「北方領土の日」 元島民ら早期返還訴える

「北方領土の日」の7日、北海道羅臼町では元島民らが集まり、北方領土の国後島の方角から昇る朝日に向かって早期返還を訴えました。

「北方領土の日」は、1855年2月7日に日本とロシアの間で北方四島を日本の領土とする条約が結ばれたことにちなんで、返還運動を全国的に盛り上げようと日本政府が定めました。

元島民が多く住む羅臼町では7日朝、対岸の国後島をのぞむ施設におよそ30人が集まりました。

そして、午前6時半の日の出の時刻にあわせて朝日が昇る国後島の方角を向き「北方領土を返せ!」「北方墓参を早期に再開しよう!」とシュプレヒコールをあげました。

続いて地元の人たちが北方領土への思いをつづった詩吟を披露し、元島民らはふるさとに思いをはせていました。

国後島出身の脇紀美夫さん(83)は「政府には一刻も早く北方領土に関しての交渉を再開させてほしい」と話していました。

母親が国後島出身で、札幌市から参加した女性は「母親がどんな思いだったのかと振り返って考える機会になった」と話していました。

ロシアの「好ましからざる団体」指定に元島民は

北方領土をめぐっては、ロシア法務省が6日、返還運動を続ける日本の団体を、ロシアでの活動を事実上禁止する「好ましからざる団体」に指定したと発表していて、札幌市に事務局を置く「北方領土復帰期成同盟」がこれに指定された可能性があります。

これについて、国後島出身の脇紀美夫さんは「ロシアの一方的な話であってわれわれは一喜一憂する必要はないと思っている。元島民として願うこと、取り組むことは変わらない」と冷静に受け止めていました。

また、母親が国後島出身の大森桂子さんは「日本とは考え方の違う国なので、いっしょくたには考えられないが、祖先が生まれ育った島なので返還を願う思いはこれからも変わらない」と話していました。

指定の可能性の団体 “北方領土返還の交渉に影響ない”

「北方領土復帰期成同盟」の佐伯浩会長は、札幌市内で報道各社の取材に応じ、「細かい理由を言わずに相手の国を非難するロシア政府のいつものやり方で、相手の国や国民への尊敬や思いやりの心が感じられない」と反発しました。

日本政府が外交ルートを通じて抗議したことを踏まえ、期成同盟では、今後のロシア側の出方を注視することにしていて、佐伯会長は北方領土の返還に向けた今後の交渉に影響はないという見方を示しました。

北海道根室市では住民大会 約750人が集まる

北方四島の元島民が多く住む北海道根室市では、早期返還を求める住民大会が開かれ、元島民が「ロシアによるウクライナ侵攻で北方領土をめぐる日ロ間の交渉が途絶え不安が募るばかりだ」と訴えました。

根室市の会場には元島民のほか、その子どもや孫などおよそ750人が集まりました。

この中で、元島民を代表して択捉島出身の鈴木咲子さん(85)が「ロシアによるウクライナ侵攻で北方領土をめぐる日ロ間の交渉が途絶え本当に不安が募るばかりだ。返還への道筋をつける揺るぎない外交交渉を強く求める」と訴えました。

そして、返還運動に取り組んでいる根室市の高校3年生の半田つくしさんが「元島民の熱い思いを私たち若い世代が引き継ぎ、全国の同世代に訴えなければならない」と決意表明しました。

大会の最後には参加者全員で「北方領土を返せ」などとシュプレヒコールをあげました。

北方領土問題をめぐって、ロシアはウクライナへの軍事侵攻に対する日本政府の制裁措置に反発し、平和条約交渉を中断すると一方的に表明したほか、元島民らによる「ビザなし交流」や先祖の墓を訪れる「北方墓参」の事業も再開の見通しは立っていません。

住民大会に出席した千島歯舞諸島居住者連盟の角鹿泰司根室支部長(86)は「元島民にはもう時間がない。領土の土を踏み、墓参ができなければ死ぬことはできない」と話していました。