被災地の検索ワードに変化 「仮設住宅」や金融機関名が上昇

能登半島地震から1か月あまり。被災地での検索ワードの変化を調べてみました。

「生活再建」に関することばでは、まず「罹災証明」、3週間を過ぎると「仮設住宅」のほか地元の銀行・信用金庫の検索が見られるようになりました。

専門家は「避難を続ける人も再建に動く人もいて、被災者の状況の多様化がうかがえる。きめ細かな支援が求められる」と指摘しています。

分析は、LINEヤフーが個人が識別できない形で集計した検索ワードのビッグデータを使って行ったものです。

【対象地域】(いずれも石川県)
▽輪島市 ▽珠洲市 ▽能登町 ▽穴水町
【対象期間】
1月1日~1月31日

表では、検索頻度が高かった上位15番目までのことばを表示しています。
▽紫色が「生活再建」
▽オレンジ色が「物流」
▽青色が「断水」
▽緑色が「交通」
▽黄色が「電気・エネルギー」
5つの分類に関連するワードに色づけをしています。

ここからは分類ごとに詳しく見ていきます。

「生活再建」のワードが具体化・多様化

大きな変化が見られたのが「生活再建」です。

はじめに現れたことばが「罹災証明」です。

1週間をすぎた1月8日ころから見られるようになり、これ以降も検索頻度が高い状況が続いています。

3週間を過ぎると「仮設住宅」、さらに地元の銀行や信用金庫の検索が見られるようになりました。

この間には、被災した地元の銀行は徐々に営業を再開し、被災者の個人ローンや事業者の融資についての相談窓口も開設されています。

▽生活再建や事業再建を進める動きや、▽支援制度の情報を求める動きを反映しているものとみられます。

「物流」が新たに上昇

1月の後半、特に下旬になって上昇してきたのが「物流」です。

日本郵便では一部の地域では業務の再開が進められていますが、多くで業務が停止しています。

また、宅配大手でも複数の地域で集荷と配達の停止が続いています。

不安定な道路状況により被災者の移動も制限されるなか、被災地では早期の物流の回復が待たれています。

「交通」は鉄道関連が上昇

物流の回復のかぎとなる「交通」に関連するワードです。

地震発生から検索頻度の高い状況が続いています。

当初は「通行止め」や「のと里山海道」など、道路関連が多く検索されていました。

下旬になると加えて鉄道関連が上昇します。

バスでの代替輸送を始めた「のと鉄道」に加え「新幹線」や「金沢駅」も検索。

ボランティアや広域避難をはじめとした、被災地と外の地域を、より広範囲に出入りする動きが出ているとみられます。

「断水」による各種ニーズは依然高く

輪島市と珠洲市ではほぼ全域での断水が続くなど各地で深刻な状況が続いています。

地震から1週間、「断水」「トイレ」が検索されました。

1週間を過ぎると加えて「入浴」関連が上昇。

2週間がすぎるとさらに「コインランドリー」など洗濯関連が。

一部の避難所では洗濯物を引き受ける民間の支援やコンテナ型の移動式ランドリーの設置などが始まっていますが、支援が行き届いているわけではありません。

「断水」関連の多様な検索は継続して高い状況にあります。

「電気・エネルギー」は検索落ち着くも変化が

「電気・エネルギー」です。

当初、「停電」や「ガソリン」の検索が続いていました。

停電の解消が進んできたことからこうした検索は落ちついた一方、1月下旬には「ポータブル電源」が上昇しました。

道路の復旧が進み移動が戻るにつれ、出先でも電力を確保したいというニーズがあるとみられます。

分析の結果について、災害時の心理や復興過程に詳しい専門家は。

専門家「被災者の状況は多様化 きめ細かな支援を」

兵庫県立大学 木村玲欧教授

「検索ワードが具体化、多様化していることから、避難を続けている人から再建に動き始めた人まで、被災者の状況が多様化するステージに入ったと考えられる。行政をはじめ支援をする側は被災者の状況に応じニーズを適切にくみ取りきめ細かな支援をすることが今後より求められる」

LINEヤフー研究所 坪内孝太上席研究員

「被災地の多様なニーズを知るために今回の検索ワードの分析手法が有効であることが見えてきた。今後さらに分析を進めより詳細なニーズの把握につなげられるようにしたい」

分析について

LINEヤフーが個人を識別できない形で集計した検索ワードのビッグデータをもとに機械学習し対象地域での検索ワードと、全国で検索されたワードの差を数値化。対象地域で全国と比べてより多く検索されたワードを1日ごとに抽出・分析した。

なお、「地震」や「地名」など検索頻度が恒常的に高いものや、地震とは関連がないとみられる「個人の氏名」といったワードは除外した。