石川 約3万7500戸で断水続く 厳しい現状 乗り越えていく動きも

能登半島地震から1か月余り。石川県内では、輪島市と珠洲市のほぼ全域で断水するなど、7つの市と町のあわせておよそ3万7500戸で断水が続いています。(7日午後2時)

遅いところでは復旧が4月以降になるという見通しも示されるなか、学校給食が再開したり仮設の風呂が設けられたりと、どうにかして厳しい現状を乗り越えていこうという動きも、各地で広がっています。

七尾 調理の必要ないメニューで学校給食が再開

能登半島地震の影響で断水が続いている石川県七尾市で、調理の必要のないメニューだけを提供する学校給食が再開しました。

七尾市では地震で断水のほか、給食センターの設備が壊れる被害があり、給食を提供できない状態が続いていました。

7日からコンビニチェーンなどから仕入れた調理の必要のないメニューだけを提供する「簡易給食」が市内の小中学校で始まりました。

このうち田鶴浜小学校の給食では牛乳とおにぎり、それにデザートが提供され、子どもたちは同級生たちと一緒に楽しそうに給食を味わっていました。

小学1年生の男の子は「給食があると友達と長くいられるのでうれしい。寒い日が続くので、おみそ汁のような温かいものもあるといい」と話していました。

七尾市によりますと、給食の再開に伴い一部の学校を除き午後の授業が始まったということです。

七尾市では、断水が解消し給食センターなどの復旧作業が終わりしだい、汁物も提供する予定だということですが、今のところ復旧のめどは立っていないということです。

七尾 人工透析の治療再開 能登地方の公立病院で初

石川県七尾市の公立能登総合病院で、能登半島地震後に中止されていた人工透析の治療が7日から再開されました。

人工透析の治療の再開は地震後、断水が続く能登地方の6つの市と町にある公立病院では初めてです。

人工透析の治療には1人当たり500リットルもの水が必要で、地震後、断水が続く能登地方の6つの市と町にある公立病院はいずれも人工透析の治療を中止していました。

地震前に100人余りの患者に人工透析の治療をしていた七尾市の公立能登総合病院でも、地震後、患者が金沢市や加賀地方の病院に転院して治療を受けていましたが、断水から復旧したため、7日治療を再開しました。

病院では看護師やスタッフが医療機器などを手際よく準備して患者の受け入れを進めていました。

公立能登総合病院人工透析部長 泉谷省晶医師

泉谷省晶医師
「多くの人の協力で復旧することができ、本当にありがたいのひと言です。人工透析は患者にとって命をつなぐ治療なので先延ばしにはできません。避難先などで治療を続けるのは患者に大きなストレスのかかる状況だったので、解消できてよかったです」

珠洲 地下水活用のため井戸の調査

ほぼ全域のおよそ4800戸で断水が続く石川県珠洲市では、水道の仮復旧のために地下水を活用しようと井戸の調査が行われました。

7日午後、国土交通省の担当者らが珠洲市三崎町の井戸で行った調査では、安定的に水が確保できるか水位などを調べたり、くみ上げた地下水の水質を確認したりしていました。

担当者によりますと、調査は8日まで行われ、結果が出るまでには1か月ほどかかり、使用できると判断した場合は、ポンプで水をくみ上げてまずはトイレやお風呂などの生活用水として利用する予定だということです。

国土交通省水管理 国土保全局 小出博企画専門官

小出博企画専門官
「日頃の備えとして『防災井戸』を設置している地域もあり、代替水源確保の1つとして地下水活用の調査を続けて行きたい」

七尾に仮設の風呂設置 かけ湯で温まる

七尾市では、かけ湯のできる仮設の風呂が設けられました。

仮設の風呂が設置されたのは七尾市松本町の駐車場で、地元に妻の実家がある東京の建築業の男性が木材を提供し、住民と協力して作りました。

風呂には屋根や脱衣場もあり、お湯は地震の影響で建物が損傷し、営業休止が続く近くの銭湯から運んで使用しているということです。

衛生面を考慮して湯船にはつからず「かけ湯」として利用するルールですが、使われているお湯は湯冷めしないと地元で評判だったということで、6日は80人近くが訪れて、互いの背中を流し合うなどして温まっていました。

地元の60歳の男性は「温かくて気持ちがよく、地震発生から2週間、風呂に入れなかったのでありがたい。断水が続いて不安だが復旧を待つしかない」と話していました。

仮設風呂を運営 木造建築業 篠原雄一郎さん

篠原雄一郎さん
「あすへの活力を見いだそうと毎日、来てくれる人のためにも続けていきたい。1人でも多くの人に心身温まって帰ってほしい」

この仮設の風呂は時間帯によって男女を入れ替えながら、毎日、午後から夜にかけて無料で利用できるということです。

能登町には別府から温泉が届く

石川県能登町では、6日の時点で全体のおよそ75%にあたる4690世帯で断水が続いています。

町にある観光施設「イカの駅 つくモール」の駐車場には、大分県別府市から温泉が届き、7日、特設の浴場が無料で開放されました。

午前11時にオープンすると多くの人が訪れ、湯船の中で気持ちよさそうに体を伸ばして、たまった疲れを癒やしていました。

能登町の50代の男性は「断水が続いているため2週間ぶりのお風呂です。温かくて最高です」と話していました。

別府市の温泉の提供は7日だけですが、8日からは同じ浴場で七尾市の和倉温泉の湯に入れるということです。

この取り組みは今月20日までの予定で介護が必要な人や家族で一緒に入れる時間も設けられます。

別府市支援チーム 牧宏爾さん

牧宏爾さん
「温泉につかってリフレッシュし、あすへの活力にしてほしいです」

今も約3万7500戸で断水続く (7日午後2時時点)

石川県によりますと、能登半島地震の発生直後、県内ではおよそ11万戸で断水が確認され、地震から1か月以上たった今も、能登地方を中心におよそ3万7500戸で断水が続いています。

自治体別でみると、ほぼ全域で断水しているのが、
▽輪島市のおよそ1万戸
▽珠洲市のおよそ4800戸です。

▽七尾市では県内で最も多いおよそ1万3300戸が断水しているほか、
▽能登町でおよそ5000戸
▽志賀町でおよそ2430戸
▽穴水町でおよそ1400戸
▽内灘町でおよそ570戸が断水しています。

石川県は、能登地方の多くの地域で2月末から3月末までの仮復旧を見込んでいますが、珠洲市や七尾市の一部の地域では仮復旧は4月以降になる見込みだとしています。

県は、能登地方では被災した浄水場の機能回復をおおむね終え、漏水調査や修繕の作業に入っているとしていて、1日も早い復旧を目指すことにしています。