米・英軍 イエメン反政府勢力のフーシ派拠点を攻撃

アメリカ軍とイギリス軍は、イランが支援するイエメンの反政府勢力フーシ派の拠点に対し攻撃を行ったと発表しました。

アメリカ軍はヨルダンで兵士3人が死亡した攻撃への報復措置として、2日にイラクとシリアの領内にあるイランの軍事精鋭部隊の施設などを空爆したばかりで、イランが関係する勢力への軍事的圧力を強めています。

アメリカ国防総省はアメリカ軍とイギリス軍が3日、イランが支援するイエメンの反政府勢力フーシ派の支配地域に対し、合同で攻撃を行ったと発表しました。

アメリカ軍とイギリス軍の合同作戦では、先月もフーシ派への攻撃を行っています。

今回の攻撃はフーシ派の13の拠点に対して行い、地下深くに建設された武器庫やミサイルシステムなど36の標的に及んだとしています。

アメリカ国防総省は、フーシ派は去年11月中旬以降、紅海を航行する民間の船舶や海軍の艦船に対し30回以上の攻撃を行ってきたとし、今回の作戦にはフーシ派の攻撃能力をそぐねらいがあったと説明しました。

アメリカ軍は先月、ヨルダンでアメリカ軍の拠点が攻撃され、兵士3人が死亡したことへの報復措置として、前日の2日、イラクとシリアの領内で活動するイラン革命防衛隊の「コッズ部隊」や関係する武装組織に対し、大規模な空爆を行ったばかりです。

アメリカ軍はイランが関係する勢力への軍事的圧力を強めており、攻撃の応酬に歯止めがかからなくなる事態を懸念する声も出ています。

米軍 合同作戦とは別に攻撃も

アメリカ軍はイギリス軍との合同の作戦とは別に、イエメンの反政府勢力フーシ派に対し、3日夜にかけて攻撃を行いました。

アメリカ中央軍が発表した声明によりますと、アメリカ軍は2日午後、フーシ派が支配する地域から飛び立とうとしていた無人機4機を攻撃し、破壊したということです。

また、2日夜に紅海周辺に飛来した無人機7機を、アメリカ海軍の空母アイゼンハワーから飛び立ったF18戦闘機と駆逐艦が撃墜したほか、3日夜には紅海を航行する船舶に向けて発射する準備が進められていたフーシ派の巡航ミサイル6発を破壊したとしています。

アメリカ中央軍は、これらの攻撃は航行の自由を確保し、アメリカ海軍の艦船や民間の船舶の安全を守るためのものだと説明しています。

フーシ派報道官 SNSに「米英は48回の空爆行った」

イエメンの反政府勢力フーシ派の報道官は4日、SNSに、「アメリカ軍とイギリス軍は首都サヌア、ホデイダ県やタイズ県などで48回の空爆を行った」と投稿しました。そのうえで、「こうした攻撃でパレスチナと連帯するわれわれの立場を変えることはできないし、報復なしでは済まされない」として、紅海周辺で活動するアメリカ軍やイギリス軍などに対して報復の攻撃を行うと示唆しました。

米軍「攻撃はフーシ派の攻撃能力をそぐためのもの」

フーシ派への今回の攻撃についてアメリカ軍は、紅海周辺を航行する船舶に対するフーシ派の攻撃能力をそぐためのものだと強調していて、前日にシリアとイラクの領内に対して行った報復攻撃とは明確に区別しています。

紅海周辺ではフーシ派による攻撃を避けるため、各国の貨物船やタンカーなどがアフリカの喜望峰を回るルートへのう回を余儀なくされる状況が続いています。

世界経済への影響も広がる中、アメリカ軍とイギリス軍のフーシ派に対する合同作戦は先月に続き3回目です。

アメリカ政府は今回の攻撃を、バーレーンやオーストラリアなど6か国が支援したと強調していて、アメリカの一連の攻撃の正当性を強調するねらいもあったと見られます。

ただ、今回のフーシ派への攻撃も、イスラエルとそれを支えるアメリカへの攻撃を強める武装勢力に対抗するための作戦であったという点では、前日のイラクとシリアへの報復攻撃と根本は同じです。

前日の報復攻撃を受けては、イラン、それに空爆されたイラクからも反発の声があがっています。

イランが関係するフーシ派をはじめとした武装勢力、そしてイラン自身の反応しだいで緊張が拡大するおそれはあります。

バイデン大統領自身は秋の大統領選挙で再選を目指していますが、野党側やトランプ前大統領から、対応が弱腰だと批判を浴びていて、引くに引けない状況です。

紛争の拡大だけは防ぎたいという思惑どおりに進むのか、アメリカにとって緊張を強いられる状況が続きます。