あすから春節 健康診断を受けに“数百万円” 不動産にも熱視線

“数百万円”かけて日本で健康診断
売れる3億円以上のマンション

10日から、中国では春節の大型連休が始まります。
いま、中国から熱い視線が注がれているのが日本の「健康」と「不動産」。
いわゆる“超富裕層”はもちろん、“中間層”も日本の「健康」と「不動産」を求めているようです。

“日本に4台だけ”の機器も “数百万円”で健診受けに日本へ

新型コロナの感染拡大前、中国からの旅行者といえば家電や化粧品などを大量に買う“爆買い”がおなじみでしたが、コロナ禍を経ていま人気を集めているのが「健康」です。

“爆買い”はかつての姿?

去年10月、東京 羽田空港に隣接する複合施設内にクリニックがオープンしました。

健康診断のコースが人気で、訪れる人の9割は中国からです。
渡航費や宿泊費を含めると値段は数百万円にのぼるといいます。

人気の理由は、最先端の機器を使っていることで、日本に4台しかない立ったまま検査が可能なCTや最先端のMRIといった装置が備えられています。

また、羽田空港に駐機している航空機を見渡せる部屋など個室が12部屋あり、検診の場所までの専用のエレベーターと動線が確保され、検診に訪れた人は別の人に会うことなく受けられるようになっています。

案内表示には、ほぼすべてに日本語と英語、それに中国語が表記されています。

CTで撮影する時は、担当の診療放射線技師が事前に中国語で録音した「CT検査を今から始めます」という音声をスピーカーを通じて流すほか、装置から中国語で「息を吸って、止めて」と音声が流れるようになっています。

健康診断は中国でも受けることができますが、クリニックによりますと、きめ細かいサービス好評で日本での受診を希望する中国の人が多いということです。

クリニックと中国から受診を希望している人の仲介を行うエージェントの男性によりますと、通常は問い合わせが2週間に5件から10件ほどですが、春節の期間が近づくにつれ増えていき、今では毎日5件から10件に急増しているということです。

また、以前は富裕層の中でもいわゆる“超富裕層”が中心でしたが、コロナ禍を経て健康志向が高まり、超富裕層ではなくても医療にお金をかける人たちが増えているとしています。

そのため、2日間にわたって行うようなフルコースの健康診断だけでなくCTだけといったプランも用意していて、値段も数十万円から500万円ほどと幅があるといいます。

藤田医科大学羽田クリニック 榛村重人院長
「中国で健康意識が高まっているのは間違いなく、受診で訪れる方々は経営者や弁護士など裕福な方が多いです。医療技術だけではなく日本の接遇面やスタッフが丁寧に接してくれるところ、それにプライバシーを重視するところを評価していただいています。春節だからといっぱい予約が入っているわけではないが、春節前は控えていたという声も聞くので、今後増えていくことを期待したい」

“高額健診”は富裕層だけではない…

大手旅行会社のJTBは、海外から訪れた人が日本ならではの医療を受ける医療ツーリズムの事業に2008年から取り組んでいます。

国内のおよそ350の医療機関と提携し、日本を訪れる外国人に健康診断を受けられるコースを50万円~70万円、高いものでは100万円ほどで販売しています。

日本の医療の信頼に加えて高いホスピタリティーが評価されているということで、2023年の予約数は前年比で2倍以上になっていて、円安も重なり、海外から見ると割高感は薄いとしています。

新型コロナの感染拡大前は顧客の8割以上が中国からだったということですが、今はベトナムやモンゴルから訪れる人が中心になっているということです。

春節でも中国からの予約は回復していないということで、理由としては「お祝いの時期に健康診断を受けて悪い結果が出ると縁起が悪いからこの時期は外す」といった現地の声もあり、JTBでは、春節後に増えることを期待しています。

また、これまでは値段が高く結果的に富裕層がメインでしたが、コロナ禍を経た健康志向の高まりで富裕層以外にもすそ野を広げていこうという動きもあり、健康診断のプランも限られた検査だけをする割安なものが出てきているなど多様化しているということです。

