「世界最大の直接選挙」インドネシア大統領選 きょう投票

「世界最大の直接選挙」とも言われるインドネシアの大統領選挙の投票が14日行われます。高い支持率を誇る現職のジョコ大統領の政策を継続するかどうかが争点となっていて、2億人を超える有権者の判断が注目されます。

5年に1度行われるインドネシアの大統領選挙には
▽プラボウォ国防相
▽アニス前ジャカルタ州知事
▽ガンジャル前中部ジャワ州知事
の3人が立候補しています。

現職のジョコ大統領は憲法で3選が禁じられているため、選挙戦では高い支持率を誇るジョコ政権の政策の継続か改革かが主な争点となっています。

3人のうち、プラボウォ氏はジョコ大統領の後継者を自任し、政策を引き継ぐとしているほか、ガンジャル氏も首都の移転計画など主要政策は継続すると訴えています。

一方、アニス氏は首都移転計画の一部見直しや、経済格差の是正を公約に掲げ、現政権に対する批判票の取り込みをはかっています。

今月5日までに行われた最新の世論調査によりますと、プラボウォ氏の支持率が50%余りと、ほかの2人を大きく引き離しています。

ただ、どの候補者も過半数の得票に満たない場合は、ことし6月に上位2人による決選投票が行われる予定です。

投票は早いところで日本時間の午前7時から、首都ジャカルタなどでも午前9時から始まり、即日開票されることになっています。

専門家「開発政策の枠組みは変わらないだろう」

東南アジアで最大の人口と経済規模を持つインドネシアには1800社余りの日系企業が進出していて、次の大統領によってどのような経済や外交の政策がとられるのかが注目されています。

インドネシア経済に詳しいJETROアジア経済研究所の佐藤百合名誉研究員は「ジョコ政権の10年で見えてきたインフラ開発、産業開発、気候変動対策の3つの開発政策の枠組みは大きく変わらないだろう」と述べ、どの候補が当選しても経済政策の大枠は踏襲されるという見通しを示しました。

また、外交政策については「いかなる大国ともバランスを取ることで交渉力や競争力を見いだそうとする戦略は一貫して変わらない」として、引き続き、グローバル・サウスの一角としての存在感を強めていくだろうという見方を示しました。

中国との関係については「今後、少なくとも10年は経済的に中国の存在感が強い状態は続き、インドネシアは連携を強めていくだろう」と述べる一方、安全保障面ではインドネシアが南シナ海に設定した排他的経済水域をめぐる対立があるため、警戒感を持って対応するだろうと指摘しました。

そして、日本との関係については、インドネシアが2045年までに先進国入りを目指していることから、「日本は伴走者として連携していくのが今後の姿だと思う」と述べ、気候変動対策や産業人材の高度化といった日本の強みのある分野で長期的な視点で協力を進めていくべきだとしています。

プラボウォ氏とは

プラボウォ・スビアント氏は72歳。

陸軍の幹部としてキャリアを重ねたあと、スハルト元大統領の次女と結婚し、軍の最高幹部として独裁的なスハルト政権を支えました。

政権末期には民主活動家の拉致事件に関与したとして軍籍を剥奪されましたが、軍人時代に培った人脈を生かし、巨大なグループ企業を率い、経営者としても成功を収めました。

2008年にはみずから政党を結成。

2014年と2019年の過去2回の大統領選挙に立候補しましたが、いずれも接戦の末、ジョコ大統領に敗れました。

前回の選挙後は政権基盤の強化を目指すジョコ大統領から国防相として迎え入れられて関係を強め、2期目の政権を支えてきました。

3回目の立候補となる今回はジョコ大統領の後継者を自任し、新首都への移転やインフラの整備など、ジョコ政権が打ち出した政策の継続を訴えています。

また、ジョコ大統領の長男で、36歳という若さで地方の市長を務めるギブラン氏を副大統領候補にすえるとともに、親しみやすさをアピールするなど、有権者の半数以上を占める40歳以下の若い世代を意識した選挙戦を展開しています。

アニス氏とは

アニス・バスウェダン候補は54歳。

インドネシアでは史上最年少となる38歳で私立大学の学長に就任し、アメリカの外交専門誌「フォーリン・ポリシー」の世界の知識人100人にも選ばれました。

ジョコ政権のもとで教育文化相を務めたのち、2017年から5年間ジャカルタ州知事としてインフラ開発や都市交通の整備などを主導しました。

今回の選挙では新首都への移転計画の一部見直しや経済格差の是正など、ジョコ大統領の政策の改革を訴え、現政権に対する批判票を取り込んでいます。

ガンジャル氏とは

ガンジャル・プラノウォ候補は55歳。

インドネシアで3番目に人口が多い中部ジャワ州の出身で、2013年から2期10年にわたって州知事を務めました。

今回の大統領選挙ではニッケルなど豊富な鉱物資源を活用した産業の高付加価値化や新首都への移転計画など、ジョコ政権の主要政策を継続し、さらに発展させると訴えています。

ガンジャル氏はジョコ大統領も所属する最大与党「闘争民主党」の公認候補として擁立されましたが、ジョコ大統領が長男のギブラン氏を副大統領候補にすえるプラボウォ陣営に接近していることから、支持者を奪われている形です。