柿沢前副大臣 初公判で起訴内容認める 江東区長選めぐる事件

去年4月に行われた東京の江東区長選挙をめぐり、公職選挙法違反の買収などの罪に問われている柿沢未途・前法務副大臣の初公判が開かれ、柿沢元議員は「多くの人が巻き込まれ、大変申し訳ない」などと述べ、起訴された内容を認めました。

前法務副大臣で今月1日に議員辞職した柿沢未途被告(53)は、去年4月の江東区長選挙をめぐり、秘書に指示するなどして区議会議員など10人に選挙運動の報酬としてあわせておよそ280万円を提供したり提供を申し込んだりしたほか、インターネットに木村弥生・前区長への投票を呼びかける有料広告を掲載させたとして、公職選挙法違反の買収などの罪に問われています。

東京地方裁判所で開かれた初公判で、元議員はネクタイをせず、スーツ姿で入廷しました。

裁判長から起訴された内容について聞かれると「わたしの行動に端を発して多くの人が巻き込まれ、多大な苦しみをもたらした。大変申し訳なく思う。責任は重く、争わないことにした。すべて争いません」と述べ、認めました。

検察は冒頭陳述で、柿沢元議員が衆議院選挙で自民党の公認候補になるために木村前区長の選挙戦を主導したとして「投票の取りまとめなどの支援をしてほしい趣旨を含め、自民党の区議候補への現金の提供を発案し、20万円ずつを渡すよう秘書らに指示した」などと述べました。

インターネットへの有料広告についても元議員が木村前区長に勧め、区の選挙管理委員会から指摘を受けた際にも前区長から相談を受けていたと説明しました。

今回の裁判は、起訴から百日以内の判決を目指して迅速に審理を進める「百日裁判」が適用されました。

「百日裁判」は連座制の適用が想定される選挙違反事件の審理を迅速に進めることを目的に公職選挙法で定められていて、検察は、柿沢元議員が木村前区長の陣営で連座制の対象になる「組織的選挙運動管理者」の立場だったと主張しています。今後は今月20日に元議員の被告人質問、来月1日に検察の求刑などが行われ、来月14日に判決が言い渡されることになっています。

検察 木村前区長の供述調書を読み上げ

木村前区長は取り調べに対し「柿沢元議員の支援者がビラを配ったり、資材の手配などを元議員らが行ったりしていて『柿沢プロデュース』の選挙になっていた。地盤を強固にして選挙区の支部長に就任したい元議員にとっても負けられない闘いだった」などと述べていました。

柿沢元議員の供述調書も読み上げられ、この中で元議員は「自民党の区議候補らが現金を受け取ることで対立候補の応援を弱め、木村前区長の選挙を妨害させない意味があった。現金の趣旨は説明しなかったが、政治の世界に身を置くものであれば察することができたと思う」と述べていました。

==検察側の冒頭陳述詳細==

検察は、長年非自民系の支援を受けてきた柿沢元議員が衆議院選挙の自民党公認候補という地位を獲得するため、保守分裂の江東区長選挙で木村前区長の選挙戦を主導し、事件に至ったと主張しました。
《選挙をめぐる情勢・木村氏擁立のいきさつは》
検察はまず、元議員の地盤である江東区の選挙情勢について説明しました。検察は、「柿沢元議員は自分の父や、木村前区長の父の地盤である東京15区で非自民党系の区議らの支援を受けて当選を重ね、長年、自民党候補の対立候補として選挙戦を戦っていた。一方、江東区では自民党所属の山崎孝明氏が4期にわたって区長を務め、その長男は江東区選出の都議を務めるなどしていて、柿沢元議員は長年にわたって山崎親子と対立していた」と説明しました。

検察はこうした政治情勢を背景に柿沢元議員が木村前区長を擁立したと説明し「3年前の衆議院選挙で当選し、自民党に追加公認された元議員は、次の選挙で自民党の公認候補となる選挙区支部長への就任を目指すようになった。元議員は山崎元区長と関係を改善して協力を得ようとしたが、逆に非自民党系の区議らとの関係の清算を求められた。山崎親子が多大な影響力を持つ現状のままでは、自分が支部長になるのが難しくなると考え、対立候補の擁立を考え始めた。そして、木村前区長に『勝てる可能性がある。できる限り協力しますので』などと言って、立候補を依頼した」と述べました。

その後の選挙活動については「元議員が秘書に指示して木村前区長を代表者とする政治団体を設立させたほか、みずからポスターやチラシ、のぼりの作成を依頼するなどの準備を進めた。立候補の表明会見のプレスリリースや発言案も作成するなど、自民党に所属しながら選挙支援を行っていた」と主張しました。
《区議らの買収のいきさつ》
柿沢元議員が区議候補らに現金を配布するようになったいきさつとして「元議員は、木村前区長を当選させるために自民党区議候補に対して投票の取りまとめなどの支援をしてほしいという趣旨を含めた現金の提供を発案し、現金20万円ずつ渡すよう秘書らに指示した」と主張しました。

また「元議員はその後、秘書から区議候補の現金の受け取り状況や、その際の発言などについて資料に基づいて報告を受けていた」と説明しました。
《有料広告“費用かけずに知名度が上がるなら良い”》
木村前区長への投票を呼びかけるインターネットの有料広告については「元議員は木村前区長に当選するための戦略としてYouTubeに動画を載せることを勧めた。木村前区長は、高額の費用をかけずに知名度が上がるのであれば良いと考え、掲載を決めた」と述べました。

その後、区の選挙管理委員会職員から法律違反の可能性があると指摘されたり、報道機関から動画広告についての質問状を受け取ったりしたときの状況について「木村前区長は対応について元議員に相談し、元議員は『十分な認識をもたないまま言われたとおりに収録した』などとする回答案を提案した」と述べました。

官房長官「コメントは差し控えたい」

林官房長官は午前の記者会見で、「現在、公判が継続中であり、コメントは差し控えたい。今後、公判において当事者から必要な説明がなされるものと認識している」と述べました。