日商と連合のトップが会談 持続的な賃上げ “価格転嫁が重要”

ことしの春闘をめぐって、中小企業が多く加盟する「日本商工会議所」と「連合」のトップが会談し、持続的な賃上げに向けて人件費などの上昇分を製品やサービスの価格に積極的に転嫁することが重要だという認識で一致しました。

ことしの春闘は、先月下旬に事実上スタートし、8日は日本商工会議所の小林会頭と連合の芳野会長が都内で会談しました。

この中で、日本商工会議所の小林会頭は「中小企業の間では生産性を向上させる自己努力に加えて、賃上げの原資を確保する意味で、ことしは価格転嫁を一層商習慣にしていくことが重要だ」と述べました。

これに対し、連合の芳野会長は「中小企業で十分な賃上げができるかがカギで、組合のない職場で働く人を含め社会全体への波及が大事だ」と述べました。

ことしの春闘では、経営側と組合側がともに、30年ぶりの高い水準となった去年を上回る賃上げが必要という認識で一致しています。

ただ、中小企業の間では、業績が改善しないまま、人材確保などのために賃上げを行うケースも目立っています。

会談では、中小企業を含めた持続的な賃上げに向けては、人件費などの上昇分を製品やサービスの価格に積極的に転嫁し、賃上げの原資を確保することが重要だという認識で一致しました。

日商 小林会頭「小規模・零細企業や非正規の労働者で底上げを」

会談のあと、日本商工会議所の小林会頭は記者団に対し「連合とは立場は違うが方向性は一致している。あとはマグニチュードをどう高めるかだが、日本経済全体の賃上げをみると小規模・零細企業や非正規の労働者を含めないと底上げができない」と述べ、会員にはなっていない小規模事業者なども含めて賃上げの機運を広げることが重要だという認識を示しました。

連合 芳野会長「中小・小規模事業者など 底上げできるかがカギ」

日本商工会議所と連合のトップ会談のあと、連合の芳野会長は「今回の春闘では中小・小規模事業者、そして非正規労働者のいわゆる底上げができるかがカギで、そういったところを中心に議論した。ほとんどの中小企業は労働組合がなく賃上げの機運の醸成が非常に重要だという認識を持っているので、そこに力を入れていきたい」と述べました。

林官房長官「最大限の賃上げを期待したい」

林官房長官は午後の記者会見で「賃上げ自体は各企業の支払い能力を踏まえながら、個別に労使が交渉し合意したうえで決定されるべきものだが、最大限の賃上げを期待したい」と述べました。

そのうえで「政府としても賃上げ促進税制の強化、労務費の転嫁に関する指針の各業界への周知徹底など、中小や小規模企業も含めてわが国全体で物価高に負けない賃上げを実現できるようしっかり取り組んでいく」と述べました。