JTB ジャパン・メディカル&ヘルスツーリズムセンター 松嶋孝典所長
「世界的に見ると人間ドックだけではなく治療の領域も含め広がっているが、まだまだ日本は知られていないので今後海外に向けてアピールし、日本の医療制度を守りながら医療ツーリズムを発展させていくことが重要だと思います」

“のべ90億人”が大移動 日本へはコロナ前の6割程度

新年を旧暦で祝う中国。

10日から旧正月の春節に合わせた8日間の大型連休が始まります。

旧暦の大みそかにあたる9日、南部・広州にある空港では、ふるさとに帰省する人のほか、海外に旅行に出かける家族連れの姿も目立ち、大きな荷物を抱えた人たちで長い列ができていました。

中国政府は、春節の大型連休を含む40日間に帰省や旅行などで移動する人の数について、「のべ90億人にのぼり、過去最多になる」とする予測を発表しています。

このうち、およそ8割を占めるのが自家用車での移動で、去年の同じ時期の実績の2倍以上の、のべ72億人としています。

一方で、鉄道や飛行機などの公共交通機関を利用する人は、のべ18億人で、去年の実績からの増え幅は1割余りにとどまるとしています。

中国政府は、春節の人の移動については、これまで公共交通機関の利用者の予測のみを発表していて、自家用車を含めた予測を公表するのは初めてです。

また、中国の大手旅行予約サイト「シートリップ」によりますと、ことしの春節の大型連休中、中国からの海外旅行の予約数は、去年の10倍以上に増えているということです。

人気の行き先は、タイやマレーシアなど東南アジアのほか、日本やオーストラリアなどとしています。

ただ北京の日本大使館によりますと、先月発給された日本を訪れるためのビザの件数は、新型コロナの感染拡大前の2019年の同じ時期と比べて6割程度にとどまっているということで、日本への観光客が今後どこまで増えるかは不透明です。

その理由について、日本大使館は「日本との間の航空機の便数が新型コロナの感染拡大前の水準まで回復していないことが背景にあるのではないか」としています。

不動産も春節で盛り上がり

とはいえ、人口13億人を超える中国の大型連休。

日本の不動産への投資の期待が高まっています。

中国人投資家にとっては、この連休を使って物件を「内覧」するタイミングだからです。

問い合わせ 新型コロナ前の約3.5倍

中国や香港、台湾などの投資家向けに日本の不動産を紹介している東京 港区の企業、「神居秒算」は、運営する情報サイトで、全国のおよそ4000件のマンションや戸建てなどの物件情報を掲載しています。

会社によりますと、中国で新型コロナが落ち着き、行動制限が解除されてからは「日本の不動産を購入したい」などという問い合わせが急速に増えていて、中でも去年10月は、コロナ前の2019年1月に比べておよそ3.5倍の問い合わせがあり、過去最高だったということです。

神居秒算 マーケティング担当 戸伏高明さん
「対応できる人員に限りがあるため、やむなくサイト上から広告などをなくして、問い合わせを絞り込ませていただいたほどです。日本に目が向いているのは、円安が大きいと思います。他の国の不動産と比べて、賃貸のリターンが大きいとか、メンテナンスがしっかりしているとか、そういうことで資産価値が高いんです」

港区 中央区 渋谷区など都心の物件が人気

こうした中で迎える春節。

人気の物件を見せてもらいました。

こちらの物件は、港区六本木にあるマンション。

1DKで値段は3億1700万円。

いわゆる富裕層向けです。

富裕層には、港区や中央区、渋谷区など都心の物件が人気です。人気エリアは日本と変わらないということです。

選び方が日本人とよく似ているケースも…

ただ、この会社のサイトを利用して購入する人の大半を占めるのは、年収1000万円ほどの人たちです。

こうした人たちが購入するのは、都内の「5000万円前後」のマンションで、物件の選び方も日本人とよく似ているといいます。

戸伏高明さん
「日本人でいうと、大企業のサラリーマンだと思ってもらえるとイメージしやすいかもしれえません。即断即決はせず、インターネットサイトなどで物件を10件とか20件とか選んで、内覧したうえで1つ決めます。その際には、周辺環境はもちろん、風水を大事にする国民なので、部屋の向きを気にされたりしますね。今後も日本の人気は続くと思います」

