イスラエル軍 ラファで地上作戦か 避難住民 再び避難の動きも

イスラエル軍が12日、ガザ地区南部のラファで人質2人を救出した一方、ガザ地区の保健当局はイスラエル軍の攻撃で少なくとも67人が死亡したとしています。イスラエル軍がラファでの地上作戦を行う構えを示す中、ラファに避難している人の間では恐怖が高まっていて、別の場所に再び避難する動きも出ています。

イスラム組織ハマスに対する軍事作戦を続けるイスラエル軍は12日、ガザ地区で最も南にあり100万人以上が避難しているラファの中心部で夜間に空爆を伴う作戦を行い、特殊部隊がハマス側の人質となっていたイスラエル人男性2人を救出したと発表しました。

一方、中東の衛星テレビ局アルジャジーラなどは、イスラエル軍が人質の救出を行った12日未明にラファではイスラエル軍による激しい空爆や砲撃があったと伝えていて、ガザ地区の保健当局は、一連の攻撃でこれまでに67人が死亡したとしています。

イスラエル軍がラファでの地上作戦を行う構えを示す中、ラファに避難している人の間では12日の攻撃を受けて恐怖が高まっていて、別の場所に再び避難する動きも出ています。

NHKが12日午前、ラファ市内で撮影した映像ではテントや家財道具を車やロバにひかせる荷車に積み、次々と市内を出てガザ地区中部などに避難していく人たちの姿が見られました。

車で中部に向かうという男性は「イスラエル軍は民間人と戦闘員の区別をしていません。ここ1週間ほどラファを攻撃すると言っています。いつまで避難をすればよいのでしょうか」と訴えていました。

ラファへの地上作戦をめぐってはイスラエルの同盟国アメリカや、人質解放のための交渉で仲介役を務めるエジプトなどが懸念を示していて、イスラエル軍が作戦に踏み切れば、住民の犠牲が今後さらに増えることが懸念されています。

イスラエル軍 救出作戦の映像公開

イスラエル軍は12日、人質の男性2人を救出した際の上空からの映像を公開しました。

映像では、イスラエル軍や警察の特殊部隊とみられる部隊が建物に突入していく様子が映っています。

さらにイスラエル軍は、救出作戦を遂行するためだとして、別の建物に空爆を行う映像も公開しました。

イスラエル政府としては、空爆を伴う人質の救出作戦の映像を公開することで、ラファへ攻撃を行い、ハマスへの軍事的圧力を強めることが人質の解放につながると強くアピールする狙いもあるとみられます。

米報道官「大規模な軍事作戦の始まりとは分析していない」

アメリカ国務省のミラー報道官は12日の記者会見で、イスラエル軍がラファへの空爆を行ったことについて「大規模な軍事作戦の始まりだとは分析していない」と述べ、地上作戦が差し迫っているわけではないとの見方を示しました。

その根拠として、ネタニヤフ首相が9日、軍に対して策定を指示した住民の避難計画が示されていないためだとしています。

その上でミラー報道官は「われわれが期待する計画は、ラファにいる100万を超えるとみられる人たちに対処でき、民間人の保護を最優先に考えたものだ」と述べ、イスラエルに対し、民間人の保護に努めるよう重ねて求めました。

イラン報道官「イスラエルの悪意を示す実例だ」

イスラエルがラファでの地上作戦を行う構えを示していることについて、ハマスを支援するイランは外務省のキャンアニ報道官が12日、声明を出し「人道的な大惨事と、パレスチナの無防備な人々に対する新たな戦争犯罪を引き起こしかねない」と非難しました。

さらに「このような行動は停戦をめぐる交渉に逆行するだけでなく、国際的な規範を繰り返し破るイスラエルの悪意を示す実例だ」とした上で、国際司法裁判所が1月にイスラエルに対し、住民の大量虐殺などを防ぐためあらゆる手段を尽くすよう命じた暫定的な措置にも違反すると主張しました。

また、声明ではイスラエルへの軍事支援を続けるアメリカなどに対し「地域の安定を本気で心配しているなら、人々を殺害するイスラエルの異常な行いを直ちにとめるときだ」と呼びかけています。