石川 初の仮設住宅に入居開始も「自主避難所」閉鎖で課題

能登半島地震で大きな被害を受けた石川県輪島市で、県内で初めての仮設住宅が完成し、3日から入居が始まりました。
一方で、長引く避難生活のなか、課題も浮き彫りになってきています。

仮設住宅の入居開始は18戸 申し込みは4000件余り

輪島市では、市の中心部にある「キリコ会館多目的広場」で、県内で初めての仮設住宅が完成し、自宅を失った人や、生活に配慮が必要な高齢者など、18世帯55人の入居が決まっています。

入居は3日から始まり、午前10時半ごろには鍵を受け取った入居者が家族とともに訪れる姿がみられました。

このうち大下澄子さん(76)は、朝市通り周辺で起きた火災で1人暮らしの自宅が全焼し、長女の家族とともに避難所に避難していました。

大下さんは、室内に入ると、冷蔵庫やテレビなどの家電や、調理器具が入った支援物資を確かめるなど、仮設住宅で暮らすための準備を進めていました。

大下さんは「避難所では眠れないこともあったのでありがたいです。家族と別々になるのは心細いですが、洗濯もできるのでゆっくり過ごしたいです」と話していました。

輪島市にはこれまでに4000件余りの仮設住宅への申し込みがあり、3日から入居が始まった18戸のほかに548戸が着工しているということです。

石川県は、来月末までにおよそ3000戸の着工を目指すとしています。

閉鎖する「自主避難所」 課題も

一方、輪島市で地域の人たちが運営していた「自主避難所」の1つが閉鎖されました。

石川県では現在も多くの被災者が、行政が運営する避難所だけでなく地域の人たちがみずから運営する「自主避難所」で避難生活を続けています。

輪島市門前町の本市地区にある自主避難所にもピーク時には80人余りが避難していましたが、その後徐々に減って、3日、閉鎖することになりました。

この自主避難所は葬儀場を借りて運営されていたもので、葬儀場側は「落ち着くまで使ってほしい」という意向を示していましたが、避難している人たちが「いつまでもお世話になれない」として、先月下旬、地区の区長を務める出村宗雄さんと話し合って閉鎖を決めたということです。

3日は地区の住民たちが物資を分けたり、ほうきで掃除をしたりと、片づけに追われていました。

安全な生活環境の確保が急務に

避難所を出る決断をした82歳の平井隆三さんは、立ち入りが危険と判定された自宅に戻るということで「少々危険でも、まわりを気にせず家族といられる生活が大事なので、逃げ場を確保するなどの対策をしながら自宅に住みたいです」と話していました。

出村区長によりますと、地区では、平井さんのように自主避難所を離れたあと、立ち入りが危険と判定された自宅に戻る人がほかにもいるということで、安全に生活できる環境を整えることが急務となっています。

出村区長は「今後の生活を見通せず、倒壊のおそれがある家に住む住民がいることが不安です。具体的な対策は思いつかないのが現状です」と話していました。

在宅避難 つながり維持するために

珠洲市狼煙町の横山地区では、地震の直後、およそ60人の住民が集会所に避難していましたが、いまは全員が自宅や親族の家に戻っています。

山あいで住宅が点在しているこの地域では、住民どうしの交流の場が限られていることから、学生らで作るボランティア団体が情報交換の場を提供しようと先月20日から週に数回、この集会所で炊き出しを行っています。

3日も、学生たちが昼食に鶏肉やきのこなどの具が入ったうどんを作り、20人余りの住民と一緒に食べながら、家の中の片づけの状況などを話し合っていました。

横山地区の表精二区長は「片づけが終わらず、つらいこともありますが、住民や学生さんたちと会うことで元気が出ます」と話していました。

炊き出しを行った「国際ボランティア学生協会」の久保田夏菜さんは「住宅が倒壊している様子に心が痛くなりました。少しでも役に立てることがあれば全力で頑張りたいです」と話していました。

団体では住民と交流を続ける中で、いまどのような支援が必要とされているのかを聞き取り、今後の活動につなげたいとしています。