「犯罪被害者等給付金」支給額を大幅に引きあげる方針 警察庁

犯罪被害者の遺族などに支払われている「犯罪被害者等給付金」について、警察庁は支給額を大幅に引きあげる方針を固めました。被害者が子どもだったり、収入が少なかったりするケースでは、これまで支給額が低く抑えられてきましたが、こうしたケースについて、本人や遺族への支援を拡充することにしています。

殺人事件などの被害者の遺族や、犯罪によって重い障害が残った人などに支給される「犯罪被害者等給付金」は、事件が起きたときの被害者の年齢や収入などを基準にして支給額が決まるため、子どもや、収入が少ない人の場合、本人や遺族が受け取れる金額はこれまで、低く抑えられてきました。

警察庁が去年8月から開いてきた有識者会議で、5日、制度の見直しについての骨子案が示されました。

骨子案では、事件で亡くなった人の遺族のうち、配偶者、両親、子どもへの給付金を一律で加算したうえで、子どもや収入が少ない人が亡くなったケースについては、給付の最低額を引き上げ、支給額を、最低1000万円程度にまで底上げするとしています。

また子どもや収入が少ない人が事件で重い障害を負うなどしたケースで支払う給付金も増額するとしています。

警察庁では新年度の早い時期からの施行を目指し、関係法令の改正に向けて調整を進めることにしています。

新全国犯罪被害者の会 “大きな前進 支援実現へ体制構築が急務”

犯罪被害者への経済的な補償の充実を求めてきた「新全国犯罪被害者の会」通称「新あすの会」は、骨子案が示されたことを受け、5日に都内で会見を開きました。

副代表幹事で、オウム真理教による事件で父親を亡くした假谷実さんは「給付金の最低額が上がることは大きな前進だ。この制度が成立する前にも困っている被害者はたくさんいるので、遡及(そきゅう)して救ってほしい」と話していました。

高取由弥子弁護士は「長い時間をかけて、ようやく国が被害者や遺族の切実な声を拾って一歩を踏み出したことは評価しているが、ここで歩みを止めてはならない。被害者や遺族の苦しみに寄り添った途切れない支援を実現するための体制構築が急務だ」と訴えました。

「新あすの会」は、被害者が加害者に損害賠償を求めても支払われないケースが多いとして、国が立て替える制度の創設などを求めています。