バスケ女子 最終予選でカナダに勝利 3大会連続の五輪出場決定

バスケットボール女子のオリンピック世界最終予選の第3戦で日本は強豪、カナダとの接戦を86対82で制し、3大会連続のオリンピックの出場を決めました。

記事後半ではパリオリンピックに向けて見えた成果と課題について、詳しく解説しています。

日本 接戦制し3大会連続の五輪出場決定

バスケットボール女子のオリンピック世界最終予選は、4チームが総当たりで対戦し、上位3チーム以内に入るとパリ大会の出場権を獲得できます。

日本が入るグループは、4チームが1勝1敗で並んでいて勝てばオリンピック出場が決まる世界ランキング9位の日本は、世界5位の強豪、カナダと対戦しました。

宮崎早織 選手      

試合は第1クオーター、日本が得意とするスリーポイントシュートを警戒して徹底して外を守る相手に対し、日本はゴール下を中心に攻め、宮崎早織選手のドライブなどで得点を重ね20対20の同点でこのクオーターを終えました。

第2クオーターは、馬瓜エブリン選手がこの試合チーム最初のスリーポイントシュートを決め、山本麻衣選手も2本のスリーポイントを決めて、50対46と前半で4点をリードしました。

第3クオーターは相手の高さのある攻撃に追い上げられ、開始およそ2分で日本は逆転を許します。

そこからは両チーム譲らない展開となりますが、ディフェンスからの速攻で山本選手がこの日、3本目のスリーポイントを決めるなど日本がわずかに抜け出し3点をリードして第4クオーターに入りました。

最終第4クオーターも接戦が続き、残りおよそ4分半で日本は79対79の同点に追いつかれました。

ここで日本は宮崎選手のドライブなど、相手のゴール下を攻めて再びリードを奪うと3点リードの残り41秒には山本選手がルーズボールを拾って苦しい体勢からシュートを決めて、粘る相手を突き放しました。

山本選手と馬瓜エブリン選手がともに21得点を挙げた日本が86対82で接戦を制し、通算成績を2勝1敗としてグループの3位以内に入ることが確定して、3大会連続のオリンピック出場が決まりました。

《選手・ヘッドコーチ談話》

恩塚ヘッドコーチ「パリでは恩返しを」

3大会連続のオリンピック出場を決めたバスケットボール女子日本代表の恩塚亨ヘッドコーチは「チーム一丸でつかみ取った勝利でうれしい。プレッシャーのかかる難しいゲームだと予想していたが、チームを信じて戦い抜こうという気持ちで試合に入ることができた」と話していました。

そのうえでパリオリンピックに向けては「たくさんの方に応援してもらいエネルギーをもらったので、パリでは恩返しをできるように頑張りたい」と決意を話していました。

林咲希主将「めちゃくちゃうれしいし ほっとした」

キャプテンの林咲希選手は「めちゃくちゃうれしいし、ほっとした気持ちだ。この1か月間、練習を頑張ってきたし、メンバーに選ばれなかった選手も頑張ってきた。オリンピック出場につなげることができて、日本のためにみんなで頑張ってこういう結果になってよかった」と涙を浮かべながら話していました。

馬瓜エブリン「みんなを鼓舞し 自分もやるという使命果たせた」

3本のスリーポイントシュートを決め、チーム最多に並ぶ21得点を挙げた馬瓜エブリン選手は「正直、前の試合で現実を見て、ここからどうしようと思ったが、シンプルに勝つだけだと考えて、チームで話し合って気持ちを立て直した。みんなを鼓舞して自分もやるという使命を果たすことができてよかった」と話していました。

山本麻衣「全員で戦うことができた」

チーム最多に並ぶ21得点をマークし、第4クオーターの勝負どころで試合を決定づけるシュートを決めた山本麻衣選手は「本当に勝ててうれしい。勝つしかなかったので、全員で戦うことができて、こういう結果になってうれしい」と喜びを語りました。

そのうえでパリオリンピックに向けては「ここからが始まりだと思うので、もっとレベルアップしてパリで金メダルを取りたい」と話していました。

《【解説】バスケ女子 見えた成果と課題》

トム・ホーバスヘッドコーチのもと東京オリンピックで銀メダルを獲得して世界を驚かせたバスケットボール女子の日本代表。指揮官が恩塚亨ヘッドコーチに変わり、その1年後のワールドカップではグループリーグ敗退。6連覇をねらった去年のアジアカップでは決勝で中国に敗れるなど、国際大会で思うような結果を出すことができませんでした。

