【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(2月5日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる5日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナとは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ウクライナ 戒厳令90日間延長 大統領選挙行われない見通し

ウクライナのゼレンスキー大統領は5日、戒厳令と総動員令をことし5月まで90日間、延長する法案を議会にあたる最高会議に提出しました。

ウクライナでは、当初の予定ではことしの春が大統領選挙の実施時期ですが、戒厳令が撤回されるなど状況が変わらないかぎり選挙は行われない見通しです。

ゼレンスキー大統領 ザルジニー総司令官の解任検討を認める

ウクライナのゼレンスキー大統領は、4日公開されたイタリアの公共放送「RAI」とのインタビューで、軍のザルジニー総司令官が解任される可能性があると複数のメディアが報じていることについて、「リセットと新たな出発が必要だ」と述べ、解任を検討していることを認めました。

ロシアに対する軍事作戦の指揮をとってきたザルジニー総司令官は、去年12月に発表された世論調査で「信頼している」と回答した人が88%にのぼり、ゼレンスキー大統領の62%を上回るなど、国民からの人気が高いことで知られています。

ザルジニー氏は、戦闘の進め方などを巡ってゼレンスキー大統領とたびたび意見が対立してきたと伝えられ、1月下旬から欧米などのメディアが、ザルジニー氏が解任されるという見方を相次いで報じていました。

ゼレンスキー大統領は、ザルジニー氏を解任した場合の戦況への影響や国民の反応などを慎重に見極め、最終的に判断するとみられます。

国民からは 解任の影響 懸念する声相次ぐ

ウクライナ軍のザルジニー総司令官の解任の可能性が伝えられていることについて、首都キーウでは、国民からの人気が高いザルジニー氏が解任された場合の影響を懸念する声が相次ぎました。

このうち50歳の男性は、「私は軍事の専門家ではないが、ザルジニー氏は象徴的な存在になっている。もし解任されれば国際的によくない印象を与えることは明らかだ」と話していました。

63歳の男性は、「ザルジニー氏の人気はゼレンスキー大統領と同じくらい高い。私はザルジニー氏の解任を望みません」と話していました。

18歳の女性は、「幼い子どもでさえ、ザルジニー氏を知っていて人々に希望を与え、心を動かすといった点で非常に大きな役割を果たしています。もし解任されれば強い反発が起きると思います」と話していました。

G7各国 “大統領と軍トップの対立はロシアを利する”

外交筋によりますと、「ザルジニー総司令官が解任される可能性がある」という情報は、1月中旬ごろから、キーウに駐在している各国外交官たちの間でも話題になったということです。

当初、外交官たちは、ザルジニー氏は、ゼレンスキー大統領との関係が悪化しているとしても直ちに
外交筋は、NHKに対して、「ゼレンスキー大統領はしゅん巡している」と述べ、国民にも人気のあるザルジニー氏を解任するかどうか慎重に検討を進めている可能性があると明らかにしました。

また、G7各国は1月下旬、ザルジニー氏の解任の可能性に関する情報を巡り意見を交わしたということで、一部の国からは懸念する声も聞かれ、「大統領と軍のトップが対立していてはロシアを利するだけなので、結束すべきだとウクライナ側に伝えた」という話も出されたということです。

ザルジニー総司令官とは

ザルジニー総司令官は1973年生まれの50歳。

1997年に軍人としてのキャリアをスタートさせたザルジニー氏は、陸軍で要職を歴任した後、ロシアによる軍事侵攻が始まる前の2021年7月にウクライナ軍のトップ、総司令官に就任しました。

ロシアによる侵攻開始後はたびたび最前線にも赴くなどして軍事作戦の指揮をとり続けてきました。

去年12月にキーウ国際社会学研究所が発表した世論調査では、ザルジニー総司令官を「信頼している」と回答した人が88%にのぼり、ゼレンスキー大統領を「信頼している」と答えた62%を上回りました。

ザルジニー総司令官は、去年11月にはイギリスの経済誌「エコノミスト」に「現代の陣地戦とその勝ち方」と題する論考を寄稿しました。

また、2月にはアメリカのCNNテレビに寄稿し、欧米からの軍事支援について各国の不安定な政治情勢が支援の縮小につながっているとした上で、今後は無人機など安くて効果的な技術をさらに活用する必要性があると強調するなど、独自の分析を発信していました。

