自民 収支報告書訂正の72人 派閥からの寄付約70%が「繰越額」

自民党の派閥からキックバックを受けたパーティー収入などを政治資金収支報告書に記載していなかった98人の所属議員などの団体のうち、8日正午までに収支報告書の訂正が確認できた72人分についてNHKが分析したところ、新たに判明した派閥側からの寄付のおよそ70%にあたる資金が、使われずに「翌年への繰越額」として記載されたとみられることがわかりました。

東京地検特捜部の捜査で、自民党の安倍派、二階派、岸田派が、おととしまでの5年間で合わせて9億7000万円余りのパーティー収入を政治資金収支報告書に記載していなかったことが明らかになりました。

これを受けて、各派閥がおととしまでの3年分の収支報告書を訂正した結果、安倍派と二階派の当時の所属議員などの団体に合わせて4億9259万円の寄付が追加されたことがわかっています。

NHKは、これらを収支報告書に記載していなかった98人の団体のうち、8日正午までに訂正後の収支報告書がホームページで公開された72人分について分析しました。

その結果
▽派閥側の訂正で新たに判明した議員側への寄付の総額3億7749万円に対し
▽議員側の訂正で追加された支出の総額は28%にあたる1億592万円余りで
▽残りのおよそ70%、2億7000万円余りは、使われずに「翌年への繰越額」として記載されたとみられることがわかりました。

政治資金の問題に詳しい日本大学の岩井奉信 名誉教授は「繰り越しというのはため込んでいたのと同じなので、では何のためのキックバックだったのか。繰り越しという形になると確認する方法がないので、それを信じるしかない。つまり説明する必要もないということになるので、これで説明責任を果たしたことになるのかという疑問が出てくる」と指摘しています。

各派閥の収支報告書の訂正は

自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件を受けて各派閥が行ったおととしまで3年分の政治資金収支報告書の訂正によりますと
▽安倍派は、パーティー収入を合わせて4億3588万円増額し、この期間に行った当時の所属議員など91人の団体への寄付として合わせて4億2726万円を追加しました。

▽二階派は、パーティー収入を合わせて1億3614万円余り増額し、この期間に行った当時の所属議員7人の団体への寄付として合わせて6533万円を追加しました。

▽岸田派は、パーティー収入を合わせて896万円増額し、議員側への寄付の追加はありませんでした。

繰越額 安倍派は約80% 二階派は約30%

使われずに「翌年への繰越額」として記載されたとみられる割合は、派閥によって大きく異なっています。

【安倍派】
▽派閥側の訂正で新たに判明した65人の団体への寄付の総額3億1216万円に対し
▽議員側の訂正で追加された支出の総額は19%にあたる6038万円余りで
▽残りのおよそ80%、2億5000万円余りは、使われずに「翌年への繰越額」として記載されたとみられます。

【二階派】
▽派閥側の訂正で新たに判明した7人の団体への寄付の総額6533万円に対し
▽議員側の訂正で追加された支出の総額は70%に当たる4553万円余りで
▽残りのおよそ30%、1900万円余りは、使われずに「翌年への繰越額」として記載されたとみられます。

議員側の収支報告書訂正 支出の内訳は

議員側の訂正で追加された新たな支出の内訳は、次のとおりです。

【安倍派】
▽会合や飲食などの費用を含む「組織活動費」が追加支出全体の33%に当たる2006万円余りと最も多く
次いで
▽「使途不明金」が1398万円
▽「事務所費」が819万円余り
▽みずからが関連する政治団体への「寄付」が633万円などとなっています。

【二階派】
▽二階元幹事長の資金管理団体が3472万円余りの書籍代を追加したことから「調査研究費」が追加支出全体の76%を占めていて
次いで
▽「寄付」が500万円
▽「人件費」が438万円(10%)などとなっています。

支出の追記 その内容は

訂正後の議員側の収支報告書には、「組織活動費」として、新たに、銀座や赤坂、それに六本木などの高級店での飲食代のほか、土産代やデパートで購入した品物の代金などが記載されていました。

また、「事務所費」として、防犯カメラ工事の費用のほか、PCR検査料や大腸内視鏡検査の費用なども追加されていました。

さらに、「備品・消耗品費」として、壊れた議員バッジを修理した際の費用を追加したケースもありました。