成。それぞれの区でいくら助成されるんでしょうか。
助成の対象は、いずれも平成12年までに新しい耐震基準で建てられた木造住宅です。

東京23区のうち、新年度から助成を始める方針を示しているのは、文京、台東、墨田、目黒、大田、世田谷、渋谷、豊島、北、荒川、板橋、練馬の12の区です。

【文京区】
▽耐震診断の費用が最大10万円、耐震改修の費用は最大120万円。
【台東区】
▽耐震診断が最大20万円、耐震改修は最大100万円。
【墨田区】
▽耐震診断が最大15万円、耐震改修は最大190万円。
【目黒区】
▽耐震診断はかかった費用の60%、耐震改修は最大150万円。
【大田区】
▽耐震診断の費用の一部を助成する方針 金額は未定。
【世田谷区】
▽耐震診断は区が無償で実施、耐震改修は最大100万円。
【渋谷区】
▽耐震診断は区が無償で実施、耐震改修は最大100万円。
【豊島区】
▽耐震診断が最大15万円、耐震改修は最大150万円。
【北区】
▽耐震診断は区が無償で実施、耐震改修は最大100万円。
【荒川区】
▽耐震診断は最大30万円、耐震改修は最大180万円。
【板橋区】
▽耐震診断は最大10万円、耐震改修は最大75万円。
【練馬区】
▽耐震診断が最大12万円、耐震改修は最大130万円。

また、港、新宿、品川、杉並、足立、葛飾、江戸川の7区は、すでに実施していて新年度も助成を継続します。

【港区】
▽耐震診断は区が無償で実施、耐震改修は最大100万円。
【新宿区】
▽耐震診断は区が無償で実施、耐震改修は最大300万円。
【品川区】
▽耐震診断は最大15万円、耐震改修は最大150万円。
【杉並区】
▽耐震診断は最大11万円、耐震改修は最大100万円。
【足立区】
▽耐震診断は最大30万円、耐震改修は最大150万円。
【葛飾区】
▽耐震診断は最大20万円、耐震改修は最大180万円。
【江戸川区】
▽耐震診断が最大30万円、耐震改修は最大150万円。


一方、千代田、中央、江東、中野の4区は実施しないということです。

区によっては、建て替えや解体の費用なども助成対象としていて、詳しくは各区のホームページなどで確認してほしいとしています。