ひぼう中傷に「いいね」 訴訟で杉田水脈議員敗訴確定

個人をひぼう中傷する内容のツイートに自民党の杉田水脈衆議院議員が繰り返し「いいね」を押したことで、名誉を傷つけたかどうかが争われた裁判で、最高裁判所は9日までに、議員側の上告を退ける決定をし、杉田議員に賠償を命じた2審の判決が確定しました。

訴えを起こしていたのはジャーナリストの伊藤詩織さんで、自身をひぼう中傷するツイートに繰り返し「いいね」を押されてフォロワーに拡散され、名誉を傷つけられたとして、杉田水脈衆議院議員に賠償を求めていました。

1審の東京地方裁判所は「いいね」を押す行為について「非常に抽象的でさまざまな意味を持つ表現行為で、特段の事情がないかぎり違法とはならない」などと判断して訴えを退けました。

一方、2審の東京高等裁判所は「一般的に『いいね』は対象のツイートに好意的、肯定的な感情を示すものにとどまるが、伊藤さんへの批判を繰り返していた杉田議員は、名誉を傷つける意図を持って『いいね』をしたと認められる。11万人ものフォロワーがいる国会議員のアカウントで行われたものであり、影響は大きい」と指摘して1審とは逆に訴えを認め、55万円の賠償を命じました。

これに対して杉田議員側が上告していましたが、最高裁判所第1小法廷の安浪亮介裁判長は9日までに上告を退ける決定をし、杉田議員側の敗訴が確定しました。

専門家“『いいね』で傷つく人も 押すとき一呼吸おくとよい”

SNSのひぼう中傷に詳しい国際大学の山口真一准教授は、「確定した2審の判決は過去の言動を総合的に踏まえ、国会議員であることやフォロワー数が多いことを考慮して違法な行為だと認定した。『いいね』が単純に侮辱行為にあたるとしたわけではないが、投稿だけでなく『いいね』も人を傷つけるということを裁判所が認めたといえる」と分析しました。

そのうえで、SNSを利用する時の注意点について「安易に『いいね』を押すだけでも、それによって傷つく人もいる。投稿だけでなく『いいね』を押すときも一呼吸おくとよい。自分がされて嫌だと思うことは、相手にもしないということが大切だ」と指摘しています。