札幌 中1女子生徒自殺で新たな報告書 女子生徒の訴え明らかに

3年前に札幌市の中学1年の女子生徒が自殺した問題について、市の教育委員会は14日に、調査報告書の黒塗り部分を修正した新たな報告書を公表し、女子生徒が小学校のときから「どれい扱いされる」と訴えていたことなどを明らかにしました。市教委は当時の校長や担任が適切な対応を怠っていたとして減給などの処分にしました。

3年前、札幌市の市立中学校に通っていた当時1年の女子生徒が自殺した問題について、札幌市教育委員会は去年12月に、いじめが原因で亡くなったとする調査報告書を公表しました。

しかし、具体的ないじめの内容などが黒塗りにされ、遺族などから実態を正確に把握することができないという声が上がったため、市の教育委員会は見直しを進め、14日に修正した新たな調査報告書を公表しました。

それによりますと、女子生徒が小学5年から中学1年のときに受けた、合わせて8つの具体的な行為がいじめにあたると指摘しています。

このうち、小学校のときのアンケート調査では、友達関係で悩んでいて「どれい扱いされる」と訴えていたことが新たにわかりました。

また中学校では、同じ学年の生徒から私物のスマートフォンや鍵を隠されたり、髪の毛を引っ張られたりしたことや、SNSで「死ね」などといったメッセージが送りつけられることもあったとしています。

そして、女子生徒が複数の生徒を名指ししたメッセージを遺書の中に残していたことも明らかになりました。

市教委は教職員が適切な対応を怠っていたとして、女子生徒が小学6年だった当時の校長を減給1か月の懲戒処分にするなど、小学校や中学校の当時の校長や担任など、8人を処分などにしました。

札幌市教育委員会の檜田英樹教育長は「当初からご遺族の思いに寄り添った対応ができず、大変申し訳なく思う。事態を繰り返さないために再発防止を全力で進めていく」と話していました。

女子生徒の両親 “報告書は開示し再発防止に役立てて”

修正した新たな調査報告書の公表を受けて、亡くなった女子生徒の両親はコメントを発表しました。

この中で「今回の公表内容には私たちの意見も一部取り入れてもらえたが、学校の基本方針や組織体制などは意向に反して一部マスキングされている。報告書はできるだけ開示し、再発防止に役立ててほしい」としています。

そのうえで「娘が受けたいじめは本当にひどい内容だった。SOSのサインも学校に無視され続け、どんどん追い詰められていった。遺書に書かれたことばは、ふだんの明るい娘からは想像もつかないような内容で、どれほど苦しみ、追い詰められていたことか。私たちには娘の絶望の叫びのように思えた。このようなことは二度と起きないようにするべきだ」としています。

専門家「学校側の大きな課題」

子どもの心理が専門で、いじめ問題に詳しい北海道教育大学札幌校の平野直己教授は「女子生徒は学校や教員にメッセージが届かないことで痛みや悲しみを深め無気力になり主体性を奪われていった。その結果、みずから命を絶つという最悪の事態が起こってしまった。小学校から中学校に入って女子生徒の様子が大きく変わった印象を受けるが、その背景に気づけなかったのは学校側の大きな課題だ」と述べました。

また、調査報告書が修正されたことについて「報告書は亡くなった子どもの思いを社会に伝え、二度と繰り返してほしくないという遺族の思いに対する回答だ。今回、市の教育委員会と遺族との間でどういうすり合わせがあって最初の報告書に至ったのか。修正された報告書は黒塗りがかなり減っているので教育委員会側のコミュニケーションが欠けていたと言わざるを得ない」と指摘しました。

その上で「報告書は再発防止に向けた役割もある。同じ問題を繰り返さないためにみんなで学ぶ機会が大事で、今後はいじめに対する学校の対応がどう変わったのか検証し続ける必要がある」と述べました。