【詳細】ラファ 未明に激しい空爆 イスラエル軍が人質救出

アメリカのバイデン大統領はガザ地区での戦闘休止と人質解放をめぐる交渉について、少なくとも6週間の休止を目指し、イスラエルに働きかけていると明らかにしました。

※イスラエルやパレスチナに関する日本時間2月12日の動きを、随時更新してお伝えします。

イスラエル軍 ラファで人質2人を救出と発表

イスラエル軍は12日、ガザ地区南部のラファでイスラム組織ハマスに人質にとられていた男性2人を救出したと発表しました。

ガザ地区への軍事作戦を続けるイスラエル軍は、地区で最も南にあるラファの中心部で夜間に空爆を伴う作戦を行い、特殊部隊がハマス側の人質となっていたイスラエル人男性2人を救出したと、12日、発表しました。

これについてイスラエルのネタニヤフ首相は「完全な勝利まで軍事的な圧力をかけ続けることだけが、すべての人質の解放の実現につながる」とする声明を出しました。

“イスラエル軍による激しい空爆や砲撃” 報道

中東の衛星テレビ局アルジャジーラなどは、12日未明にラファでイスラエル軍による激しい空爆や砲撃があったと伝えていて、ガザ地区の保健当局は、一連の攻撃でこれまでに67人が死亡したとしています。

ラファ市内に住む男性はNHKの取材に対し「午前1時ごろに突然、空爆が行われ、激しい銃声も聞こえた。ラファ市内でこれほどの空爆があったのは去年10月に戦闘が始まって以降初めてだ」と話していました。

ネタニヤフ首相 ラファへの攻撃を改めて正当化

イスラエル軍は、ハマスの重要拠点があるとして、ガザ地区の南端にあるラファへの集中的な攻撃の必要性を訴えていて、ネタニヤフ首相も軍に計画の策定を命じています。

こうした中、ネタニヤフ首相は、アメリカのABCテレビのインタビューに応じ、11日、その内容がウェブサイトに掲載されました。

この中でネタニヤフ首相は「ハマスの最後のとりでのラファへの攻撃を行う。そうすべきではないという主張は、イスラエルに戦争に負けろと言っているのに等しい」と述べ、ラファへの攻撃を改めて正当化しました。

そのうえで「民間人が退避できるよう安全な避難路を提供する」として、市民の犠牲を減らすための措置をとると主張しました。

ハマス幹部「人質交渉避けるため虐殺と人道危機広げようと」

一方、地元メディアは、ハマス幹部の話として「ネタニヤフは人質交渉を避けるため、ラファで虐殺と人道危機を広げようとしている。ラファへの攻撃は人質交渉の崩壊を意味する」と伝えていて、ラファへの攻撃が強まれば一切の交渉の余地はなくなるとけん制しています。

またハマスは11日、SNSに「過去96時間のイスラエル軍の攻撃により、人質2人が死亡し8人が重傷を負った」と投稿し、人質にも犠牲が出ているとしています。

ラファでイスラエル軍が攻撃か 少なくとも37人死亡

ロイター通信は、12日、ラファでイスラエル軍による攻撃があり、少なくとも37人が死亡したほか、多数のけが人が出ていると報じました。

また、ガザ地区の保健当局によりますと、これまでに2万8176人が死亡していて、100万人以上が避難するラファへの攻撃が強まれば、市民の犠牲がさらに増えることが懸念されています。

バイデン大統領「ラファへ避難の市民の安全や支援を」

イスラエル軍がガザ地区のラファへの攻撃を強める姿勢を見せる中、アメリカのホワイトハウスは、バイデン大統領が11日、イスラエルのネタニヤフ首相と電話で会談したと発表しました。

発表によりますと、バイデン大統領は「ラファに避難している100万人以上の市民の安全や支援を保証する実行可能な計画がないかぎり、ラファへの軍事作戦は行われるべきではないという考えを改めて強調した」として、ネタニヤフ首相に対して改めて慎重な対応を求めたと強調するとともに、引き続き緊密に連絡を取っていくことでも一致したとしています。

フランス外務省が声明「ラファ攻撃は壊滅的な人道状況もたらす」

イスラエル軍がガザ地区のラファへの攻撃を強めていることを受け、フランス外務省は11日、声明を発表し、「ラファには130万人以上が避難しており、人道支援の重要な通り道だ。ラファへの大規模な攻撃は、新たな次元の壊滅的な人道状況をもたらす」として、攻撃への懸念を示すとともに、戦闘の停止を求めました。

また「イスラエル軍はガザの市民の命を守るため、具体的な措置を講じる必要がある」ともしていて、イスラエル側が住民を保護する具体的な措置をとるよう強く求めています。

エジプト外務省が声明「軍事作戦は悲惨な結果もたらす」

イスラエル軍がガザ地区の南端にあるラファでの地上作戦を行う姿勢を強調しているのに対して、ラファと境界を接し、イスラエルとハマスの交渉では仲介役も果たしているエジプトの外務省報道官は11日、声明を発表し、「軍事作戦は悲惨な結果をもたらす」として、イスラエルに対してラファへの軍事作戦に踏み切らないよう警告しました。

その上で、「現在およそ140万人のパレスチナ人が身を寄せる地域が攻撃を受けないよう、国際社会の努力が不可欠だ」として、攻撃の回避に向けて各国に対してイスラエルへの圧力を強化するよう呼びかけました。

日本の外務省も談話発表「深い懸念 安保理決議に基づく行動を」

さらに外務省の小林外務報道官も談話を発表しました。

この中では「わが国は、ガザ地区のラファにおけるイスラエルの軍事行動に関する報道を深く懸念している。現地の人道状況が悪化し、多数の子ども、女性、高齢者を含む民間人の犠牲者数がますます増加している中、人道状況の一刻も早い改善や、そのための人道支援活動が可能な環境の確保が極めて重要だ」としています。

その上で「わが国は一貫してハマスなどによるテロ攻撃を断固として非難し、人質の即時解放を要求してきているが、改めて一般市民の保護の重要性を強調するとともに、すべての当事者に対し、国際人道法を含む国際法の順守や人道支援の確保を含め、関連の国連安保理決議に基づいて誠実に行動することを求める」としています。

WHO「ラファへの最近の攻撃を特に懸念 停戦求め続ける」

WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は12日、UAE=アラブ首長国連邦で開かれた会議で、「北部から逃れてきた多くの住民が身を寄せるラファへの、最近の攻撃を特に懸念している」と述べました。

また、ガザ地区では36ある病院のうち15か所が部分的に機能しているだけだとした上で、「これまでに447トンの医療物資をガザに届けたものの、日々増え続けるニーズを満たすにはほど遠い。医療従事者は不可能な状況の中で最善を尽くしている」と指摘しました。

さらにテドロス事務局長は「人道支援のための要員と物資の安全なアクセス、人質の解放、そして停戦を求め続ける」と強調しました。