地震の片づけ “作業中事故に注意したい” ブロック塀事故受け

10日、石川県七尾市で、建物の片づけ作業をしていた60代の男性が、倒れてきたブロック塀に挟まれて意識不明の重体となった事故で、現場周辺で復旧作業にあたっている人からは、作業中の事故にはより一層注意したいといった声が聞かれました。

10日昼すぎ、七尾市一本杉町の醤油店で、地震の被害を受けた建物の片づけ作業中にブロック塀が倒れて60代の男性が塀に挟まれ意識不明の重体となりました。

警察によりますと、ブロック塀は店と隣の建物との間にあり、高さおよそ1メートル30センチ、幅およそ3メートル30センチで、店の関係者ら数人で作業をしていた時に倒れてきたとみられるということです。

店は、古い町並みが残る七尾市中心部の一本杉通りにあり、地区は今回の地震で大きな被害を受けていて、復旧にあたっている人からは作業中の事故により一層注意したいといった声が聞かれました。

勤務する呉服店が被害を受けた50代の男性は、これまで崩れたブロック塀の片づけや、瓦が落ちた屋根にブルーシートをかける作業をみずから行ったということで、「雨が降ると呉服がだめになるので、少しでも早く被害を食い止めないといけない。自分たちでできることはやって、早く元の状態に戻したい。安全に注意してやるしかない」と話していました。

近くに住む75歳の男性は「事故は怖い。しかし片づけはしないといけないので、地震が起きた時にはすぐ逃げられるよう玄関先で作業をしている」と話していました。

また、営んでいる文具店が被害を受けた78歳の男性は、「私も片づけをしていてあと半分は作業が残っています。余震もあるので2次被害に気をつけたい」と話していました。

醤油店の建物には「危険」示す赤の紙

事故があった醤油店は、石川県七尾市の古い町並みが残る一本杉通りにあります。

100年以上前の明治41年につくられた土蔵造の2階建てで、建物は国の登録有形文化財に指定され、先月1日の地震で外壁がはがれ落ちたり建物が傾いたりするなどの被害が出ました。

建物には、応急危険度判定で立ち入りすることが「危険」だと判断されたことを示す赤の紙が貼られています。

店は、建物の修復を自費だけで賄うことは難しいとして先月末からクラウドファンディングを活用して資金を募っていました。

「赤」「黄色」判定の建物 被災者が少人数で片づけも

各自治体は、被害があった住宅では被災した人が少人数で片づけをしている場合もあるとして、作業中の事故に十分注意するよう呼びかけています。

能登半島地震で石川県内では少なくとも6万棟以上の住宅で被害が出ていて、各地でボランティアの協力なども得ながら復旧作業が進められています。

石川県社会福祉協議会ボランティアセンターによりますと、ボランティアが活動できるのは事前の調査で安全が確認された場所に限られていて、被災した建物の危険性がないかを調べる応急危険度判定で赤の「危険」や黄色の「要注意」とされている建物の場合、作業を断らざるをえなかったり、建物や敷地内には入らずに行う作業に限られたりするということです。

このため「赤」や「黄色」の判定を受けた建物については、被災した人が少人数で片づけにあたっている場合もあるということです。

各自治体は、引き続き地震活動が活発なため、片づけをする際にはブロック塀や傾いた家具など危険な場所には近づかず、複数人で作業をして事故には十分注意するよう呼びかけています。

専門家「至る所に危険潜む 片づけは短時間 複数人で」

地震の被害を受けた建物で片づけをするとき、どのようなことに気をつければいいのでしょうか。

地震防災が専門の名古屋大学の福和伸夫名誉教授は、ブロック塀にひびや傾きがある場合には、今後の地震などで倒壊するおそれがあり、特に注意が必要だと指摘しています。

ブロック塀のほかにも、はがれかけていた屋根の瓦が落ちてきたり、くぎなどを踏んだりする危険性があるほか、揺れにより地面に段差が出来てつまづくおそれもあるとして、作業をする際には頭上や足元にも十分に注意を払ってほしいとしています。

福和さんは「ボランティアと違って、被災した人たちが自分たちで片づけをするときには慣れておらず、どうしても周囲の危険に気がつきにくい。自治体には、ボランティアに伝えている安全な作業のための注意点を住民にも伝えるようにしてほしい」と話しています。

また、ボランティアの活動についても「今回の地震では活動時間に制限があるため無理を重ねてしまったり、注意がおろそかになることも考えられる。また外から支援に入る人は土地勘がないため、地震が起きた時にはどこに避難すればいいかを事前に確認しておいてほしい」とアドバイスしています。

福和さんは、今後も地震がいつ起きるか見通せないことから「大きな地震のあとには至る所に危険が潜んでいる。片づけはなるべく短時間で、何か起きたらすぐに助けられるように複数人で作業にあたってもらいたい」と注意を促しています。