早くもにぎわう観光地

関西空港では、9日昼ごろから中国などからの旅客機が次々と到着し、到着ロビーには団体旅行客の姿も見られました。

中国・瀋陽から家族で来たという女性は「USJとディズニーランドで遊ぶのを楽しみにしている。京都の雰囲気も味わいたい」と話していました。

日本に2週間滞在する予定だという青島から来た男性は「ヨーロッパをはじめ海外旅行の値段が高騰する中、日本への旅行は値段がそれほど高くなく、コストパフォーマンスがよいのがメリットだ」と話していました。

3年ぶり定期便再開の函館 ホテル満室 すでににぎわいも

函館市の観光スポット、函館朝市はこの休みを利用して日本を訪れた外国人観光客ですでににぎわっていて、建ち並ぶ商店で海産物や果物を味わう人の姿が見られました。

また、水槽から釣り上げたイカをその場で味わえるコーナーでは、観光客らが笑顔で釣りを楽しんでいました。

函館では、新型コロナウイルスの影響で運休していた台湾とを結ぶ定期便が去年5月、およそ3年ぶりに再開し、その後、別の航空会社の定期便が就航したのに加えて、香港とを結ぶ定期便も就航しています。

北海道函館市の函館朝市から程近いホテルでは春節の時期が近づくにつれて香港からの観光客を中心に予約が増えてきたということで、ことしに入ってからは宿泊者の半数が外国人だということです。

およそ200ある客室は2月中旬にかけて予約でほぼ満室だということです。

ホテルの営業担当 大川誠課長
「函館では特に冬に誘客が厳しくなるが、外国人観光客の増加によって回復傾向が非常に強くなっている。まだまだ回復しきっていない時期もあるので、これを機にさらに宿泊者の数が伸びることを期待したい」

あすは春節 仕事をする中国人の姿も

さきほど出てきた中国人投資家向けの不動産仲介サイトを運営する会社では、当然、中国人の社員も多く、この時期、社員の多くが「里帰り」すると言います。

こうした中で、社内でパソコンに向かう2人の中国人の女性がいました。

話しを聞いてみると、ひとりは営業の社員。

もうひとりは企画を担当している社員でした。

彼女たちは同じチームで、このチームの社員の多くが休んでいないと言います。

「春節は投資家が日本を訪れて内覧するタイミングの一つで、投資家と不動産会社をつなぐ役割の私たちの部署の仕事量は増えるんです」

春節の時期に出勤する代わりに、休みは別のタイミングで取れると言います。

(記者)「きょう(9日)は、どうやって過ごすんですか?」

彼女たちは、口をそろえてこう言いました。

「ビデオチャットで家族とつなぎます」

企画の女性
「きょうは大みそかっていうところで、ちょっとあいさつをしてビデオ通話をして、ふだんどおりのの会話をしながら新年を迎えて、あすは親戚と会話します」

営業の女性
「私は食べ物の宅配サービスを使って食事を準備して、親族も含めて家族は集まっています。昔からうちの実家では、お正月はみんなでトランプや麻雀をするのが恒例となっています。私はいないですけど、向こうではやっているので、一緒に参加している気持ちで過ごそうと思っています」

そうは言っても、中国の人にとって、きょう(9日)は大みそか。

あす(10日)は新年という大切な日。

本音もポロリ。

「できれば帰りたいんですけど、日本にいるとやっぱり日本には春節はないので。ちょっと寂しさはありますね」