【動画解説】米軍がイラン部隊施設に報復空爆 今後の見通しは

アメリカ軍は、イラクとシリアの領内にあるイランの軍事精鋭部隊の関連施設などに空爆を行ったと発表しました。中東のヨルダンで軍の拠点が攻撃され、兵士3人が死亡したことに対する報復措置としています。

アメリカ軍の攻撃の今後の見通しや、中東地域での攻撃の応酬が拡大する可能性について、取材にあたっている記者の解説です。

【動画は2分16秒】
データ放送ではご覧になれません。3日正午の「NHKニュース」で放送しました。

ワシントン支局 渡辺公介記者

Q.アメリカの攻撃、今後の見通しは?

A.カービー調整官は「今後の作戦を事前に知らせることはしない」と話していて、攻撃の期間は明らかにしていません。

ただ「数日以内に追加の措置をとる」としているので、作戦は少なくとも数日間にわたるとみられます。

また、攻撃に先だってオースティン国防長官は「対応は重層的なものになる。状況に応じて繰り返し対応する能力もある」と述べています。

このため武装組織の出方を見極めた上で攻撃の方法や期間を決めていくものとみられます。

Q.中東地域での攻撃の応酬が拡大する可能性は?

A.アメリカとしても事態がエスカレートするのは避けたいところです。

バイデン大統領は「中東地域での紛争の拡大は望んでいない」と述べていて、今回、イラン領内を直接、軍事攻撃の標的としなかったことにも、その姿勢は明確に表れています。

ただ攻撃が拡大する可能性は排除できません。

イスラエルとハマスの衝突が続く中、中東の各地でイランが支援する「抵抗の枢軸」と呼ばれる武装組織のネットワークが、イスラエルとアメリカへの対決姿勢を強めているからです。

アメリカもそしてイラン側も、事態の拡大を望んでいないとしても、こうした勢力が独自の判断でイスラエルやアメリカへの攻撃を拡大させるおそれがあります。

また、アメリカ国内に目を向ければ野党・共和党からは一連の対応が弱腰だと批判の声が出ていて、イランに対する直接攻撃を訴える強硬論も出ています。

バイデン大統領は、現地の情勢だけでなく、国内の世論にも注意しなければならないという難しい対応を迫られています。

国際部 戸川武記者

【動画は1分19秒】3日朝「おはよう日本」で放送

Q.イスラエルとハマスの交渉への影響は?

A.その交渉、ハマスがイスラエル側から提案を受け取ったことを明らかにしていて、条件面など慎重に検討を重ねているものとみられます。

そうしたなかで、アメリカの報復措置がありました。次に親イランの民兵組織やイランがどのような反応を示すのか、注視が必要です。

報復の応酬が続けば、中東の情勢がさらに不安定になり、結果として、交渉にも影響を与える可能性もあります。

交渉を仲介するカタールのムハンマド首相は、「私たちの行っている努力が損なわれ、これまでのプロセスを危うくすることがないよう願っている。状況に歯止めがかかることを望む」と述べています。

アメリカのブリンケン国務長官が4日から中東を訪れ、イスラエルやカタールなどを訪問する予定です。

人質の解放と戦闘休止の交渉を進展させつつ、紛争の拡大を防ぐことができるか、そこも焦点となっています。