【詳細】イスラエル軍 人質救出の映像公開(2月13日の動き)

イスラエル軍はガザ地区南部のラファで人質2人を救出する際の映像を公開しました。
イスラエル政府としてはラファへの地上作戦を行う構えを示す中、イスラム組織ハマスへの軍事的圧力を強めることが人質の解放につながるとアピールするねらいもあるとみられています。

※イスラエルやパレスチナに関する日本時間2月13日の動きを、随時更新してお伝えします。

イスラエル軍 人質救出の映像公開

イスラエル軍は12日、ガザ地区で最も南にあり、100万人以上が避難しているラファの中心部で、軍や警察の特殊部隊などがハマス側の人質となっていたイスラエル人の男性2人を救出したと発表し、救出した際の映像を公開しました。

映像では、イスラエル軍や警察の特殊部隊とみられる部隊が建物に突入していく様子や、救出作戦を遂行するためだとして別の建物に空爆を行う様子もうつされています。

ネタニヤフ首相は12日、救出にあたった警察の特殊部隊を訪問し、「2人の人質の解放はイスラエル史上最も成功した救出作戦の1つである」と成果を強調しました。

イスラエル政府としては、ハマスへの軍事的圧力を強めることが人質の解放につながると強くアピールするねらいもあるとみられます。

作戦後、ガラント国防相は、警察の特殊部隊の隊員を訪問し、作戦への協力に感謝の意を示しました。

そのうえで、「ハマスはぜい弱だ。われわれはどこであってもハマスを追い詰めることができる」と隊員を前に訴え、ラファへの攻撃を強め、人質の解放とともにハマスの壊滅を目指していく考えを改めて強調しました。

イスラエル 軍事的圧力続ける考え強調 さらに犠牲拡大のおそれ

しかし、ラファでの救出作戦をめぐっては、イスラエル軍による激しい空爆や砲撃が行われ、ガザ地区の保健当局は、一連の攻撃で73人が死亡したとしています。

さらにイスラエル軍は、ガザ地区中部や南部の、ほかの地域でも攻撃を繰り返しています。

現地のメディアは、南部ハンユニスの病院で燃料がなくなり、12日、治療中の少女が亡くなるなどの事態も起きていると伝えていて、ガザ地区の保健当局は、これまでにあわせて2万8473人が死亡したとしています。

イスラエル政府はラファを含めたガザ地区への軍事的圧力を続ける考えを強調していて、市民などの犠牲がさらに拡大するおそれが出ています。

ノルウェー外相「UNRWA 組織全体の支援停止は間違っている」

ノルウェーのアイデ外相は12日、NHKの単独インタビューに応じました。

この中でアイデ外相は、UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関の職員がハマスによるイスラエルの攻撃に関与した疑いを受けてアメリカや日本などが資金拠出の一時的な停止を表明していることについて、疑いは深刻で調査が必要だとした一方で、「たとえ事実だとしても組織全体の支援を停止することは間違っている」と述べました。

そのうえで、「UNRWAという組織が任務を果たせなくなれば、パレスチナ難民やガザ地区でひどい状況に置かれた人々を罰することになり、状況がさらに悪化する。パレスチナの人々への集団懲罰だ」として、支援の継続を訴えました。

また、ノルウェーの研究機関などが協力してUNRWAの活動を評価する国際的な検証グループが設けられたことについて、「調査を徹底する必要はあるが、行き詰まりの打開に向け早急に行うことも必要だ」としてことし4月としている報告書のまとめを急ぐ必要性を指摘しました。

ノルウェーは1993年にイスラエルとパレスチナを仲介して和平に向けた「オスロ合意」を実現し、2022年のUNRWAへの資金拠出では5番目となっていて、各国が拠出を停止する中でもいち早く支援の継続を表明していました。

UNRWA事務局長 EUの支援継続を訴え

UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関の一部の職員がハマスによるイスラエルへの攻撃に関与した疑いを受けて、EU=ヨーロッパ連合の加盟国のなかでは、ドイツやオランダ、スウェーデンなど一部の国が資金の拠出を一時的に停止すると表明しているほか、EUとしても3月以降の拠出についての決定は、国連が行う調査結果に照らして見直すとしています。

こうした中、UNRWAのラザリーニ事務局長は12日、ベルギーで行われたEU加盟国の開発協力担当の閣僚などによる会議に参加し、支援の継続を訴えました。

会議のあとの記者会見でラザリーニ事務局長は、イスラエルがガザ地区南部のラファでの地上作戦を行う構えを見せていることについて、「パニックと不安が広がっている」と述べました。