東京五輪のあとの苦戦

背景には東京オリンピックで見せたスリーポイントシュート中心の日本の戦術が研究され、世界の強豪チームに対策を取られたことがあります。

それでも日本が戦術を変えることはありませんでした。しつこいディフェンスから速い攻撃につなげて、外からのシュートを決める。

「走り勝つシューター軍団」をチームコンセプトに掲げた恩塚ヘッドコーチは「速さ」「しつこさ」「チームワーク」の3つをポイントに挙げていました。

今回の世界最終予選のメンバーに選ばれた日本代表の平均身長は1メートル74センチあまり。対戦するスペインと、カナダ、ハンガリーの3か国は、いずれも平均で日本より8センチから9センチ高く、日本は高さで劣る分、スピードで対抗するバスケットボールを貫こうと大会に臨みました。

“走り勝つバスケ”を体現

快勝した初戦のスペイン戦で光ったのはオールコートで厳しいプレッシャーをかけ続けたディフェンスです。終始相手のポイントガードにプレッシャーをかけ、相手のパス回しを自由にさせませんでした。

そして不利な体勢でシュートを打たせると、リバウンドでも粘り強く体を張って、体格で勝る相手にリバウンドの数で負けませんでした。

大会前の強化合宿では、フィジカルで勝る相手を想定し男子大学生を招いた練習も行ってきました。

赤穂ひまわり 選手

ディフェンスの要の赤穂ひまわり選手は「ゴール下では高さのある選手に負けてしまうので、その前の段階で体を張って止めたい」と話し、高い位置で相手を止めることを意識した練習が、効果を発揮しました。

ディフェンスでリズムを作ったチームは、得意とするスリーポイントも好調でした。8本中6本のスリーポイントを決めたキャプテンの林咲希選手が「苦しいシュートやタフなシュートを打たないように、最後まで合わせ続けることを練習している」と話していたとおり、フリーでシュートを打つ場面も目立ちました。

持ち味出せず高さに屈する

続くハンガリー戦の第1クオーターはスペイン戦と同様に厳しいディフェンスからリズムを作った日本でしたが、初戦で40分間走り続けたチームは連戦の疲労からかその後、失速します。

試合のあと、馬瓜エブリン選手や山本麻衣選手が「足が止まってしまった」と敗因を口にしたように、足が止まった日本はリバウンドで粘ることができず、相手の攻撃を止められなくなりました。

オフェンスでも相手のマークを振り切れず、持ち味のスリーポイントを打たせてもらえませんでした。

この試合で日本がスリーポイントを打った数は28本で、初戦のスペイン戦の40本から大きく減る結果となり、勝てばパリオリンピック出場が決まる大事な一戦を落としました。

勝てば五輪へ勝負の最終戦

カナダとの最終戦も相手は日本のスリーポイントに徹底した対策を取ってきました。スクリーンをかけてフリーになろうとする日本のシューターに対し、マークをスイッチして背の高い選手がつき、スリーポイントを打たせないディフェンスを仕掛けてきました。

ハンガリー戦で日本はこのスイッチディフェンスに苦しめられて、外からのシュートが決まらずリズムを失っていました。ただ、この試合ではガードの宮崎早織選手や山本麻衣選手がスイッチしてマークについた相手とのスピードのミスマッチを突いて果敢にゴール下にドライブを仕掛けました。

日本のスリーポイントの試投数は20本と、ハンガリー戦よりさらに少なくなったもののゴール下へのドライブや、ファウルをもらってからのフリースローで着実に得点を重ねました。

高田真希 選手

チームの大黒柱の高田真希選手は「相手がスイッチしてきた時に、徹底的に中を突いてファウルもらうプレーをずっとやっていくとミーティングで言われていたので、それを最後まで出せたのがよかった」と胸を張りました。

五輪に向けた成果と課題は

苦しんだ世界最終予選の3試合で見えたのは堅いディフェンスからの速い攻撃が世界で通用するという手応えと、スリーポイントを中心とする戦術のもろさ、そして世界の高さにどう対抗するかという課題です。

スペイン戦やカナダ戦ではスピードで身長差による不利を覆し、世界の強豪とも十分に渡り合えることを証明しました。一方で今大会、ただ1人センターとして登録された高田選手は、カナダ戦で5ファール退場となり、大事な試合の終盤でコートに立つことができませんでした。

常に自分より身長の高い相手と競り続けるインサイドをどうするかは、オリンピック本番でも問われることになります。攻撃面では対策を取られた時に、スリーポイント一辺倒にならない引き出しを増やす必要が改めて浮き彫りになりましたが、それは今大会のカナダ戦で日本が目指すべき形の可能性を感じさせました。

「走り勝つシューター軍団」がどう進化してパリオリンピック本番の舞台に立つのか。目標として掲げる金メダル獲得に向けて再び世界を驚かせるための挑戦が始まります。