能登半島地震 在宅避難者の健康を懸念 NPO法人が巡回診療

能登半島地震で、避難所に比べて医療支援を受けづらい在宅避難を続ける人たちの健康への影響が懸念されている中、NPO法人が巡回診療を行っています。

能登北部医師会によりますと、能登半島地震で建物が壊れたり断水が続いたりしている影響で、輪島市や珠洲市などでは5日時点で11か所の医療機関が診療を中断したり、縮小したりしているということです。

こうした中、全国の医師や看護師からなるNPO法人「HuMA」は珠洲市に医療チームを派遣し、避難所に比べて医療支援を受けづらい在宅避難を続ける人たちへの巡回診療を行っています。

今月4日には関西から派遣された医師や看護師たち3人が、珠洲市宝立町に住む、ほとんど寝たきりの92歳の女性の自宅を訪れ、健康状態を確認したり治療をしたりしていました。

女性と一緒に暮らす娘は「場所が変わると母がストレスで体調を崩すと思い、避難所ではなく自宅にいます。医師や看護師に来てもらえると安心するので大変助かります」と話していました。

診療を行った亥野春香医師によりますと、糖尿病の患者が病院に通えず、適切な食事もとれないまま病状が悪化しかねないケースもあったということです。

医師「被災地が広く行政調査で見落とされる在宅避難者も」

亥野医師は「被災地は範囲が広く、行政の調査で見落とされる在宅避難者もいる。地域に密着した開業医は自身も被災していて、地域の声に応えたくても応えられない状況が続いている。こうした状況が解消されるまでサポートすることが求められていると思う」と話していました。

NPO法人理事「地域の人たちに引き継いでいくことが必要」

NPO法人「HuMA」の理事で災害医療に詳しい夏川知輝医師は、在宅避難者への医療支援について「高齢者の中には厳しい環境でも家で暮らしている方も多い。ただ、地震の発生直後はどうしても避難所の人たちに目を向けざるをえず、自宅で生活を続けている方を把握できたのは数日後で、その間に体調が悪化した危険性もある」と指摘しました。

そして、今後について「今はメンバーを交代させながら外部の支援者が支援を行っているが、こういった活動を恒常的に続けていくことは難しい。私たちの手からもともと被災地にある保健のシステムにつなげられるよう、断水が解消して地元の人たちが戻ってきたタイミングで地域の人たちに引き継いでいく必要がある」と話していました。

石川県 “在宅避難者”の登録数は3719人(2月4日時点)

石川県によりますと、今月4日の時点で、自宅で避難生活を送る“在宅避難者”の登録数は3719人となっています。

さらに多くの人が支援が得られないまま自宅で過ごしている可能性があることから、県は「災害関連死につながりかねない」として、LINEや電話で居場所を登録するよう呼びかけています。