一方で、去年6月に始まった反転攻勢が当初の想定より進んでいないと伝えられる中、戦況の認識などを巡ってザルジニー氏とゼレンスキー大統領との間で意見が対立するなど、あつれきも生じていると指摘されていました。

去年12月、ウクライナのメディア「ウクラインスカ・プラウダ」は、大統領の側近の話として、ゼレンスキー大統領が直接、一部の司令官とやりとりしているため軍の指揮系統が乱れ、ザルジニー氏が軍全体を統率できなくなっているとの見方を伝えていました。

そして1月下旬から、ウクライナや欧米のメディアがザルジニー氏が解任されるのではないかという見方を相次いで伝え、このうちアメリカの有力紙、ワシントン・ポストは2月2日、ゼレンスキー大統領が解任を決めたとウクライナ政府が最大の支援国であるアメリカのホワイトハウスに伝えたと報じていました。

ザルジニー総司令官を交代させることになれば、国民から反発が出るほか、軍の統率が一時的に乱れるなど戦況に影響が及ぶ可能性があるという指摘も出ています。

ゼレンスキー大統領 前線の陣地など訪れ 兵士に勝利呼びかけ

ウクライナ軍のザルジニー総司令官の解任の可能性が報じられる中、ゼレンスキー大統領は4日、前線に近い南部ザポリージャ州や東部ドニプロペトロウシク州を相次いで訪問しました。

このうちザポリージャ州では、激しい戦闘が続いているロボティネ近くの陣地を訪れたとする映像をウクライナ大統領府が公開しました。

この中でゼレンスキー大統領は兵士を表彰した上で、「皆さんは敵を撃退し、この戦争に勝つという困難で重要な任務にあたっている。迅速に勝利するため、あらゆることをしてほしい」と呼びかけました。

ロボティネは去年8月にウクライナ軍が奪還した集落ですが、反転攻勢は、その後、こう着した状態が続いていて、ゼレンスキー大統領としては訪問を通じて前線の兵士の士気を高めたいねらいもあるとみられます。

ウクライナ 市民の間で無人機を組み立て 軍に送る動きも

ロシア国防省は3日、この1週間で、ウクライナ側の軍事施設や燃料基地を標的に、無人機などを使った攻撃を37回行ったと発表しました。

ウクライナ側も国境に近いロシア領内などに対する無人機攻撃を続けていて、ゼレンスキー大統領は1月29日、「無人機の運用の質を高め、敵に先んじることが、ことしの課題の1つだ」と強調しています。

ウクライナはことし、自分が操縦しているような感覚で上空からの映像をリアルタイムで確認できる、FPVと呼ばれる性能を備えた無人機を100万機製造し、戦地に投入する計画です。

FPVは、小型で安価なことも特徴で、市民の間では、自身で無人機を組み立てて軍に送るなど、支援する動きが広がっています。

首都キーウで暮らすマトビー・カルペンコさん(23)は、ゲーム開発の仕事をするかたわら、半年ほど前から無人機の組み立て方や操縦の方法を学びました。

カルペンコさんは「今後兵役に就いたときにも役に立つスキルなので、学んでいます」と話していました。

ウクライナ 無人機を操縦できる兵士の育成も

また、無人機を操縦できる兵士の育成も進められています。

キーウ市内の屋内施設では1月、兵士を対象にした無人機の操縦訓練が行われていました。

訓練はNGOが主催したもので、兵士たちが民間のエンジニアなどからモニターなどを使った操縦のしかたを学んでいました。

兵士たちは、キーウ州内の空き地でもねらいどおりのルートで実際に無人機を飛行させることができるか確認していました。

25歳の兵士は「学んだ知識を実戦で生かすことができれば、より早くロシア軍に勝つことができます」と話していました。

講師役を務めた、エンジニアでゲーム開発者のイワン・コワリョウさんは「エンジニアとして持っている知識を兵士に受け継ぐことが、私ができる最大限の貢献です」と話していました。