【詳細】ラファでの地上作戦に国際社会が懸念(2月9日)

イスラエル軍が、100万人以上が避難しているガザ地区で最も南にあるラファでの地上作戦を行う構えを強める中、国際社会からは住民の犠牲を懸念する声が強まっています。

米政府高官“住民を保護しないままの軍事作戦支持せず”

イスラエルのネタニヤフ首相は7日「軍に南部ラファでの作戦準備をするよう指示した」と述べ、今後は100万人以上が避難する南部ラファへの地上作戦を行う構えを強めています。

ラファでは、イスラエル軍による空爆が連日行われていて、パレスチナの地元メディアは9日、8人が死亡したと伝えています。

ラファへの地上作戦についてアメリカ・ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は8日、記者会見でイスラエル軍がラファに対してただちに大規模な軍事作戦を行う計画は把握していないと述べました。

そのうえで「ラファに避難する100万人以上のパレスチナ人を考えれば今すぐ作戦を行うことは大惨事になる。彼らの安全や保護を考慮しない作戦を私たちは支持しない」と述べて、住民を保護しないまま作戦を実行することは支持しないという立場を示しました。

また、ユニセフ=国連児童基金のラッセル事務局長も8日「60万人以上の子どもと、その家族が避難をしているラファでの戦闘を激化させないよう緊急に呼びかける」とする声明を発表し、人道支援のための停戦を訴えています。

ガザ地区の保健当局の発表では、これまでの死者は2万7947人に上っていて、イスラエル軍がラファへの攻撃を強めればさらに多くの犠牲が避けられず、国際社会からの懸念が高まっています。

イスラエル 完全な停戦など求めるハマス提案を拒否する姿勢

ガザ地区での戦闘の休止と人質の解放に向けた交渉を巡り、イスラエル側は完全な停戦などを求めるイスラム組織ハマスからの提案を拒否する姿勢を示しました。

ハマスは仲介するカタールやエジプトと協議を続けていますが、交渉がまとまるには少なくとも10日かかるとの見方も伝えられていて、先行きは不透明です。

イスラエルとハマスの間では、カタールなどの仲介で戦闘の休止と人質の解放に向けた交渉が進められていますが、イスラエルのネタニヤフ首相は7日、3つの段階からなり、停戦を求める内容のハマス側の提案について拒否する姿勢を示しました。

これを受けてハマスは8日、代表団がエジプトの首都カイロに到着し、仲介するカタールやエジプトと引き続き、協議をしていることを明らかにしました。

中東の衛星テレビ局アルジャジーラはエジプト側の関係者の話として、交渉がまとまり戦闘休止が実現するには少なくとも10日かかるとの見方を伝えています。

交渉の先行きが依然として不透明な中、イスラエル軍は8日、ハマスの重要な拠点があると主張する南部ハンユニスの西部で作戦を強化していると発表したほか、今後は100万人以上が避難しているガザ地区南部ラファでの地上作戦を行う構えです。

ガザ地区の保健当局は8日、過去24時間に130人が死亡し、これまでの死者は2万7840人にのぼったと発表していて、ラファへの攻撃が激化すればさらなる住民の犠牲が懸念されています。

バイデン大統領「ガザ地区の対応は過剰だったと思う」

アメリカのバイデン大統領は8日、ホワイトハウスで、イスラエルによる攻撃が続くガザ地区の情勢について記者団から質問され、「ガザ地区で行われた対応は過剰だったと思う」と述べ、イスラエルによる攻撃は行き過ぎだとの認識を示しました。

その上で、「ガザ地区では罪のない人たち、女性や子どもたちが助けを必要としている」などと述べ、引き続き、ガザ地区での戦闘の休止と人質の解放に向けて取り組む姿勢を強調しました。

また、バイデン大統領は去年10月にハマスがイスラエルに大規模な攻撃を仕掛ける前の中東情勢を振り返り、みずからがサウジアラビアなどに対し、イスラエルを承認するよう働きかけていたと説明しました。

その上で、「ハマスがこれから起きることを理解し、その前に壊したかったと考えることは理にかなっている」と述べ、証拠はないとしながらも、ハマスがイスラエルとサウジアラビアの国交正常化を妨げるため、イスラエルへの大規模攻撃に踏み切った可能性があるとの見方を示しました。