地震の復旧作業 ちりやほこりの吸引などで起きる肺炎に注意

能登半島地震から1か月余りがたち、この時期に気をつけたいのが、復旧作業中にちりやほこりを吸い込むことなどで起きる肺炎です。過去の災害では、体調不良となって亡くなる災害関連死も報告されていて、専門家は「通常よりも目の細かい工業用のマスクなどをつけて復旧作業を行うことが重要だ」と指摘しています。

地震や豪雨、台風などの災害時には、ちりやほこりを吸い込んだことが原因で肺炎などを起こすことが知られています。

内閣府が自治体の報告をもとに、2021年までの10年間に発生した12の災害についてまとめた災害関連死の事例集には、発災から1か月以内の期間に、こうしたケースはありませんでした。

しかし災害の発生1か月から3か月の期間には、死亡した例が複数確認されています。

具体的には、
▽台風で被災した自宅や物置の復旧作業を行っていた70代の男性が、多くの粉じんを吸い込み、間質性肺炎を悪化させて死亡した事例や
▽豪雨災害で被災した80代の男性が、自宅付近で行われていた復旧作業で粉じんを吸い、肺炎を発症させるなどして亡くなった例などが報告されています。

今回の能登半島地震では、避難所での生活が長期化しているほか、今後、自宅の片づけや復旧作業、工事などが本格化する時期へ移るため、粉じんを吸い込むことによる体調の悪化が懸念されます。

専門家 “目の細かい工業用マスクなどつけ作業を”

粉じんを吸い込むことによる体調の悪化について、避難所・避難生活学会の常任理事で新潟大学の榛沢和彦特任教授によりますと、震災から1か月ほどがたった被災地では、がれきの処理などが進み、粉じんが出やすい環境にあるということです。

例えば、2011年の東日本大震災のときは、津波の浸水域では泥が乾いて粉じんが発生し、それを吸い込んで肺炎になった事例が多くあったということです。

また、2004年の新潟県中越地震では、支援に入った災害ボランティアが家屋の片づけの際にカビを吸い込んでしまい、肺炎になったケースもあったということです。

能登半島でも今後、復旧作業が本格化すると木材が崩れたり、家屋が倒れたりした際に粉じんが広範囲に飛び散り、危険な状態になるため注意が必要だということです。

また、倒壊していない建物でも、家の中に充満している粉じんを吸い込んで肺炎を発症するリスクも考えられることから、家に入る際には換気の状況もしっかり確かめてほしいとしています。

榛沢特任教授は、被災した人だけでなく、ボランティアも十分な対策が必要だとしたうえで「通常のマスクでは粉じんを防ぐことはできず、できるだけ目の細かい工業用のマスクなどをつけて復旧作業を行ってほしい」とと話しています。