【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(2月9日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる9日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナとは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ウクライナ軍総司令官の解任 国内から懸念の声

ウクライナのゼレンスキー大統領が国民の間で人気が高い軍のザルジニー総司令官を解任したことについて、ウクライナ国内からは懸念の声があがる一方、ロシア側からは早くも新たな総司令官を攻撃する投稿が出ています。

ゼレンスキー大統領は8日、軍のザルジニー総司令官を解任し、新しい総司令官に陸軍のシルスキー司令官を任命したと発表しました。

ザルジニー氏は国民の間で人気が高かったこともあり、首都キーウのクリチコ市長はSNSに「政府がこの交代について国民に説明することを望む」と投稿し、懸念を示しました。

一方、ロシアの前の大統領で強硬派として知られる安全保障会議のメドベージェフ副議長は「新たに総司令官となるシルスキー氏の経歴を見ると嫌悪を感じる。もともと旧ソビエトの将校でありながら、人々を攻撃する人物だ」と投稿し早速、攻撃しています。

ロシアの有力紙「イズベスチヤ」はシルスキー氏がロシアの旧ソビエトの士官学校を卒業していることに触れ「ロシアにとってはザルジニー総司令官よりシルスキー氏の方がよい。シルスキー氏を把握する方が簡単だ」とする地元の声を伝えています。

また、専門家の見方として「ウクライナ軍の戦略は海外からもたらされている」とし、ザルジニー氏の後任が誰であろうと、本質的に変わりはないとの指摘も報じています。

軍事侵攻以来、ロシア軍の侵攻を食い止めてきたとされるザルジニー氏の交代は大きな決断なだけに、戦況にどのような影響が及ぶのかに関心が集まっています。

ロシア大統領府報道官 “侵攻を継続するうえで影響受けない”

ウクライナ軍総司令官の交代について、ロシア大統領府のペスコフ報道官は9日「特別軍事作戦の進展を変えるような要因とはみていない」と述べました。

また「特別軍事作戦は目標の達成まで続くだろう」と述べ、ロシアが侵攻を継続するうえで影響は受けないという見方を示しました。

ザルジニー氏とは

ザルジニー氏は1973年生まれの50歳。1997年に軍人としてのキャリアをスタートさせたザルジニー氏は陸軍で要職を歴任した後、ロシアによる軍事侵攻が始まる前の2021年7月にウクライナ軍の総司令官に就任しました。

ロシアによる侵攻開始後はたびたび最前線にも赴くなどして、軍事作戦の指揮をとり続けてきました。

国民からの人気も高く、去年12月にキーウ国際社会学研究所が発表した世論調査では、総司令官のザルジニー氏を「信頼している」と回答した人が88%にのぼり、ゼレンスキー大統領を「信頼している」と答えた62%を上回りました。

新総司令官 シルスキー氏とは

新たに総司令官に任命されたシルスキー氏は58歳。

2019年からウクライナ陸軍の司令官を務めています。

ゼレンスキー大統領は8日に公開した動画のなかでシルスキー氏について、「首都キーウの防衛や東部ハルキウ州の解放で作戦を指揮し成功を収めた。最も経験豊富な司令官だ」と述べ、これまでの功績を強調しました。

一方、アメリカの有力紙、ワシントン・ポストは8日、「シルスキー氏はウクライナ東部ドネツク州のバフムトで兵士たちをあまりにも長く敵の攻撃にさらし続けた指揮官で、戦略的価値に乏しい町を守るために多くのウクライナ兵が犠牲となった」としたうえで、「シルスキー氏を総司令官に任命する決定は現場の部隊の反発を招くことが予想される」と指摘しています。

林官房長官「引き続き ウクライナ支援を推進」

林官房長官は閣議のあとの記者会見で、「他国の内政に関わる事項について政府の立場でコメントすることは適切ではない」と述べました。

そのうえで、「ロシアによるウクライナ侵略は国際秩序全体の根幹を揺るがす暴挙であるというのがわが国の一貫した立場であり、1日も早い、公正かつ永続的な平和を実現すべく、対ロ制裁とウクライナ支援を強力に推進していく必要がある。引き続き、G7を含む同志国などと緊密に連携しつつ、ウクライナに寄り添った取り組みを継続していく」と述べました。

習主席とプーチン大統領が電話会談

中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は8日に電話で会談し、ことしは両国が国交を樹立してから75年にあたるとして、さらなる関係強化を確認しました。

ロシア大統領府によりますと、両首脳はウクライナ情勢についても意見を交わしたということです。

大統領府のウシャコフ補佐官は電話会談が1時間に及んだとして親密さをアピールし、「両首脳はアメリカがロシアと中国の封じ込めを進めようとしていると認識している」と指摘しました。

仏国防相「ウクライナへのりゅう弾砲供与 欧米で団結を」

フランスのルコルニュ国防相は8日、ロシアの軍事侵攻を受けるウクライナが反転攻勢を有利に進められるよう、りゅう弾砲などの供与に欧米各国が団結して取り組む必要があるという考えを強調しました。

フランスのルコルニュ国防相は8日、南東部グルノーブル近郊の基地を訪れ、これまでウクライナに供与したものと同じ最新鋭の自走式りゅう弾砲「カエサル」を運用する部隊を視察しました。

視察は先月、ウクライナへのさらなるりゅう弾砲の供与を目的とした欧米各国の新たな枠組みをフランスが中心となって結成したことを受けて行われたもので、今後、各国が協力し、合わせて78門の「カエサル」を供与するとしています。

「カエサル」を視察したルコルニュ国防相は軍の担当者に、「寒い地域での運用になるので、運転席の暖房は完備されているのか」などと質問し、詳しく説明を受けていました。

視察のあと、ルコルニュ国防相は記者団に対し、「われわれの戦いはウクライナに十分な数の『カエサル』を提供できるかどうかだ」と述べ、ロシアの軍事侵攻を受けるウクライナが反転攻勢を有利に進められるよう、りゅう弾砲などの供与に欧米各国が団結して取り組む必要があるという考えを強調しました。