「少しずつ日常が」のと鉄道 1か月半ぶり一部で運転再開 石川

「ちょっとずつ日常が戻ってきた」

能登半島の北部につながる「のと鉄道」が、地震の発生から1か月半ぶりに一部で運転を再開しました。

約半分の区間で運転再開

能登半島の北部につながる「のと鉄道」は、地震の影響で線路がゆがむなどして全線で運転を取りやめていましたが、今月15日から全線のおよそ半分の区間にあたる「七尾駅」と「能登中島駅」の間で運転を再開しました。

15日朝は、能登中島駅を出発した始発の列車には高校生などおよそ20人が乗車し、鉄道会社や地元の人たちが見送りました。

のと鉄道を利用した高校3年の女子生徒は「鉄道が動かない間は親に車で送ってもらい申し訳ない気持ちでした。友達と会話をしながら通学するのも楽しみで再開は本当にうれしいです」と話していました。

また、高校2年の女子生徒は「車窓から見える能登の自然は変わっていなくてよかったですし、ちょっとずつ日常が戻っているように感じます」と話していました。

15日午前6時半頃 能登中島駅

のと鉄道によりますと、当面は、運行の本数を地震の前の半分ほどに減らすとともに、安全確保のために最高速度を45キロに制限するということです。

のと鉄道 中田社長「大きな一歩」

のと鉄道 中田哲也 社長
「久しぶりに鳴った営業列車のエンジン音はとても心強く感じました。復旧はまだ道半ばですがきょうの再開は大きな一歩だと思っています」

のと鉄道では、被害が大きかった穴水駅までの区間についても、土砂に埋まった線路の復旧作業を進め、4月上旬の再開を目指すことにしています。

沿線高校の校長「生徒に喜びの顔」

沿線にある石川県七尾市の高校では生徒の交通手段が増えたことに安心する声が聞かれました。

のと鉄道の沿線にある「七尾高校」は、能登半島地震の影響で2週間ほど休校していましたが、JR七尾線の運転再開を受けて先月下旬から対面の授業を再開しました。

ただ、全校生徒の2割ほどにあたるおよそ120人はのと鉄道を利用していて、中には通学が難しい生徒もいたということです。

七尾高校 樋上哲也 校長
「生徒の通学手段や時間の選択肢が増えるので非常に助かります。きょう列車に乗った生徒の喜びの顔をみて希望の光が出ているなと改めて感じました」

「4月上旬に予定されている全線での運転再開については、新入生をよりよい状態で迎え、通常の高校生活が送れるようにするには、全線での復旧が待たれるので期待しています」

JR七尾線は全線再開 観光地の励みに

15日は、のと鉄道への乗り換えが可能で、関西や金沢市内からの特急列車が乗り入れる「JR七尾線」も七尾駅から和倉温泉駅までの区間が再開して全線で開通しました。

運行が再開した区間にはおよそ1200年の歴史がある石川県内でも有数の温泉「和倉温泉」があり、臨時休業が続く旅館からは励みになるといった声も聞かれます。

七尾市にある「和倉温泉」には20以上の旅館やホテルが建ち並び、石川県によりますと、おととしには県内の温泉地で最も多いのべ53万人あまりが宿泊に訪れています。

しかし、この地域の旅館などは地震による建物への被害や断水の影響などで通常の営業ができない状況が続いています。

創業100年を超え、70あまりの客室がある旅館でも、地震で壁に亀裂が入ったり天井の一部が落下したりしたことなどから臨時休業が続いていて、修復の作業をどのように進めるか見通しは立っていません。
断水が続き、床などの拭き掃除も思うように進められない状況だということです。

旅館では、地震が起きる前には関西などから鉄道を利用して訪れる観光客も多かったということで、運行が再開した和倉温泉駅まで毎日、送迎車を出していました。

以前、訪れた客からは再開を待ち望む電話や手紙も寄せられているということです。

「大観荘」 おかみの大井マ璃幸(おおい まりこ)さん
「何から手をつけていいかもまだまだ分からない状況ですが鉄道の再開はトンネルの先にみえる小さな光のようで励みになります。また温泉に来たいというお客さんの声に応えられるように、本当に一歩ずつですが前に進んでいきたいです」

能登半島地震を受けて国は観光客の宿泊代の一部を補助する「北陸応援割」を実施することにしていますが、石川県の馳知事は、災害対応を優先するため、県内での開始時期を富山県や福井県とはそろえない考えを示しています。

のと鉄道 乗客の約7割が通勤や通学の利用

「のと鉄道」は石川県などが出資する第3セクターの鉄道会社で、「七尾駅」と「穴水駅」の間の海沿いの30キロ余りを結ぶ片道1時間ほどの路線を運営しています。

乗客のおよそ7割は通勤や通学の利用で、地元の人には欠かせない移動手段となっています。
また、沿線の桜や名物のカキを目当てにした観光客の利用もあり、昨年度はのべ48万人余りが乗車したということです。

会社によりますと、能登半島地震の影響で列車に被害はなかったものの、沿線の山肌が崩れて線路が土砂で埋まったほか、レールが大きくゆがむなどして全線での運休が続いていました。

穴水駅のそばにある本社でも建物がゆがむなど大きな被害があったため駅の事務所を本社代わりとして活用しているほか、ホームに停車している列車を会議室として使って対応しているということです。

およそ50人の社員の中には自宅などが被災しながらも1日も早い運行の再開に向けて列車に泊まり込んで片づけ作業にあたった人もいたということで、現在は8割の社員が業務に復帰したということです。