そしてUNRWAが活動できなくなった場合、教育の機会を奪われた多くの子どもたちが憎しみを募らせ、地域の平和や安定がいっそう難しくなるとして活動を支えるようEUや各国に訴えました。

米大統領「ガザ地区での戦闘 少なくとも6週間の休止目指す」

アメリカのバイデン大統領は12日、ホワイトハウスで、ヨルダンのアブドラ国王と会談し、ガザ地区の情勢について協議しました。

このあとバイデン大統領は記者団に対しガザ地区での戦闘休止と人質解放をめぐる交渉について「アメリカはガザ地区に少なくとも6週間の平穏な期間をもたらす人質交渉に取り組んでいる」と述べて少なくとも6週間の休止を目指していると明らかにしました。

そして「まだ溝は残っているが、合意に向けてイスラエルの指導者たちに努力を続けるよう働きかけている。アメリカは実現に向けてあらゆる手を尽くす」と述べました。

一方、イスラエル軍がガザ地区で最も南にあり100万人以上が避難しているラファでの地上作戦を行う構えを示していることについて「ラファでの大規模な作戦はそこに避難する人々の安全と支援を確保するための確かな計画なしには進めるべきではない」と述べて住民の保護が必要だという考えを改めて示しました。

またアブドラ国王は記者団に対し「イスラエルによるラファへの攻撃は許されない。新たな人道的な大惨事をもたらすことは確実だ。今こそ永続的な停戦が必要だ。この戦争を終わらせなければならない」と強調しました。

林官房長官「ラファでの軍事行動に深く懸念」

林官房長官は、閣議のあとの記者会見で「ラファでのイスラエルの軍事行動に関する報道を深く懸念している。ラファには100万人を超えるガザのパレスチナ人が避難し、人々に人道物資を届ける上でも特に重要な場所だ。改めて一般市民の保護の重要性を強調するとともに、すべての当事者に、国際法を順守し、関連する国連安保理決議に基づき誠実に行動するよう求めたい」と述べました。

イラン報道官「新たな戦争犯罪を引き起こしかねない」

イスラエルがラファでの地上作戦を行う構えを示していることについて、ハマスを支援するイランは外務省のキャンアニ報道官が12日、声明を出し「人道的な大惨事と、パレスチナの無防備な人々に対する新たな戦争犯罪を引き起こしかねない」と非難しました。

さらに「このような行動は停戦をめぐる交渉に逆行するだけでなく、国際的な規範を繰り返し破るイスラエルの悪意を示す実例だ」としたうえで、国際司法裁判所が1月にイスラエルに対し、住民の大量虐殺などを防ぐためあらゆる手段を尽くすよう命じた暫定的な措置にも違反すると主張しました。

また、声明ではイスラエルへの軍事支援を続けるアメリカなどに対し「地域の安定を本気で心配しているなら、人々を殺害するイスラエルの異常な行いを直ちにとめるときだ」と呼びかけています。

米報道官「大規模な軍事作戦の始まりとは分析していない」

アメリカ国務省のミラー報道官は12日の記者会見で、イスラエル軍がラファへの空爆を行ったことについて「大規模な軍事作戦の始まりだとは分析していない」と述べ、地上作戦が差し迫っているわけではないとの見方を示しました。

その根拠として、ネタニヤフ首相が9日、軍に対して策定を指示した住民の避難計画が示されていないためだとしています。

そのうえでミラー報道官は「われわれが期待する計画は、ラファにいる100万を超えるとみられる人たちに対処でき、民間人の保護を最優先に考えたものだ」と述べ、イスラエルに対し、民間人の保護に努めるよう重ねて求めました。

イスラエル軍 ラファで地上作戦か 避難住民 再び避難の動きも

イスラエル軍がラファでの地上作戦を行う構えを示す中、ラファに避難している人の間では12日の攻撃を受けて恐怖が高まっていて、別の場所に再び避難する動きも出ています。

NHKが12日午前、ラファ市内で撮影した映像ではテントや家財道具を車やロバにひかせる荷車に積み、次々と市内を出てガザ地区中部などに避難していく人たちの姿が見られました。

車で中部に向かうという男性は「イスラエル軍は民間人と戦闘員の区別をしていません。ここ1週間ほどラファを攻撃すると言っています。いつまで避難をすればよいのでしょうか」と訴えていました。

ラファへの地上作戦をめぐってはイスラエルの同盟国アメリカや、人質解放のための交渉で仲介役を務めるエジプトなどが、懸念を示していて、イスラエル軍が作戦に踏み切れば、住民の犠牲が今後、さらに増えることが懸念されています。