石川 輪島 特別支援学校で対面授業再開 1か月遅れの始業式

石川県輪島市にある特別支援学校では、5日、対面での授業が再開し、1か月遅れの始業式が行われました。

輪島市にある県立七尾特別支援学校輪島分校は地震で校舎の一部が被害を受け、オンラインでの授業を余儀なくされていましたが、5日から対面での授業が再開し5日朝、子どもたちが保護者と一緒に登校しました。

今も道路状況が悪いためスクールバスの運行ができず、市外で避難生活を続けている児童や生徒もいるため、小学部から高等部までの21人のうち5日登校できたのは6人にとどまりました。

それでも久しぶりに同級生や先生と会えた子どもたちは大きく手を振って喜んでいました。

その後、1か所の教室に集まって、1か月遅れとなる3学期の始業式が行われ、声を合わせて校歌を歌いました。

七尾市にある本校からオンラインで出席した川井久也校長は「あせらず、あわてず、ゆっくりと自分にできることを頑張りましょう」と呼びかけていました。

学校では登校できない児童や生徒たちのために引き続きオンラインでの授業も行うことにしています。

七尾特別支援学校輪島分校の土佐智美教頭は「子どもたちの顔を見て、声を聞いて安心しました。学校に来られない児童や生徒も多いですが、少しでも安心してもらえるようにできることを続けたい」と話していました。

市外避難で学校に通えない家庭は

特別支援学校が再開しても市外に避難していて子どもを登校させることができない家庭の中には、通い慣れた学校に通わせるべきか、環境の整った避難先の学校に転校させるべきかについて悩みを深めている人もいます。

輪島分校に通っていた中学1年生の双子の兄弟は、金沢市内にある母親の実家に避難していて、送迎の足が確保できず通学の見通しが立っていません。

母親によりますと、金沢市に引っ越して兄弟も転校させることを検討していますが、2人は環境の変化に敏感で、今もふだん使っていた食器や服がないことでパニックを起こしたり、体調を崩したりする日があるということです。

金沢市などの特別支援学校を見学したところ、生徒数の多さに驚いてしまったということです。

母親は「たくさん生徒がいるところだと圧倒されて廊下を走ってパニックになってしまいます。上の子は『もうこの学校いけない。輪島分校行きたい』と言っていました」と当時の子どもたちの様子を話していました。

引き続き金沢市内で転校先を探してはいるものの、実際に転校させるべきかどうか、悩みを深めているといいます。

母親は「住み慣れた家、通い慣れた学校が日常にあったのに、全く違う環境になってしまいました。子どもたちの気持ちを考えたら、輪島に早く帰ることができるよう、一日でも早い復旧復興をお願いしたいです」と話していました。

「放課後デイサービス」体制整わないところも

特別支援学校が再開する一方、放課後に障害のある子どもたちを預かる「放課後デイサービス」では、地震の前と同じように受け入れができないところがあります。

石川県輪島市の障害者施設では、18人の障害のある子どもを放課後に預かっていましたが、地震のあとは福祉避難所として地域の高齢者など10人ほどを受け入れているほか、職員も被災して従来のように働けなくなり「放課後デイサービス」を中止せざるを得なくなりました。

今は職員が保護者に定期的に連絡を取り、子どもたちの様子を聞いたり、相談に乗ったりして、なんとかつながりを保っています。

この日、電話で話した保護者からは「輪島市の外に避難しているが子どもが慣れ親しんだ“放課後デイ”に戻りたいと言っている」とか「仕事の間、子どもを預けられるよう再開してほしい」などといった声があったということです。

再開を望む保護者の声が多いことから、この施設では急きょ6日から午前と午後のそれぞれ2時間限定で受け入れを再開することを決めましたが、断水も続く中で地震の前と同じように受け入れるための体制は整わない状況が続いています。

障害者施設「一互一笑」を管理する藤沢美春さんは「地震の発生直後はすごくショックが大きくて継続できないかなと思っていましたが、再建に向けてみんなで頑張っていきたい」と話していました。

専門家「再開は重要も、通えないと取り残されるリスクも」

発達障害が専門で東日本大震災の被災地でも調査を行った九州大学の田中真理教授は、学校や放課後デイサービスの再開は、発達障がいのある子どもが日常を取り戻す上で重要だとしつつも、通えない家庭は社会から取り残されてしまうリスクがあると指摘しました。

田中教授は、被災地の特別支援学校や放課後デイサービスについて「送迎のことなどを考えればセットで再開することが望ましいができるところから再開し、障がい者のいる家族をサービスの谷間に置かないことが大切だ」と指摘しました。

その上で「発達障がいのある子どもは1日のルーティンが少しでも崩れるとパニックになることがあります。例えば朝起きて必ずして行うことなどの一部でもいいので実践することや、変更がある場合は少しでも早く伝えることで子どもの心の安定につなげることができます」と話していました。

また障害のある子どものいる家庭は、声をあげにくく保護者が追い込まれやすいとして、「周囲の人が声をかけて何が起きているのか何に困っているのかを聞くことでストレスを少し軽減できる」と話していました。